「若者のクルマ離れ」と言われて何年になるだろうか?もう10年くらいは経過しているような気がする。10年も経てば若者と呼ばれる層は変わってくる。そこで今回はKINTOの調査結果と共に若手自動車ジャーナリストの筆者が「若者のクルマ離れ」について考察していく。

文:西川昇吾、写真:TOYOTA

■本質的に若者はクルマ好きなはずだ!

自動車を運転することが好きだと感じるZ世代は地方では66.4%、東京では66.2%が「とても感じる」「やや感じる」という肯定的な回答をした

 KINTOは3月に東京都内在住のZ世代(18〜25歳)314名と、地方(政令指定都市がない県)在住のZ世代(18〜25歳)306名を対象に「Z世代のクルマに対する意識比較調査」を実施した。これはKINTOが2022年から毎年続けているものだ。

 その調査によると都内の回答者の約半数がクルマ離れの自覚アリと回答があった。しかし、この回答は年々減少傾向にあるそうだ。しかし、個人的に注目したいのは「自動車を運転することが好きだと感じますか?」という質問に対する回答だ。

 これに対して地方では66.4%、東京では66.2%が「とても感じる」「やや感じる」という肯定的な回答をした。地方と都心の差がないことにも驚かされた。

 また「将来的に自身の自動車を欲しいと思うか?」という質問には地方で78.1%、東京で68.8%が肯定的な回答となった。このような調査結果を見てみると若者は本質的にはクルマ好きなのではないかと筆者は思う。

■イベントで感じる若者のパワー

 筆者は走行会やオフ会など実際のユーザーが集まる自動車イベントにも取材で足を運ぶことがある。そこでの様子を見ていると正直若者のパワーを感じる。

 現在26歳の筆者と同世代、もしくはそれよりも年下なオーナーたちが頑張ってクルマを所有している。そんな印象のオーナーを多く見かける。反対に約10年前に若者と言われていた30代半ばから40代前半あたりの層が少ない印象だ。

 これは時代背景もあるだろう。Z世代とされているような現在の若者は丁度親がバブルの恩恵を受けた世代だ。筆者の両親もそうである。「クルマでモテた」なんて時代なんだから、他の世代よりもクルマが好きな人の割合が多かったことだろう。その世代の子供となればクルマに興味を持つ人が増えても不思議ではない。

 また、若者のクルマ離れと騒がれた始めた時代の若者は、就職氷河期世代ともオーバーラップする。そのような背景もあるのだろう。確かに今の若者だって豊かでないし、頑張って所有しているオーナーが多い。

 ただ、今の就職状況は売り手市場であり人手不足と言われている。言い換えるなら「まぁ仕事先はなんとかなるでしょ!」みたいな気持ちを持てるか持てないかの差は大きい。

■クルマというモビリティにしかできないこと

パーソナルなモビリティを自分のモノにできたら……そんな憧れから「自身の自動車が欲しい」という回答が多く寄せられたのだろう

 また、春休みシーズンになると大学生と思われる集団がレンタカーで移動しているのをよく見かける。公共交通機関では不便な観光地だったり、沢山の荷物を積んだり、クルマというパーソナルなモビリティにしかない価値は若者も認識しているようだ。

 そんなパーソナルなモビリティを自分のモノにできたらカーシェアやレンタカーだけでなく、思い立った時にスグに使うことができる。そんな憧れから「自身の自動車が欲しい」という回答が多く寄せられたのだろう。

 都内を中心にやはり若者がマイカーを持つのは厳しいという側面もある。日本がより経済的に豊かになれば、若者がマイカーを持つ具体的な未来が描けるはずだ。

 クルマというパーソナルなモビリティにしか出来ないことを多くの若者に気づいてもらえるように、業界の若手代表として筆者も精進していきたいと改めて思った。

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