スポーツモデルの場合、コストなどの関係もあり頻繁にモデルチェンジすることが出来ないため、どうしてもモデルライフが長くなる。その間に改良を重ねて完成度を高め「熟成」させていく。ここではマツダ ロードスターの熟成度を、改めて乗って確認してみる。

※本稿は2024年11月のものです
文:松田秀士/写真:大西靖、マツダ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年12月10日号

■あまりの熟成度に驚かされた!

2015年登場のマツダ ロードスター(ND型)。改良を受けるたびに完成度が高まっていった

 現行ND型のデビューは2015年。コンパクトなボディながらフロントにダブルウィッシュボーン式、リアはマルチリンク式のサスペンション。2ピニオン式電動パワステは「前引き」ステアリングという構造。

 これはステアリングギヤボックスが前輪車軸より前に配置されることを意味し、前輪を操舵するタイロッドが車軸の前で押し引きしているのだ。

 例えば左旋回している時によりストレスが掛かる右側前輪を引っ張る方向で操舵できる。ストレスの少ない左前輪は押す方向。タイロッド等の金属棒は引っ張りには強いが押しには弱い。この構造だとトーアウト変化を最小限に抑えることができ、なおかつ細くして軽量化も可能。F1マシンはすべて前引きなのだ。

 ステアリング前引きついでにいうと、BRZは「後ろ引き」だ。つまり車軸の後ろ側で押し引きする。より太く強固なタイロッドが必要になる。一般的にこの方式はFFに多いのだ。

 ロードスターは熟成改良の過程で2度驚かされた。1度目は2021年に限定モデルとして追加された990S。2015年デビュー当時の、今となってはガサツなコーナー進入時のステアリングフィールやコーナリング中の足のドタバタ感、すべてが嘘のようにスムーズだった。

 しかし、最も驚かされたのが直近の2023年10月の改良だ。ステアリングギヤボックス系の剛性アップと電動パワステの容量アップ。アシンメトリックLSDの採用。いやいやこれでこんなに身のこなしが変わるなんて! 大人のスポーツに成長した。

●熟成の過程
・2015年5月発売
・2015年10月RS&NR-A追加
・2016年11月RF追加
・2018年6月一部改良
・2019年11月一部改良
・2021年12月一部改良、990S追加
・2022年11月一部改良
・2023年10月大幅改良など

 現在のND型のデビューは2015年。デビュー当時はややバタついた足回りの印象だったが、これが大きく進化したのが2021年12月の改良。

 KPCと呼ばれる内側後輪の浮き上がりを抑えるメカが装備されたことでコーナリングの洗練度格段に向上。軽量化された990Sは軽快なハンドリングが味わえた。さらに今回の改良で完熟の域に達したと言える。

●マツダ ロードスター RS
・全長×全幅×全高:3915×1735×1235mm
・ホイールベース:2310mm
・車両重量:1040kg
・エンジン:直4DOHC 1496cc
・最高出力:136ps/7000rpm
・最大トルク:15.5kgm/4500rpm
・トランスミッション:6MT
・WLTCモード燃費:16.8km/L
・サスペンション(前・後):ダブルウィッシュボーン・マルチリンク
・タイヤサイズ:195/50R16
・価格:367万9500円

★マツダ ロードスター……完熟度:120度

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