皆さんはヴェロッサを覚えているだろうか。マークIIの兄弟車として後釜を引き継いだ由緒あるクルマなのだが、何故か知名度が低い気がする。しかしこのクルマには、当時のトヨタ開発陣が新時代のセダンの命運託したと言っても過言じゃない程、「仕上がっていた」クルマだった。

文:小鮒康一/写真:トヨタ

■「エモーショナル セダン」を開発テーマとしたヴェロッサ

2000年10月に登場したマークIIに遅れることおよそ9カ月後に登場したヴェロッサは、実質的にはチェイサーとクレスタの後継車種であった

 今ではすっかり不人気ジャンルのひとつになってしまった感のあるセダンだが、90年代中盤ごろまではカローラが不動の販売台数ランキングトップで、ミドルクラスセダンのマークIIがそこに続くという状態が続いていた。

 そんなマークIIも時代の流れには逆らえず、9代目モデルを最後にイメージを刷新しようとしたマークXにバトンタッチをすることになるのだが、そんな9代目マークIIは長らく続いたマークII、チェイサー、クレスタの3兄弟体制をやめ、あらたに「ヴェロッサ」という兄弟車を置くことになった。

 2000年10月に登場したマークIIに遅れることおよそ9カ月後に登場したヴェロッサは、実質的にはチェイサーとクレスタの後継車種であった。

 チェイサーのスポーティさとクレスタの高級パーソナルセダンというキャラクターを併せ持つモデルとし、「エモーショナル セダン」を開発テーマに誕生した。

■マークⅡよりもよりスポ―ティな仕上がり

 プラットフォームはマークIIと共通であったため、搭載されるエンジンは直列6気筒の2L、2.5L、2.5Lターボで、前後ダブルウィッシュボーン式のサスペンションなど、基本メカニズムは同一だったが、足回りはマークIIよりも固められたスポーティなものが与えられていた。

 そしてデザインにおいては非常にエモーショナルなイタリアンデザインを採用し、メーカー曰く「塊から削り出した彫刻のように堀の深い面とやわらかな曲線による情感溢れるデザイン」となっていた。

 さらにインパネもマークIIとは異なるデザインで、楕円をモチーフとした4つの立体的レジスターとスモークメッキリングにより個性を強調。

 そして室内照明色を赤色で統一し、情感とスポーティ感を強く演出していたのも特徴だった。

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■不思議顔は本場イタリアを意識?

ヴェロッサは終売まで2.4万台ほどしか売れなかった

 車名のヴェロッサはイタリア語の「Vero(真実)」と「Rosso(赤)」を組み合わせた造語であり、特別仕様車の「セレチオーネ」(選択を意味するイタリア語)や、モデリスタが手掛けたチューンドモデル「スペチアーレ」(特別を意味するイタリア語)などイタリアを強く意識した同車。

 今見れば唯一無二の個性を持ったモデルとも言えるが、どちらかというと当時のトヨタのセダンを選ぶ人は保守的なユーザーが少なくなかったこともあり、2004年春にマークIIより先に終売。

 結局9代目マークIIが18万台超の販売台数をマークしたのに対し、ヴェロッサは2.4万台ほどと残念ながら新たな需要を掘り起こすことは叶わずに姿を消すことなってしまったのだった。

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