2024年央以降の発売が予定されている、クラウンシリーズ最後の刺客のエステート。新型はワゴンとSUVのクロスオーバーで、SUVの風味が強く出ている。

 しかし、クラウンエステートの歴史を遡れば、1999年登場のステーションワゴンが真っ先に思い浮かぶものだ。もうすぐ登場の新しいエステートを吟味する前に、名車と呼び声高い、元祖エステートの実力をおさらいしておこうではないか。

文:佐々木 亘/写真:TOYOTA、ベストカー編集部 ほか

■久しぶりの新型ワゴン

1999年登場のクラウンエステートのベースとなった11代目トヨタ クラウン

 クラウンエステートは、11代目クラウン(S170系)をベースに作られた。クラウンのステーションワゴンがモデルとしては、12年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたクルマなのだ。

 クラウンエステートの登場前は、1987年に登場した8代目(S130系)のワゴンモデルが、幾度もマイナーチェンジを施されて継続生産されていたという歴史がある。

 久々に大変革を起こすステーションワゴンの登場に、市場は沸いた。クラウンエステートは、新型クラウンワゴンの登場を12年も待ったファンの期待を大きく超えて、歴史に名を残すクルマに仕上げられたのだ。

■アスリートのイメージが強いがロイヤルも準備されていた

トヨタ クラウンエステート“ロイヤルサルーン”。2001年のマイナーチェンジで姿を消した

 クラウンエステートは、2001年にマイナーチェンジを受けて、グレードがアスリート単独に変わっている。登場からわずか2年余りで、ロイヤルサルーンが消えてしまったのだ。

 これにより、クラウンエステート=アスリートのイメージが強い。ただ、前期型にはクラウンの象徴でもあるロイヤルサルーンが存在していたことを、覚えておいてほしい。

 クラウングリルの周りをメッシュグリルが囲うのが、アスリートの特徴だ。グリル内には「ATHLETE」の文字も浮かぶ。その名に違わず、走りを追求したモデルとなった。

 アスリートのみに搭載されたエンジンが、2.5LターボのJZ-GTEエンジン。VVT-iとセラミック製ターボとの相乗効果で、わずか2,400回転で最大トルクを迎える。ステアリングシフトマチックによる軽快なシフトワークで、ドライビングの喜びを積極的に積み込んだワゴンだ。

 この他に、ロイヤルサルーンと共通となる3.0L直噴エンジンのBEAMS D-4と、2.5LJZ-GEエンジンを搭載する。アスリートは各グレート共通で、ゲート式のシフトレバーを採用しているのも特徴の1つだ。

 一方、ロイヤルサルーンは、クラウンのアイデンティティとも言うべき、伝統的な格子パターンのグリルを採用した。日本が世界に誇るプレミアムワゴンであり、おもてなしの心が隅々へまで宿されている。

 シフトレバーは優雅に引き下ろす直線パターンを採用。落ち着いたデザインのホイールを設定するなど、アスリートとの差別化はしっかりと行われていた。

 足回りのチューニングも、アスリートとロイヤルサルーンでしっかりと分けられている。走りを愉しむアスリートには、スポーツチューニングを施したダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用する。旋回時における重心高の上下動を押さえ、旋回・制動時にも安定した車両姿勢を確保できる硬めの足だ。

 一方、ロイヤルサルーンの足には、快適な乗り心地をもたらすための専用チューニングが施された。

■ユーティリティにも死角なし! まさに国産最上級ワゴン

トヨタ クラウンエステート“アスリート”。2007年まで販売された

 パワーシートはもちろん、バックドアイージークローザーといった、プレミアムワゴンに必要な装備は欠かすことなく用意されているのがクラウンエステート。

 さらに面白いのはリアシートのシートバックに、パーティションネットを装備している点だ。ELR付きの巻取り式になっており、使用しないときにはスマートに格納されているのがクラウンらしい。

 またメーカーオプションとなるが、換気機能の付いたラゲージルームエアピュリファイヤーを用意するところも気が利いている。

 そしてクラウンエステート最大の魅力は、頑丈であるということだろう。17系クラウン全般に言えるのだが、致命的な故障が起きにくい。ボディもシャシーも強く、クルマとしてもくたびれにくいのも、また良いところだ。

 既に初期型は20年を優に超えているが、まだまだ元気バリバリの現役車が多い。

 人気、実力、体力のすべてが揃っているのが初代クラウンエステートだ。これから登場してくる2代目は果たしてどんな仕上がりになっているのか。エステートの名が17年ぶりに戻ってくる。その仕上がりを、期待せずにはいられない。

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