記者会見する日銀の安達審議委員(29日、熊本市)

日銀の安達誠司審議委員は熊本市で29日に開いた記者会見で、日銀による国債買い入れの減額について「日々の(国債の)需給をみながらその都度判断する」と述べた。「減額ありきで長期金利が高騰しすぎると本末転倒だ」と指摘し、本格的な減額計画をあらかじめ示すことには慎重な認識を示した。

日銀が開いた熊本県金融経済懇談会の後に記者会見した。

日銀は3月の金融政策決定会合で国債を買い入れて長期金利を抑える長短金利操作を撤廃しつつ、国債の買い入れ自体は「これまでとおおむね同程度」で続けると決めた。これを受け、日銀は月約5兆〜7兆円の範囲内で国債を購入する方針を示し、実績は6兆円程度が続いている。

買い入れ額は今後減らす方針だが、本格的な減額が始まる時期やペースは未定だ。一方で、日銀は13日の定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)で、残存期間「5年超10年以下」の購入予定額を500億円減額した。これが「日銀が早期に国債買い入れ減額に動く」との市場の思惑につながり、長期金利の上昇に弾みがついている。

安達氏は減額の予見性を高める考えについて問われ、「時間軸は別として段階的に減らす選択肢をとった。予見性を示すと次の減額を期待する状況にどんどんなっていくため、今の段階では判断がつかない」と語った。

「最初は現場に裁量を任せている範囲で対応する。事前に計画とか基準をもって機械的に決めていくというよりその場の判断でやっていくということだ」とも話した。

足元で進む長期金利の上昇についてはコメントを控えたものの、「景気に悪影響を与えるほどの上昇になれば、懸念される状況になるので、より注意深くモニタリングする材料の一つだ」と言及した。

日銀による今後の利上げについては「物価上昇率が2%に向けて着実に上がっているという状況のもとでは非常にゆっくりとしたペースで金利を調整していくのが一番適している」との見方を示した。

会見では円安が進むことで輸入物価の上昇などを通じて物価が上振れし、金融政策に影響が出る可能性についても問われた。安達氏は「いまの円安の状況がもし長期化すれば影響が出てくるはず。いまの動きがそこに向かっているかを注視しなければならない」と述べた。

日銀が買い入れた上場投資信託(ETF)の処分を巡っては、「いろんな識者の意見も聞きながら、割と長いタイムスパンで考えるということだろう」と意見した。

(新井惇太郎)

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