クルマを運転するのになくてはならないのが免許証。とはいえ、いつも財布に入れっぱなしでほとんど目にすることがない……なんて人も多いはず。でもその免許証の有効期限、大丈夫ですか?

文:井澤利昭/写真:写真AC

■ついやってしまいがちな「うっかり失効」

免許証更新を知らせるハガキは、その年の誕生日の1カ月ほど前に送られてくる。ところが何らかの手違いや事故で届かなかったり、家族が誤って破棄してしまうこともあり、「うっかり失効」の原因に……

 公道を走るすべてのドライバーやライダーが取得し、運転中は必ず携帯しているはずの運転免許証。ご存じのとおり運転免許証には有効期間があり、更新手続きをしないまま期限が過ぎてしまうと、その免許証は無効となる。

 免許証の有効期間は、免許を初めて取った新規取得者や取得後5年未満の初回更新者、過去に交通違反や人身事故などを起こした違反運転者、71歳以上の高齢者であれば3年。

 70歳で更新期間満了日の直前の誕生日に71歳を迎える人であれば4年。それ以外の優良運転者であれば5年で、それぞれ誕生日から1カ月後が期限満了日(土日祝日であればその翌日)となる。

 通常、期限満了日の2カ月ほど前には、更新を知らせる通知が免許証に記載された住所へと郵便ハガキで送られてくるハズだが、直前の引っ越しなどで届かなかったり、単純に忘れてしまっていたなど、免許更新のタイミングが知らぬ間に過ぎてしまっていた……というパターンは案外多い。

 また、元号が令和になる2020年以前に更新した免許証には西暦での表記がないため、自分の免許証の有効期限が切れていることに気がつかないということもあるという。

 こうした「うっかり失効」の場合は救済措置が設けられており、期限を過ぎてから6カ月以内であれば、適正試験と講習のみで免許の再取得が可能。

 さらにそこから6カ月が過ぎた1年以内であれば、普通免許や準中型免許、中型免許、大型免許に限り、適性検査と所定の講習を受けることで仮免許を取得することができ、やや手間はかかるものの、その後、自動車学校での教習後に運転免許試験場での学科試験にパスするか、路上での練習後、運転免許試験場での学科・技能試験にパスするといういずれかで、免許を再度取得することができる。

 ただ、失効から1年を超えてしまうと救済措置はなくなり、残念ながらイチから免許を取得することになるため、「うっかり失効」には充分に気をつけたい。

 なお免許を失効した場合、再取得するまでは無免許状態となるため、絶対にクルマの運転をしてはダメ。発覚すれば違反点数25点で以降2年間は免許が取得できないうえ、刑事罰として3年以下の懲役または50万円以下の罰金という重い処分を受けることになる。

■免許更新のタイミングが合わないなら「期間前更新」もあり

 先ほども少し触れたとおり、免許証の更新期限満了日はその年の誕生日の1カ月後が基本となる。ただし、更新手続き自体は期限満了日の2カ月前となる誕生日の1カ月前から可能だ。

 ところがその期間中、海外への長期出張や出産、手術などで入院するといった予定があり、満了期限のタイミングで更新手続きができないというケースもありうる。

 仮に失効したとしても、こうした「やむを得ない理由がある」とされるケースでは、最長で3年以内であれば適正試験と講習のみで免許の再取得ができるものの、やはりいい気はしないもの。そんな時に活用したいのが、運転免許の「期間前更新」だ。

「期間前更新」とは文字どおり、更新手続きが可能となる満了日から2カ月前のさらに前のタイミングで免許証の更新ができる特例制度のこと。

 申請時には通常の更新手続きの際にも必要となる現在の免許証や手数料に加え、海外出張であればパスポートや出張命令書、入院の場合は母子手帳や診断書など、「期間前更新」が必要な理由を証明するための書類を提出する必要がある。

 ここで注意しておきたいのが「期間前更新」で更新手続きをすると、次回更新時までの免許証の有効期限が短くなってしまうという点。

 通常、免許証の有効期間は、古い免許証の期限満了日からカウントされるのに対し、「期間前更新」では適性検査を受けたタイミングからカウントが始まり、その後1回目の誕生日を迎えた時点で1年が経過したことになる。そのため最長で1年、免許証の有効期間が短くなる可能性があるのだ。

 長期海外出張が多い人や出産などの予定がある人にはうれしい「期間前更新」ではあるものの、免許証の有効期間が短くなるというデメリットがあるということも覚えておきたい。

■紛失したら速攻、遺失物届けを!

財布を落としたり、盗られたりした場合、そこに入っていたクレジットカードやキャッシュカードの停止や無効化の手続きにばかり気がいってしまい、免許証のことをすっかり忘れてしまうなんてことも

 財布をうっかり落としたり、盗られたりなどで、一緒に入れていた免許証まで紛失してしまうということは、誰にでも起こりうるトラブル。

 そのままクルマを運転してしまうと「運転免許証不携帯」の違反となり、取り締まりの対象となれば反則金3000円の罰金となるうえ、盗難の場合は悪用される危険性も高いため、免許証をなくしたり、盗られたことに気がついたら一刻も早く再交付の手続きをとるようにしたい。

 と、その前にやっておかなければいけないのが遺失物届けだ。最寄りの警察署や交番に加え、最近ではスマホやパソコンを使ったオンラインでの申請もできるので、再交付の申請前に必ず届けを済ませておこう。

 さらに免許証の悪用を防ぐため、銀行やクレジットカード会社など、信用情報機関にも免許証紛失の旨を伝えておくと安心できる。

 遺失物届けが無事終わったら、続けて免許証の再交付手続きに移ろう。

 免許証の再交付手続きは、警察署や運転免許センターおよび試験場などでできるが、都道府県によってはその場所がかぎられることもあるので、前もってネットや電話で調べておくと手続きがスムーズに進むはず。

 当日は窓口に備えられている「運転免許証再交付申請書」および「運転免許証紛失・盗難てん末書」に必要事項を記入し、申請用の写真1枚とマイナンバーカードやパスポートなど身分を証明できるものを添えて窓口へと提出する。ここでは手数料として2250円も必要となるので忘れずに。

 即日交付に対応している運転免許センターなどでは1時間程度で再交付を受けられるが、警察署などでは2週間程度かかることもあるため、すぐにでも運転する事情がある場合は、この点もあらかじめ確認をしておいたほうがいいだろう。

■顔写真が気に入らない時も再交付申請できる!?

 なお免許証の再交付は紛失以外にも、洗濯などによる破損や、汚れて記載事項が読めないといった場合にも可能。

 また、変わったところでは「免許証の顔写真が気に入らない」という理由での再交付も、2019年の道交法改正時からできるようになった。

 ちなみに紛失などでの再交付でなくした免許証が見つかった場合は、古い免許証を返納する必要がある。早めに運転免許センターや警察署に持っていくようにしたい。

 数年に一度ということもあって、意外と知らないことが多い免許証更新時のあれこれ。万一のトラブル時にも慌てず対処できるよう、免許証更新や再交付に関する知識は、ある程度知っておきたいものだ。

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