アメリカのバイデン大統領は2024年5月14日、中国製EVに対して関税を現在の25%から100%に引き上げると発表した。最近、テスラで値下げの動きが出ているが、今後の米中関係はいったいどうなるのか? 自動車関連の動きを予測する。
文:国沢光宏/写真:ベストカーWeb編集部、AdobeStock(トビラ写真:and4me@AdobeStpck)
■世界BIG2、米中の自動車戦争がついに始まった!?
アメリカと中国の殴り合いが始まった。もちろん暴力じゃなく、貿易です。アメリカは数年前から自国の産業を中国に取られ、空洞化することを懸念し始めた。
実際、最近アラスカに行って土産物を物色したところ、99%がメイドインチャイナ。安価な物品だけならよかったのだろうけれど、PCやスマートフォン、家電製品までメイドインチャイナに席巻されつつある。
それでも容認していたアメリカながら、ついに自動車産業まで中国が台頭してきた。アメリカにとって多くの雇用を生み出す自動車産業は死守すべき防衛ライン。だからこそ1980年代に日本との間で”貿易戦争”が起こった。
今回もまったく同じ図式だと考えていいだろう。ただ、中国は「了解しました親分!」で妥協した日本と違い、簡単に折れない。戦おうとしている。
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■水面下での交渉で中国サイドがまったく譲らず
2国間で問題発生となった際、ふつうなら正面から殴り合う前に、事前交渉を行う。当然の如くアメリカと中国も高官レベルですりあわせを行ったと思う。されど中国が譲らなかったらしい。
3年くらい前のこと、アメリカは日本の自動車メーカーや部品メーカーに「中国製部品を使ったらどうなるかワカランよ」という通達を出した。オーディオのような部品もバラし、中国製パーツがあったらアウト。
相当に厳しい内容である。その後、日産リーフに使われているAESCの電池(アメリカ工場製)に中国製の部品が使われていたと発覚したのだけれど、電気自動車補助金を全額カットされることになった。
アメリカの動きを見ると、ホンキで中国を閉め出そうとしている。そして中国はホンキで怒っている。お互い大きな市場規模を持つ大国なので、もはや意地の張り合いです。
■アメリカは中国製EVに100%の関税を!
どうなるかと思っていたら、アメリカはさらなる締め出し策を打ち出してきた。中国製の電気自動車や半導体の輸入に際し、100%の関税をかけるという法案を提出したのだった(現在は25%)。
半導体について言えば材料なので10万円の商品に占める割合はタイしたレベルじゃないけれど、クルマの100%関税は事実上の閉め出しを意味する。これ、ほぼケンカだ。
事実上、中国の電気自動車をアメリカで販売することは不可能になった。アメリカに工場を作ることまで禁止されたワケじゃないものの、小さい部品の輸入すらできない。それだけでなく、さまざまな制限を加えてくると思う。
習近平主席は意地とプライドでできていると言われる。中国が折れることなど考えられない。アメリカ市場はケンカしたままの状況でにらみ合いになるだろう。
■中国メーカーサイドの動きはどうなるのか?
となると、中国としては欧州や新興国に出て行かなければならない。ところが欧州も中国車に対して厳しい制限をかける方向で動き始めた。そらそうだ。安価で高性能の中国勢が入ってきたら、欧州の自動車メーカーは全滅すること間違いなし。
現在、中国市場なしだと非常に厳しいドイツが中国勢の閉め出しに反対しているけれど、アメリカと同じく決定的な制限を掛ける方向だと思う。
エネルギーがあり余る中国勢はどうするだろう? 中国から外国勢を追い出さないと中国勢のシェアが増えない。というか、あえて外国勢に制限をかけずとも、中国勢との競争に勝てないと思う。
すでに上海工場で生産しているテスラは値下げを繰り返したって売れゆきを落とし、在庫の山を抱え人員削減している。テスラ、このまま縮小していく一方だろう。中国勢と戦って勝てる見込みなし。
■日本勢の中国市場は今後どうなる?
日本勢も厳しい。トヨタですら台数を落とし始めた。現在進行形で中国市場への投資をしているホンダながら、早期退職を募ったらあっという間に1700人が手を挙げたという。
ホンダで働いている中国人社員がホンダの将来を危ぶんでいるワケ。遠からず日本勢は中国のビジネス規模を縮小せざるを得なくなる。中国が世界規模で自動車産業を引っかき回している。
日本はどうか? 欧米に出て行けない中国だからして、日本市場が魅力的に見えることだろう。日本政府も中国政府に対しては弱腰だ。補助金の減額くらいしかできまい。
2024年の秋くらいから中国車メーカーは本格的な日本攻めを始めると予想しておく。今の中国なら補助金なしでも日本ではハイブリッド車くらいの価格設定をしてくる。いよいよ現代の黒船がやってくる! 頑張れニッポン!
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