日本政府は、2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を目指している。しかしちょっと待ってほしい。内燃機関車(エンジン車)には、電動車では決して味わえない音や匂い、そしてフィーリングがある。EV時代が来る前に堪能したい名機はこれだ。

文/木内一行、写真/スバル、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、CarsWp.com

■グループA基準で開発されたセミレーシングエンジン「日産・スカイラインGT-R」

第2世代GT-Rのトリを務めたR34GT-Rは、R33からボディサイズおよびホイールベースを縮小し、ボディ剛性を高めることで運動性能がアップ。角度調整式のリアスポイラーは、モータースポーツ活動で得たノウハウを活かしたアイテム

 モータースポーツのために生まれてきたエンジン。こう言い切れるのがRB26DETTだ。R32GT-Rに搭載するために開発されたパワーユニットで、グループAレースのレギュレーションを考慮して排気量を2.6リッターに設定。

 これにツインセラミックタービンをドッキングするとともに大型空冷インタークーラーや6連スロットルチャンバーなどを装備し、280ps/36.0kg-mというスペックを発揮した。また、レースを想定したエンジンだけあり、高い強度と耐久性も特徴だった。

 そして、その後も追加モデルやマイチェンで改良や仕様変更が行われ、進化を続けていったのである。

 1998年に登場したR34GT-Rは、そんなRB26DETT最後の搭載車にふさわしいモデルとなった。ボディは先代R33よりもコンパクトになり、世界トップレベルの高剛性を実現。各部の軽量化も実施され、前後の重量配分も見直された。

 エンジンも各部をリファイン。カムシャフトの変更や新型ツインボールベアリングターボの採用により、40.0kg-mの最大トルクとより鋭いレスポンスを手に入れた。また、新たにゲトラグ社製6MTが組み合わされたこともトピックだった。

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■痛快な伸びと扱いやすさを両立するコアテクノロジー「ホンダ・S2000」

 今やホンダのアイコンとなっているVTEC。

 可変バルブタイミング・リフト機構のことで、高回転用/低回転用という2種類のカムをエンジン回転数や車速によって切り替え、バルブタイミングやリフト量を変化させるというもの。これにより、低中回転域での扱いやすさを犠牲にすることなく、高回転・高出力を引き出すことが可能になった。

 このVTECを初めて採用した1.6リッターのB16Aは、1989年登場のインテグラに搭載。100ps /リッターを達成するとともに8000rpmまで一気に吹け上がるレスポンスを実現し、一躍注目のテクノロジーとなったのだ。

 その後VTECはバリエーションを増やし、スポーツユニットだけでなくエコ志向のエンジンにも採用されていった。

 そんなVTECの魅力を一番に感じられるのが2シーターオープンのS2000。250psを発揮する2リッターのF20Cをフロントミッドに搭載し、リアルスポーツらしい軽快かつダイレクト感に満ちた走りを味わわせてくれる。

 2005年のマイチェンでは2.2リッターのF22Cへ変更。最高出力は8psダウンしたが、低中回転域でのトルクアップを実現。その一方、許容回転数が下がったことを嫌うファンも少なくなかった。

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■30年も活躍したスバルフラット4の代名詞「スバル・WRX」

 これほど長期間活躍したエンジンはじつに稀。2リッター水平対向のEJ20は、スバルを長きにわたって支えてきた屋台骨だ。

 それまでのEA系に代わる新世代エンジンとして開発され、1989年に登場した初代レガシィに初めて搭載。高効率化と高剛性化に力点を置き、高機能電子制御インジェクションシステムやクランクシャフトの5ベアリング化を実施した。

 そして、ターボ仕様では大容量水冷式ターボチャージャーや水冷式インタークーラーなどを採用し、クラストップレベルの220psを発揮したのである。

 その後も数多くの車種に搭載されたEJ20だが、幾度となく改良を繰り返し、デビュー当初と生産終了時ではほぼ別物。また、SOHC /DOHC、ターボ/自然吸気など、そのバリエーションは膨大だ。

 そして、最後のEJ20搭載車となったのが、2014年にモデルチェンジしたWRX。

 スタンダードのS4は新世代エンジンFA20にスイッチしたが、最強モデルのSTIはEJ20を継続搭載。基本部分は従来からのキャリーオーバーで最高出力も308psのままだが、ECU制御の緻密化により加速レスポンスが大幅にアップ。加速特性も最適化された。

 30年間にわたって活躍したEJ20。今後これを超えるフラット4は登場しないのではないだろうか。

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■マツダとともに成長したロータリーエンジンの集大成「マツダ・RX-8」

4ドア4シーターながら、クーペのようなフォルムと躍動感あふれるダイナミックなデザインでスポーツカーらしさを強調。2008年のマイチェンでは前後のデザインが改められて冷却性能が向上。全長もわずかに長くなった

 マツダが世界で初めて量産化に成功したロータリーエンジン。

 1967年にコスモスポーツに搭載されて以来、進化を続けてきたが、ひとつの集大成となるのが13B-MSP、通称RENESISだ。

 従来の13B-REWと同じ654cc×2の2ローターだが、サイド排気/サイド吸気のポートレイアウトなどの革新的な技術により、自然吸気ながらターボと同等のパワーを発揮し、時代にマッチした低燃費&排出ガスのクリーン化も達成。

 軽量化ローターなどにより、高回転化と圧倒的なレスポンスも実現した。

 このRENESISを搭載したRX-8は、独創の4ドア4シーターパッケージが特徴。

 センターピラーレスのフリースタイルドアシステムを採用し、クーペフォルムながらスポーティセダンにも匹敵する室内空間と乗降性を確保。独立したトランクは利便性も高い。

 ハイパワー仕様とスタンダード仕様があり、前者は250ps、後者は210psを発揮。2008年のマイチェンでは、ハイパワー仕様は細部の見直しや改良により最高出力は下がったものの、低中速域での加速感が向上。スタンダード仕様は5psアップした

 ちなみに、RX-8は2012年で生産終了となり一時はロータリーエンジンが消滅したが、2023年にはEV車(MX-30)の発電用エンジンとして復活した。

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■多彩な車種に搭載されるトヨタを代表するV6ユニット「トヨタ・ブレイド」

 トヨタの名機といえば、古くは2T-Gや4A-G、平成以降では2JZなどが挙げられるが、このエンジンもある意味、現代のトヨタを代表するマスターピースと言えるもの。それが3.5リッターV6の2GRだ。

 レクサス開業時に登場したISとGSに2GR-FSEとして搭載され、トヨタの直噴技術「D-4S」や吸排気バルブタイミングシステム「デュアルVVT-i」を採用し、ハイパワーと扱いやすさを両立したV6ユニットだ。

 そんな2GR、名機と呼ぶに値するのはその懐の深さ。レクサスGSの他にクラウンやマークX、アルファード/ヴェルファイアやエスティマ、ハリアーなど幅広い車種に搭載。さらに、ロータスにも供給してエキシージやエヴォーラにも採用されるなど、型式や仕様を変更し、キャラが異なるクルマたちにうまく対応しているのだ。

 ここで紹介するのは、その中で最小モデルのブレイド。

 オーリスの上位車種として開発され、上級グレードのブレイドマスターはD-4S未採用の2GR-FEを搭載。コンパクトな2BOXボディに280psを発揮するV6エンジンを組み合わせたことで、ホットハッチファンからも注目された。

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