コンパクトミニバンの両雄と言えば、シエンタとフリード。それぞれに使い勝手の良さがあり、優劣のつけにくい両者だが、今回は乳児期の子供を抱える新米パパ・ママが使った場合、どちらを選ぶべきかを考えてみた。

文:佐々木 亘/写真:HONDA、TOYOTA

■小さくて小回りが利くのは日本の道路の正義になる

2022年登場の現行型(3代目)トヨタ シエンタ。2024年に入ってからの販売台数はモデル末期のフリードを大きくリードしている

 フリードがモデル末期ということもあり、2024年に入ってからの販売台数はシエンタが大幅リードだ。2月末の時点で、シエンタが約1万8000台、フリードは約1万2000台(フリード+を含む)となった。シエンタは昨年11月から、月間の販売台数ランキングで4か月連続1位にも輝く。

 シエンタが人気の理由はいくつもあるが、まず取り上げたいのはクルマのサイズ感と取り回しのしやすさだ。

 シエンタのボディ全長は4,260mm、対するフリードは5mm長い4,265mmとなる。フリード+はシエンタよりも35mm長い4,295mmだ。最小回転半径は、シエンタが5mに対してフリードは5.2m。ほんの少しの違いだが、細い路地での取り回しや駐車の際にはシエンタの方が扱いやすい。

 フリードが決して悪いわけではないが、取り回しの面ではシエンタに軍配。コンパクトミニバンを探す上で、やはり運転のしやすさは外せないというなら、現状はシエンタを選ぶ方が吉となる。

■今も未来も考えてシートはやっぱりベンチでしょ!

トヨタ シエンタの7人乗りシート。2列目はベンチシートとなっている

 シエンタとフリード、両者で最も大きく違うのは、基準となる乗車定員数である。

 シエンタは5人・7人を選ぶ形になるが、2列目シートはどちらもベンチシートだ。クルマづくりの基準はベンチシートであり、ベンチシートありきで作り込まれている。対するフリードは6人・7人を選択する形であり、4WDは6人乗りのみ。つまりキャプテンシートの6人乗りを基準にしてクルマが設計されているのだ。

 2列目にチャイルドシートを設置して、さらにベビーのお世話を車内で行うとなると、キャプテンシートよりもベンチシートが使いやすい。

 特に両親と乳幼児の3人で使う場合は、助手席が空いて、チャイルドシートの隣にパパ・ママのどちらかが座ることになるだろう。この時も、座席が離れたキャプテンシートよりもベンチシートの方が何かと便利になる。

 フリードは圧倒的に6人乗りで使うことを前提に作り込まれたクルマだ。ベンチシートにすると、フリードの良さが減ってしまう。ならば最初からベンチシート前提のフリード+という手もあるが、応急用に3列目は残しておきたい。

 例えば、祖父母も含めた3世代で、近くのお食事処へ出かけるとなった時、5人乗りのクルマにチャイルドシートを積んだ状態では、大人4名+乳児の乗車は厳しい。補助席でもなんでも、3列目が必要となるだろう。さもなければ、クルマ2台で出かけなければならない。

 子供の乳幼児期、実家へお世話になる機会が多くなると、このシチュエーションは結構な頻度で発生するだろう。

 この時にクルマ1台で出かけられる、3列シートコンパクトミニバンがあるのはスマートだ。ベンチシート基準で3列シートとなると、比べるまでもなくシエンタ一択になってくる。

 今後、子供が二人・三人と増えても、ベンチシートなら子供と横並びで3人まで乗れるから、5人家族でも2列目までで乗り切れるというのも魅力の一つ。長く使うことを考えても、キャプテンシートのフリードよりも、ベンチシートのシエンタの方が良いというわけ。

■新型フリードの内容次第でパワーバランスは変わるかも

2024年5月に先行公開された新型(3代目)ホンダ フリード。2024年6月発売とアナウンスされている

 おそらく次世代もフリードは6人乗りを基準にして、クルマづくりを進めてくると思うが、フリードがベンチシート需要に対して一定の進化を見せれば、現在のパワーバランスが大きく変わってくる可能性もある。

 また、キャプテンシートのフリードは3列目へのアクセスが抜群に良いので、子供が幼児期から就学児のあたりだと、使いやすさがシエンタの比ではないだろう。3列目を片方出して、変則的な5人乗りなど、シートアレンジが多彩なので、子供が大きくなってきたらフリードをおススメしたい。

 今回は、乳児一人の核家族前提で話を進めたが、ライフステージによってクルマのベストチョイスは変わってくるはずだ。実際に触って乗って、今の使い方には何が良いのか吟味できると、クルマ選びがより楽しく、有意義な時間に変わっていく。

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