タクシー不足を解消するため今年4月から解禁されている“ライドシェア”。タクシーの免許がなくても有料で客を乗せることができるこの制度に県内でいち早く導入しようと武雄市が取り組んでいます。背景にどういった課題があるのか観光地武雄のタクシー事情を取材しました。

【リポート・木村賢勇】
「武雄温泉駅近くの飲み屋街です、ただいま時刻は金曜日の午後10時過ぎごろですが、タクシーの姿は一台も見当たりません」

武雄市武雄町の川端通り。
西九州新幹線の高架沿いに多数の飲食店が軒をつらね、地元の人を中心に多くの客が夜を楽しみます。
しかし週末のこの日、通りにタクシーの姿はほとんどなく目立つのは運転代行業者。
街で話を聞いた全員が運転代行を利用していました。

【女性】
「歩いてきてタクシーで帰るとか昔はむっちゃあったんですけど、もう今はタクシーが捕まらないから代行で帰るようにしてます」
「タクシー高いし、夜結構早いんんじゃないですか。遅い時間までやってるイメージがないので」

武雄市では市内を運行するタクシー会社2社とも深夜の営業をほぼ取りやめている状態です。街の飲食店は…

【バーの店員】
「タクシーの時間がもう営業時間決められてるんで、その時間までで帰る方とかはやっぱいますね」

この場所で45年間スナックを営むママは交通の変化が街にも変化をもたらしたと話します。

【スナック壺のママ】
「若い人はね結構いますけども今まで来てくれてたお客さんはほとんど足がなくて出てこれない。タクシーは1時間待ちって言われたり、夜中の12時とかに奥さんに迎えに来てって電話したりしてる人結構いらっしゃいますね」

武雄の夜の街を直撃するタクシー不足。
背景にあるのはやはり、ドライバーの人手不足です。

【温泉タクシー 山口輝二郎社長】
「コロナ禍を経てドライバーの数が大幅に減少いたしました」

1951年創業、高度経済成長期から70年以上武雄市の交通を24時間支えてきた温泉タクシー。

「よろしくお願いします、はい失礼致します」

4年前、コロナ禍で需要が減少し深夜の営業や予約の受け付けを停止、ピーク時は100人近くいたともいうドライバーの数は38人まで減り、山口社長も自らハンドルを握るほどドライバー不足が深刻です。

【温泉タクシー 山口輝二郎社長】
「予約をいただきたいのは山々なんですけども、それが守れないということになるともっと大きな問題になるというところで申し訳ない」

一方、日中の武雄は温泉などを目当てに多くの観光客が訪れます。
市の観光協会に話を聞くとその旅行スタイルには大きな変化がでていました。

【武雄市観光協会 山下裕輔会長】
「専門の方に選んでもらうっていう旅行の計画を立てるっていうのが昔の旅行の形。今はお客様1人で計画・予約など全部なされるわけですよ。タクシー捕まるか捕まらないかわからないようなところで計画は立ちません」

個人で旅行プランを立てることが浸透し、予約できるかわからないタクシーを選ぶ旅行客は少なく、レンタカーなどを使うケースが増えているそうです。

こうした中、武雄市が導入を目指しているのが“日本版”ライドシェア。
タクシー会社がドライバーを管理することを条件にタクシーの免許がない人も自家用車などで客を乗せ報酬を得ることができる制度で、今年4月から都市部を中心に運用が始まっています。

【武雄市まちづくり部都市政策課 田中良輔主任】
「旅館組合さんだったりとか飲食業組合さんで市民団体の方からもライドシェアについては要望がございましたので。タクシー会社と共存共栄っていう中でですね、タクシーの運賃と同等と言う形で考えております」

市は、現在開かれている市議会にライドシェアの実証運行の事業費などを盛り込んだ予算案を提出、県内の自治体で初めてとなる導入を目指しています。

【武雄市まちづくり部都市政策課 田中良輔主任】
「利便性が向上されるということで、夜の観光の町だったりとかそういったところにもいい影響が出てくるのではないか」

市のこの方針に地元の飲食店からは歓迎する声が聞かれました。

【バーの店員】
「タクシーの営業時間を伸ばしてもらったりとかできたら、遅い時間まで楽しんでいただけたりできるかな、またコロナ前までの活気が戻ってきてほしいとは思ってます」

一方、地元のタクシー会社は「運行できない時間などサービスを補完するのは仕方ない」と話すものの抜本的な解決策になるのか疑問を口にします。

【温泉タクシー 山口輝二郎社長】
「タクシードライバーが増えるような方策、その部分に色々やっていただければはやいんじゃないかなって気はしますね」

西九州新幹線の開業から1年半が過ぎ、武雄市の昨年度の宿泊客数は開業前の3年前と比べ1.5倍近く増えています。

【武雄市観光協会 山下裕輔会長】
「新幹線が通ったから安心だなんてとんでもない話、とんでもない話ですよほんと締め直してやっていかないと。ほんとにここに必要なのかっていうのはね、やっぱり市民の皆で考えないと」

ライドシェアの導入ががリピーター獲得につながり市の発展の起爆剤となるのか議論の行方が注目されています。

武雄市によりますと、まず年内に約3カ月間交通機関の利用状況を調べ、その結果をふまえ、ライドシェアの実証実験を今年12月から約2カ月間行う予定だということです。

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