世界各地を転戦するF1グランプリ。三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットでも毎年「F1日本グランプリ」が開催されている。バスマガジンでも開催に伴う臨時バス輸送の様子をレポートしているが、今年もその様子をお届けしたい。

文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)

■白子駅の様子

貸切車には窓に「サボ」を貼り付けて対応

 2024年は秋に開催されていた例年とは異なり、初めての春開催となった。期間中の3日間で計22万9000人、決勝日の4月7日は10万2000人と昨年よりも多くの観客が訪れ、満開の桜の下でF1グランプリを楽しんだ。決勝の日は天気もよく、晴れた空と桜を楽しむ家族連れも多くいたようだ。

三重交通本体だけではなくグループ会社も含めて続々とやってくる

 さて筆者は決勝日の4月7日の日曜日に白子駅へと向かった。本来であれば鈴鹿サーキットに着いている時間だが、今回は観戦券を持っていると見ることができない時間帯を見にやってきた。時刻は13時30分で、鈴鹿サーキットでは既にお昼のドライバーズパレードが終了し、ピットレーンがオープンされコース上ではセレモニーが始まっているころだ。

トップドア標準床のエルガ

 駅を出ても人の数はまばらで、ロータリー周辺には駅員や三重交通の係員など関係者が多い感じだ。三重交通の案内によれば、往路の鈴鹿サーキット行きバスは13時までということだったが、ロータリーを見ると緑のバスが停車していて乗客を待っている状態だった。

古いガーラもやってくる

 ぱらぱらではあるが乗車していく人を確認することができた。まだギリギリ決勝のスタートには間に合うので午前中に用事のあって急いでやってきた感じだろうか。少しするとバスは鈴鹿サーキットに向けて出発していった。

■そのころ商店街では?

通常の路線バスとして走る小型車

 バスを見送って商店街へ歩いた。各所にはカラーコーンやコーンバーがたくさん置かれており、おそらく待機列の整理で使用したものだと思われる。

古いガーラでこの塗色は珍しい

 また商店街は終日通行止めというわけではなく、往路運行終了と復路運行開始までの間は通行止めが解除されている。よってこの時間だけは日常の光景が広がる。多くの観戦客が列を作っていた混雑が幻のように思える。

■市内でのお買い物はココ

LEDデータが入っていない車両は「三重交通」幕で運行!

 看板を見ると復路のための交通規制は16時からと書かれていたので、時間を潰すことにした。白子駅近くにはイオン白子店があったが、閉店リニューアルし3月28日に「そよら鈴鹿白子」としてオープンした。

出せるものは高速車も含めて全部出すのが三重交通の流儀?

 ここはイオンモールのような大型店ではなく、都市型の日常使いができるコンパクトな店舗で、買い物もしやすい。鈴鹿サーキットの行き来をする際に買い物やお土産など、立ち寄り利用に最適だ。

■復路の時刻直前

グループの八風バスのエアロバス

 時刻が15時30分となり再び白子駅前を訪れた。周辺道路はそろそろ回送表示のバスが集まり始めていて、鈴鹿サーキットへの移動を始めているようだった。また鈴鹿サーキットからの復路シャトルバスは15時から運行開始ということなので1台、また1台と間隔はあるものの観客を乗せたバスが到着していた。

京都線指定車の高速車まで登場!

 まだ決勝レースは続いているので、最後まで見るものだろうと思っていたが、そこはそれぞれの都合があるのだろう。この時間は駅前の道路が規制されていないため、通常の路線バスと同様にロータリーにある降車場で降車扱いをしていた。降車バス停は駅まで歩く距離が少ない。降りた観客は足早に駅へと向かった。

■復路の道路規制開始!

ハイデッカーから路線車まで並ぶ並ぶ!

 16時ごろになると信号機が操作され、道路の規制が始まった。バスの経路を変更して駅のロータリーまでバスを進めていたのを商店街の横で停めて降車扱いをする流れに切り替わった。直進すると横断歩道があるので渡って駅へと向かう。

満員のハイデッカー車で戻ってきた

 バスが到着する道路の先には国道23号線が交差していて、そこから曲がって入ってくる流れになると渋滞を引き起こしてしまうため、国道の1つ手前の交差点でから国道を直進して商店街の道路へ入るようにルートが設定されている。

路線車では立席で満員状態!

 これでスムーズに進入できるようだ。交差点の東側、白子駅のある方から眺めていると続々とバスが到着してくる。1回の信号のタイミングで4~5台程度は入る感じだ。駅前の交差点に近いところから順に停車させ、F1を楽しんだ観客が続々と降りてくる。

「直通」幕データが入っている路線車

 そのまま駅へと向かう人もいれば、商店街の居酒屋や食堂など空いているところを探して入っていく人もいる。見ていると観戦客が帰ってくるタイミングに合わせて、16時開店にしているお店がほとんどのようだ。

■降車扱い後の処理状況

最適なルート設定と信号操作で一気に数台が到着できる

 その後のバス誘導にも対策がしっかり取られているようで、観戦客を降ろした回送バスは交差点を左折、その先の交差点も左折することで再び西、すなわち鈴鹿サーキット方面へ向かえる。ただし交差点間の距離が長くないので、バス4台くらいのスペースしかないようだ。

残り少ないツーステップエアロスターは希少車だ!

 信号1回でだいたい4~5台がやってくるのでテンポよく送り出してしまうと、そのうち左折ができなくなってバスが渋滞してしまう。そこである程度バスが道路に並んだタイミングで直進させ、白子駅のロータリーに流して迂回させていた。

ハイデッカー車ではトランクの利用可否が重要?

 ロータリーはやや大きいので、迂回をさせることでさらに5台以上はプールすることができる、このような工夫で鈴鹿サーキットへ戻るバスを渋滞することなく送ることができていたようだ。

セレガRは三重交通ではまだ現役!

 さらに降車も全てが同じタイミングで完了するわけではないので、どうしても差が生まれてしまう。後ろからはどんどんと入ってくるので、商店街の後方にバスを停めてしまうと次のバスが交差点に入りきれなくなってしまう。

古いガーラも現役活躍中!

 何よりも降車後に歩く距離が長くなってしまうので、なるべく前のバスの状況を見ながら前に詰めて停車させることや、前のバスが降車に時間がかかるようであれば、降車終了バスを追い越させて回送できるように誘導していた。幸い商店街の道路は規制されているので、2台が並行に停車しても大丈夫だ。

■まさに総力戦!

終バス時刻を表示することで乗り遅れ注意を喚起する

 その後もしばらく眺めていたが、国道23号までバスが詰まることはなく、順調に降車・回送で送り出されていったようだった。駅の階段通路やホーム上の混雑が激しくなってきたので白子駅をあとにした。 今回はF1日本グランプリの臨時バス、主に鈴鹿サーキットから白子駅へと向かう復路のシャトルバスの定点観測を中心にお届けした。

 白子駅の人やバスの流れを見ていると順調に見えたが、鈴鹿サーキット側は大変な混雑になっていたようで、バスに乗車できるまで1時間以上は待つ状態だったという。

 他の交通機関も同様で名古屋へ向かうF1観戦ツアーバス・サーキットEXPRESS号、伊勢鉄道の鈴鹿サーキット稲生駅からの列車などもかなりの待ち時間だったようで、より便利で待ち時間の短いルートはどれなのかの最適解を選択する必要があったようだ。

■終バス付近までいるのも一考!

たまたま高速車が並ぶと巨大ターミナル駅前のようだ

 以前のFI波動輸送記事でも書いたが、決勝の日曜日の渋滞・混雑は仕方ないことなので、園内で楽しめるイベントやアトラクションを時間いっぱいまで使うこともオススメしたい。ただ鈴鹿サーキットからの最終バスの時間があるので、それまでにはバス乗り場にたどり着きたい。ちなみに決勝日の4月7日は19時30分が最終時刻だった。

 そして2025年のF1日本グランプリもシーズン序盤である3月に開催されることが決定した。第3戦は4月4日~6日に開催される。再び桜の季節に開催となるようだ。観戦客はもとよりレース関係者やドライバーに日本で迎える春と桜は好評らしい。

旧タイプのLED側面表示は往復で変えなくていいように工夫されている

 桜満開の鈴鹿サーキットでF1観戦を楽しみたいが、往復で余分なストレスがたまらないように対策を取っていただきたい。そして混雑状況をよく確認して楽しく気持ちよくF1日本グランプリを満喫していただきたい。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。