マフラーはエンジンから出る排ガスの音量を小さくするための装置。様々な機構や構造によって音量を小さくしているが、どうしてもそういった構造が排気抵抗になる。排気効率の良いマフラーにすることで、パワーアップをしようと言うのがマフラー交換の狙いだ。
◆マフラーの構造で重要となるいくつかのポイント
純正マフラーでは多くの場合、隔壁構造が使われている。これは内部にいくつかの部屋が用意されているような構造で、小さな入り口から部屋の中に排ガスが入り、また他の小さな入り口から排ガスが出ていく。そんなイメージである。
それを繰り返すことによって徐々に音量を小さくしている。この構造のメリットは劣化しにくいこと。後述のストレート構造のマフラーでは、どうしてもグラスウールが劣化していくことで音量が大きくなりがちだが、隔壁構造では基本的に音量が大きくなる事は少ない。
ストレート構造のマフラーは、アフターパーツのマフラーでよく使われるもの。穴が多数開けられたまっすぐのパイプに排ガスを通し、その周囲をグラスウールと呼ばれる。高温に強いガラス繊維でできた綿のような繊維で包んでおく。
そうすることでグラスウールに音や振動が吸収され、音量が小さくなる。排気効率を悪化させにくいので、アフターパーツメーカーのマフラーにはよく採用される構造だが、このグラスウールが徐々に痩せたり劣化してしまうことで音量が大きくなってきてしまうことがある。そのため純正マフラーではあまり採用されていないのだ。
とは言え、現在のチューニングパーツメーカーでは、グラスウールの質やその使い方が良くなり、使い込むことで音量が大きくなる事はほとんどない。安心して長期間使えるものが販売されている。
◆マフラー交換の実際に得られるメリットを知ろう
マフラー交換のメリットとしてはもちろんパワーアップがある。排気効率が良くなることでエンジンからはスムーズに排ガスが出ていく。そうなるとスムーズに吸気もしやすくなりエンジンパワーが上がるだが、正直マフラー交換で大幅に何十馬力もパワーが上がったのは、20年以上前の話。
現在のクルマではピークパワーで数馬力アップが平均。5馬力も上がればかなりのパワーアップと言える。だが、実は体感ではもっと大きなパワーアップを感じられる。それはエンジンレスポンスのアップとパワーの測り方による部分が大きい。
マフラー交換をすると排気抵抗が少なくなるのでエンジンのレスポンスが良くなる。アクセルを踏んだときに素早くエンジンが反応してくれるようになり、エンジンパワーをすぐに取り出せるようになる。
例えば高速道路で追い越し車線に移ろうと思って、アクセルを踏んだときに、瞬時に加速してくれる場合と一瞬の間があってから加速する場合では、その体感に大きな違いがある。それと同じで瞬時にパワーが出てくれることで、クルマの姿勢も作りやすくなり、クルマ自体が軽く感じられる。
また、何馬力アップと言うものは、シャシダイと呼ばれる装置でパワーを測定した結果だが、これは低回転からアクセルを全開にして、レッドゾーンまで回したときのパワーを測るもの。
そこにアクセル操作に対するレスポンスなどは現れないので、単純に全開時のパワーの移り変わりがわかるだけ。 なので、数値では数馬力のアップでも、体感ではそれ以上のアップに感じられるのだ。
◆重量や素材でも大きく性能に違いが出てくる
また軽さ的な部分でのメリットもある。特に古い車ではマフラー交換をするだけで数十kgの軽量化になることもあった。最近のクルマは純正マフラーもかなり軽量にできているので、アフターパーツのマフラーにしても数kg軽くなる程度だが、それでも軽くできるメリットは大きい。
また同じ重さでもよりクルマの中心部に近い部分を重くして、オーバーハングの部分を軽く設計している場合もある。そうなると重量的にはほぼ変わらなくても運動性能的にはアップが期待できる。
また価格的には30万円以上と高くなってしまうが、チタン製のマフラーも販売されている。チタンの場合は、純正マフラーに比べて圧倒的に軽くすることができ、センターパイプから含めた車種の場合は10kg以上の軽量化が可能になる。価格が高いが、その軽量化の効果を考えれば、コストパフォーマンスは高いパーツである。
いずれにせよ、2010年4月以降に製造されたクルマの場合は、事前に認証制度に合致したマフラーでなければ公道で使用することができない。どんなに音量が小さくてもDIYやショップでワンオフしたマフラーでは車検に通ることはできないのだ。逆に言えば、それ以前のクルマであれば、自作やワンオフのマフラーでも指定された排気音量の規制を満たしていれば公道で使うことができる。
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