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<株式投資に「絶対」はないが、増収増益や連続増配を長期にわたって続けている企業は注目に値する>
断るまでもなく、株式投資に「絶対」はない。では、投資対象の俎上に載せるべき銘柄は、何を頼りに絞り込んでいくのか。
一口に言えば、経験則である。過去が教える経験に学ぶべきである。当面の動きを学ぶ経験則としては「チャート」がある。また、中長期投資(株式投資による資産形成)を勘案するなら、「長期間にわたる連続増収営業増益銘柄」「長期連続増配銘柄」に学ぶ方法がある。今回は後者を検証してみたい。
まずもってお断りしておくが、本記事に登場する銘柄を「買い対象とする」ということではない。参考にしつつ、「これらに続く銘柄」に着目したい、というのが主旨だ。
増収増益を連続◎十年続ける3社
便利な時代になった。「長期増収営業増益企業」や「長期連続増配企業」のランキングを手に入れるには、かつてなら証券会社の株式投資情報部に出向き、口説きに口説いてキャッチしなくてはならなかった。が、いまは投資情報紙誌や、あるいはネット媒体で容易に手にすることができる。
さて、そこで問題。以下のA〜Cに該当する連続増収営業増益企業はどこでしょうか?
【A】
・前期(2024年3月期)までの連続増収営業増益は、22年間
・2000年設立、2007年上場
・本稿執筆時点の株価1300円台前半、予想配当利回り2.80%。年初来高値2077円/安値1258円
・前期は11.8%増収、15.6%営業増益。今期計画も10.2%増収(101億円)、5.2%営業増益(51億円)
【B】
・前期(2023年6月期)までの連続増収営業増益は、32年間
・1980年設立、1996年上場
・株価3800円前後、予想配当利回り0.55%。年初来高値4122円/安値3146円
・前期は、5.8%増収、18.7%営業増益。今期計画は第2四半期開示と同時に、6.9%増収(2兆円)、23.5%営業増益(1300億円)に上方修正。中間期実績はそれぞれ、1兆475億9400万円、755億100万円
【C】
・前期(2023年9月期)までの連続増収営業増益は、23年間
・1995年設立、2005年上場
・株価7000円強、予想配当利回り1.1%。年初来高値1万865円/安値6624円
・前期は25.5%増収、25.6%営業増益。今期計画は、16.1%増収/中間期16.0%増収(353億4100万円)、23.1%営業増益/中間期20.5%営業増益(124億7000万円)。中間期計画に対し開示済みの実績はすでに360億9900万円、126億5200万円。上方修正の公算大
この3社、実は、長期連続増収営業増企業の上位3社である。答えは本記事の最後に記すので、ぜひ考えてみてほしい。
(参考記事)「配当貴族」花王とドンキ、ヤオコー それぞれに見る優良企業への道
中長期・好パフォーマンスの可能性
そもそも、こんな作業をしてみようと思い立ったのは、持論の裏付けを手にしたいと考えたからだ。正直に言うと、上位3社をはじめランキング上位に関して作業をして、裏付けが得られなければ「やめよう」という曖昧な考えではあったが......
私は短期投資(いわゆる「トレード」)を否定はしない。短期投資がなくては、株式市場は成り立たない。だが私自身は、株式投資で資産を形成することが「本道」だという認識が高い。それを実現するための一つの切り口として「長期連続増収営業増益銘柄は格好の銘柄選択法に違いない」と判断した。
上の3銘柄について過去10年間の株価パフォーマンス(株式分割等を勘案した調整済み株価。以下同)を算出した。その結果は......
【A】3.08倍
【B】3.83倍
【C】6.59倍
納得のいく結果を見せてくれた。他にも、ランキング上位の企業には以下のような銘柄が続く。
【第4位】エス・エム・エス<2175> 連続増収営業増益21年間。今3月期も継続計画
【第5位】ベルク<9974> 同19年間。今3月期も継続計画
【第6位】ビジネス・ワンホールディングス<4827> 同16年間。今2月期も継続予定
【第7位】グリーンクロス<7533> 同15年間。今4月期も連続計画
【第7位】MonotaRo<3064> 同15年間。今12月期も連続予定
【第7位】オービック<4684> 同15年間。今3月期も継続計画
【第7位】SCSK<9719> 同15年間。今3月期も増収営業増益予定
【第7位】ヤオコー<8279> 同15年間。今3月期も増収営業増益予定
各企業の過去10年間の株価パフォーマンスはどうか。我が住処から徒歩2分にある、埼玉県を中心に関東圏で184店の食品スーパーを展開するヤオコー(7位タイ)を例に引くと、過去10年の株価パフォーマンスは2.66倍。
他にも10年に着々近づいている銘柄などは「中長期好パフォーマンス銘柄」の可能性を孕んでいると言えるのではないだろうか。
(参考記事)日本版・配当貴族指数が誕生 その魅力とインフレ時代に人気の理由
4半世紀以上の連続増配も
次いで、長期連続増配銘柄を検証してみる。
第1位は花王<4452>で34年。第2位はSPK<7466>の25年。花王に関しては「目下、収益構造の改革と格闘中」という指摘がある。だが両社とも、4半世紀以上の連続増配という意味は大きい。
アメリカの重要株価指標S&P500の構成銘柄の中で「連続増配25年以上」で構成される「配当貴族指数」があるが、名だたるファンドマネージャーはそのパフォーマンスを上回ることを年次目標としている。花王の過去10年間の株価パフォーマンスは目下49%にとどまっているが、SPKは2.1倍。
ランキング上位企業としては、この2社に続いて、こんな銘柄が登場している。
【第3位】三菱HCキャピタル<8593> 連続増配24年。株価1031円。予想配当利回り3.1%。過去10年の株価パフォーマンスは84%
【第3位】小林製薬<4967> 同24年。5544円。1.49%。57%
【第5位】ユー・エス・エス<4732> 同23年。1248円。2.58%。35%
【第5位】リコーリース<8566> 同23年。5100円。2.6%。64%
【第5位】トランコム<9058> 同23年。6210円。1.9%。27%
【第8位】ユニ・チャーム<8113> 同22年。5131円。0.71%。76%
【第9位】沖縄セルラー電話<9436> 同21年。3595円。2.67%。2.22倍
【第9位】サンドラッグ<9989> 同21年。4045円。2.57%。65%
やはり、10年に近づく連続増配を示している銘柄は要注目と言えるのではないか。
*正解*
【A】イー・ギャランティ<8771> 東証プライム。企業の売掛債権保証で成長
【B】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532> 東証プライム。旧ドン・キホーテ
【C】GMOペイメントゲートウェイ<3769> 東証プライム。EC業者向け決済処理サービス
[執筆者]
千葉 明(ちば・あきら)
東京証券取引所の記者クラブ(通称・兜倶楽部)の詰め記者を振り出しに、40年以上にわたり、経済・金融・ビジネスの現場を取材。現在は執筆活動のほか、講演活動も精力的に行う。『野村證券・企業部』『ザ・ノンバンク』『円闘』など著書多数。
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