ビジネスシーンでいま「シェアリングエコノミー=共有経済」という業態が注目されています。「シェアオフィス」や「シェアハウス」「ライドシェア」など…モノや場所などを複数の人が賃貸、売買などを通して共用するビジネスのことです。
 
敦賀市にはこのほど、日替わりで様々な店が登場するシェアキッチン「スタートアップベイス」がオープンしました。ある時は、カレー、またある時はコーヒーやスイーツと、日替わりで様々な人がキッチンに立ちます。厨房設備や食器を備えたレンタルスペースのシェアキッチンで、1日6000円からの利用料だけで営業を始められます。
 
利用する人たちの目的も様々です。「ORION BAKE」の石田幸代さんは「自分の店は南越前町にあるが、嶺南で店の事を気軽に知ってもらえるチャンス」と話します。また「Amenori」の田邉彩可さんは「普段はキッチンカーで営業していて、いつか店舗でやってみたいが、ゼロからは難しいのでチャレンジできる所ができありがたい」とします。
  
複数の店舗が一緒に営業することもでき、それぞれのファンを呼び込むこともできます。取材した日は「平凡珈琲」と「Amenori」がコラボ営業していました。平凡珈琲が好きで「イベント出店を追いかけていた」と話す客や「これからどういう店が入るか気になる。限定に弱いし」などと話す人も。また「敦賀にこういうスタイルの店がなかったからめっちゃいいと思う」と好評でした。
 
シェアキッチン「スタートアップベイス」は敦賀市役所に近く、商店が点在する通りにあります。この物件は、広告代理店を営む夫婦が、30年ほど中華料理店に貸し出していましたが、店主が健康上の理由で閉店したのを機に業態転換し、約1000万円をかけて全面改築しシェアキッチンとして5月にスタートしました。後押しとなったのは、北陸新幹線の敦賀開業でした。
  
「スタートアップベイス」の奥野泰子代表は「新幹線の敦賀延伸は100年に一度のビジネスチャンスなので、この流れにのって新しいことができたらと思った。自分たちも周りも楽しい事をしたかった」と話します。
 
通常、飲食店を開く場合は思い切った初期投資が必要ですが、利用料だけで1日から試せるシェアキッチンは、ニーズがあると考えました。
 
“新幹線の終着地”で、“特急との中継地”となる敦賀に注目する動きも出ています。出店者の1人「びーどろ実生庵(鯖江市)」の久米田けんじさんは「敦賀が活気がある町になってきているので、市場調査も兼ねている。新幹線開業により経由地や終点になる敦賀は、面白いと思う」と注目しています。
  
出店の相談に訪れていた、敦賀半島沖で養殖業を営む「あけぼの旅館」の女将・山川麻紀さんも、新幹線開業を意識する一人です。山川さんは「敦賀ふぐや敦賀真鯛を養殖している。新幹線開業に合わせて市もPRしてくれてはいるが客が旅館まで足を運んでくれないので、ゆくゆくは駅前にお店出したいという思い。まずは市民においしさを知ってもらい 口コミで広げていきたい」と話します。新幹線開業を追い風に、敦賀ブランドの浸透と出店を目指しての腕試しです。
  
奥野代表は「シェアキッチンを巣立って店を開き、そこが名店になって“新幹線で行ってみようか”という店になるのが最終的な夢」と期待を込めます。
 
新幹線開業元年。シェアキッチンの運営会社、利用者、双方の夢の実現に期待がかかります。

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