(ブルームバーグ): 11月の米大統領選でトランプ前大統領がホワイトハウス返り咲きを果たした場合、衝動的とも言えるトランプ氏のスタイルが、金融市場のボラティリティー(変動性)を再び高める可能性がある。

  そして、こうしたボラティリティーの高まりにこそ本領を発揮する「ファストマネー」と呼ばれる短期筋の投資家にとって、それは一向に構わないことだろう。

  投資家はトランプ氏の大統領復帰の場合、電気自動車(EV)産業から長期金利の方向性に至るあらゆる方面にどのような影響を与える可能性があるか、ゲームプランを練ろうとしている。

  マーケットは概してこの種の不確実性を嫌う。しかし、大幅な変動や変則的な動きで相場が乱調の様相を呈した際にたちどころに参入・退出する一部のヘッジファンドに言わせれば、それはほとんど無関係ということになる。

  こうしたヘッジファンドがトランプ氏について感じていることははるかにシンプルだ。それは同氏の大統領在任中に何度もあった取引機会の記憶だ。トランプ氏の発言やソーシャルメディアへの投稿は時として投資家にサプライズをもたらし、株価や債券・為替相場の短期的な激変の引き金となった。

  ヘッジファンド運営会社ブルー・エッジ・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、カルビン・ヤオ氏(シンガポール在勤)は「政治はさておき、穏やかなバイデン氏と嵐のようなトランプ氏のどちらが好みかトレーダーに問えば、サーフィンで大きな波に乗りたいのと同じでトランプ氏となるだろう」と指摘。「トランプ氏の方が不安定で予測不可能だ」と説明した。

  バイデン政権下でももちろん、ボラティリティーには事欠かない。インフレ高進やロシアによるウクライナでの戦争、物価抑制に向けた米金融当局の利上げキャンペーンなどはいずれも市場を大きく動かした。

  この結果、米国債の予想変動率を追跡するICE・BofA・MOVE指数はトランプ前政権下の多くの期間よりも高めとなっている。バイデン大統領が再選を果たした場合、連邦債務上限などの問題で共和党との対立がエスカレートする可能性もある。

  だが、ワシントンでのキャリアが何十年にも及ぶバイデン氏は従来型のスタイルであるのに対し、トランプ氏は旧ツイッター(現X)を通じて一般の人々と直接対話することを好み、トレーダーは急いでその含意を判断するよう迫られた。

  投票日はまだ4カ月余り先で、市場ではこれまでのところ米経済の力強さや金融当局の利下げ開始時期を巡る観測などの方が強く意識されている。そうであっても、大統領選前後のボラティリティーの高まりに早期に備える動きが一部顕在化している。

  カリフォルニア州ニューポートビーチを拠点とする資産運用会社ロングテール・アルファ創業者のビニア・バーンサリ氏は、「トランプ氏ならボラティリティーが高まるという見方がコンセンサスだ。市場は既にそうした事態を織り込んでいる」と述べ、「トランプ氏が勝利して実際にボラティリティーが高まらなければサプライズだ」と解説した。

原題:‘Volatile and Unpredictable’: Why Fast-Money Traders Like Trump(抜粋)

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