幼い子どもと一緒にクルマで出かけるにはチャイルドシート、ジュニアシートは必須。だが、皆さんは正しい使い方、そして新基準があることはご存知だろうか? ここでは、子供用自動車シートの正しい使いかたと新しい基準を解説する。
※本稿は2024年10月のものです
文:加藤久美子/写真:JAF、ベストカー編集部 ほか(トップ画像=deagreez@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年11月10日
■チャイルドシートを使ったにもかかわらず痛ましい事故が発生。なぜ?
2024年8月18日、福岡県内で悲惨な事故が起きた。母親が運転するワゴンRスマイルの後部座席にシートベルトを使って座っていた5歳と7歳の女児が路線バスとの正面衝突の衝撃で命を落としてしまった。腰ベルトがおなかに食い込んだことで内臓を損傷し大量の内出血を引き起こしたのだ。
また2021年、北海道ではジュニアシートを使って助手席に座っていた5歳男児がやはり同じ腰ベルトによる内臓圧迫が理由で死亡している。
シートベルトやジュニアシートを使っていたのになぜ死亡? ニュースを見た多くの人はそう思うだろう。その理由はただひとつ。腰ベルトが正しい位置に掛かっていない状況で強い衝撃を受けたからだ。
3点式シートベルトは肩(鎖骨)と両腰骨の上を通るように使用する。大きな衝撃を3カ所の「骨」で受け止めることで拘束の効果を発揮する。亡くなった3人の子どもたちはいずれも、腰ベルトの位置が不適切で内臓を強く圧迫されたことで亡くなってしまった。
間違った使い方で凶器になるのは腰ベルトだけではない。肩ベルトが首に掛かることも非常に危険だ。事故の衝撃を受けた際、首に掛かった肩ベルトによって頸動脈を切断し即死した例も日本国内で確認されている。
安全の象徴とされるシートベルトも正しく使われないと命を奪う恐ろしい凶器となる。チャイルドシートを卒業した4歳(身長~100cm)からシートベルトが正しく使える12歳(~150cm)までは、ジュニアシート(学童用チャイルドシート)を正しく使って子どもを守る義務がある。
福岡の事故で亡くなった女児のうち5歳といえばまだジュニアシート(以下、ブースターシート)使用の義務年齢である。また7歳も義務年齢を過ぎているものの、7歳女児の平均身長は約120cm。シートベルトが使える身長150cmまでは30cmも足りない。
北海道の5歳男児は背もたれのないブースターシートを使用していたが、こちらも着座状態が悪く腰ベルトがおなかに掛かっていた。事故直後ドクターヘリが到着するまで大きな異変はなく意識もしっかりあったのだが、最悪の結果となってしまった。
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■チャイルドシートは身長ごとに3種を使い分ける
チャイルドシートには乳児用・幼児用・学童用の3タイプがあり、それぞれ兼用タイプもある。
乳児用は身長76cmを超えるまで衝突安全性の高い後ろ向き使用がマスト。幼児用は76cm〜105cm、学童用は150cmまで使える設計だ。乳児・幼児用はシート本体をクルマの座席にシートベルトやISOFIXを使ってしっかり取り付け、子どもの体はシートに備わる5点式ハーネスで拘束する。
また、学童用はシートベルトが使える高さまで座面を上げる仕様なので、子どもを座らせてからシートベルト1本で子どもの体とシートを同時に固定する。
学童用シートは常にクルマの座席に固定されているわけではないのでシートが滑って動きやすく、子どもの着座姿勢も崩れやすい。特に背もたれなしのブースターシートは正しく使われている状態のほうが珍しいといえる。
クルマに乗った時点では正しい位置にベルトが掛かっていても移動中に眠ってしまったり、兄弟でじゃれあったりするうちにベルトが首やおなかに掛かる状態になってしまうのだ。
最近はブースターシートにおいても簡単、確実に固定できるISOFIXタイプが普及してきたので、これから買うならぜひISOFIX固定を選んでほしい。
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■チャイルドシートはこう使おう&こう選ぼう
まず子どもの身長を目安に使用できるチャイルドシートを選んだら、「R129認証」を得ているかを確認(旧基準のR44も新品ならOK)。次にクルマとの適合を車種適合表等で確認する。
絶対にやってはいけないのは「年齢」で選ぶことだ。年齢は単なる目安なので身長を基準に選ぶことが必須となる。
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