高校や中学校、そして小学校でも金融教育が始まった。
新NISAもスタートし、「お金」や「投資」にまつわることが、さまざまな人にとって身近になってきた。
しかし、お金の知識を詰め込んだだけでは、本質を理解できず、お金を増やすこともできない。
こう語るのは、日本初の独立系直販投資信託会社「さわかみ投信」の取締役・熊谷幹樹さん。著書『格差社会を生き抜く投資の哲学 君の未来とお金の関係』(幻冬舎)から、将来的に予想される“格差社会”で大切な「お金」に対する考え方について一部抜粋・再編集して紹介していく。
金融リテラシーは本当に必要?
社会保障費は右肩上がり、年金は削減という未来は、日本に何をもたらすのか?
給料の約半分が徴収されるような社会では、給与以外の収入源を持つことなしに現在の生活水準を維持することはできない。
日本は望むと望まざるとにかかわらず、給与以外の収入源を持つ者と持たない者に二分された格差社会になっていく。
「一億総中流」は過去のものとなり、持てる者はさらに豊かになり、そうでない者はさらに貧しくなる、つまりは現在のアメリカのような社会になっていくだろう。
この記事の画像(4枚)では格差社会の中で、上になる者と下になる者とを二分するものは何か?
多くのビジネス書やお金に関する本は、こう答えることだろう。金融リテラシー、つまりは「お金に関する知識」のある・なしが決め手となる!!と。
金融リテラシーとはなんともカッコイイ言葉だが、私は金融リテラシーそのものが重要だとは思わない。
お金の知識が無意味だとは言わないが、知識よりも、お金を何のためにどう使うかが本質である。
もしそうでないならば、経済学の先生方は全員スーパーリッチになっているはずだ。
必要なのは「目的意識」と「行動力」だ。
お金を増やす4要素
つまりは目的意識を持って情報を集め、目標を設定し、それを実現するために必要なお金と対峙(たいじ)していくこと以外あり得ないのだ。
金融リテラシーという名の下、夢や目標もなく、知識ばかり詰め込んで行動を起こさなければ、きっとお金は増えてはいかないだろう。
(1)「稼ぐ力を伸ばす」(2)「コスト削減」(3)「長く働く」(4)「お金を働かせる」がそれだ。
この4つのどれもがきわめて大切だが、君たち若者にとってもっとも大切なのは、(1)の「稼ぐ力を伸ばす」だろう。
私は「生み出す力」と表現することもある。だがこれは、一朝一夕に身につくというものでもない。
(2)の「コスト削減」も大切で、特に投資の原資づくりには欠かせない。ただし君たちのような若者の場合、今は(3)の「長く働く」は考えるべきではない。
労働時間の短縮が世の流れだし、就労期間延長が視野に入ってくる定年ははるか先。
さらには副業を持って長時間働くよりも本業に専念するほうが、もっとも大切な(1)「稼ぐ(生み出す)力を伸ばす」ために、正しい姿勢であるからだ。
そうなると、前述のとおり(4)の「お金を働かせる」すなわち投資が、これから日本人にとってとても重要な選択肢になる。
真の金融リテラシーはこれ!
投資を始める上で、投資先として投資信託を選ぶ者も、自分で選んだ企業の株式に投資する個別投資を選ぶ者も、あるいは金投資など、数ある投資の中からどれを選んだとしても、きっと知人に話を聞いたり、あれこれ調べたりもするだろう。
動いていくうちに少しずつ理解も深まり、これまで聞き流していたニュースの内容も耳に残るようになるはずだ。
さらに興味がわけば、日本経済から果てはインド経済の行く末まで調べてみたくなるかもしれない。
新しい発見があるたびに、新しい疑問が生まれてくるに違いない。それがまた次の行動を生んでいく。
投資に向けて行動を起こすことで世の中の動きに敏感になり、敏感になることで社会に対する知識が雪だるま式に増えていく。
こうした循環は実際に行動し、投資を「他人事」でなく、「自分事」にして初めて生まれる。
投資とは、そうした視野を広げる機会を買うことでもあるのだ。
つまりは目標を設定して行動を起こすことこそが、「真の金融リテラシーを身につける」ことそのものであり、いくら学校に通っても、本当の金融リテラシーは行動抜きに身につけることなど決してできないものなのだ。
熊谷幹樹
2001年、日本発の独立系投資信託会社であるさわかみ投信株式会社に入社。アナリスト・ファンドマネージャーを経て取締役運用調査部長に就任し、現在同社の戦略立案実行部門を主導。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA®)
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