2000年代に入り、急速に高まった軽自動車需要。ついにトヨタも2011年に軽自動車販売へ踏み切ることとなる。その先陣を切ったのが、ピクシススペースだった。現在のピクシスシリーズとは一味違う、気合の入ったその仕様を振り返っていこう。

文/佐々木 亘:写真/トヨタ

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■カクカクシカジカのOEMがトヨタの軽の始まりだ

2011年登場のトヨタ ピクシススペース。ダイハツ ムーヴコンテのOEMだった

 2011年9月26日、トヨタから軽自動車ブランドとなるピクシスシリーズがスタートした。第1弾はダイハツ・ムーヴコンテのOEM調達で「ピクシススペース」と名付けられる。以降、ムーヴコンテの販売終了となる2017年まで、トヨタエンブレムをつけた軽自動車として頑張っていた。

 ピクシススペースは、ミライースを基にするピクシスエポックよりも、ポップで可愛らしいクルマだった。ピクシスシリーズの中では、比較的好調に売れたクルマである。当時のカローラ店・ネッツ店においては、意外に重宝されていた。

 現在ではピクシスシリーズの元気は無く、乗用軽自動車のピクシスエポック、軽トラのピクシストラック、軽バンのピクシスバンの3種類だけとなる。これ以上減りも増えもしない状況だろう。

 ただピクシススペースが登場した当時は、その仕様にも結構力が入っていたのだ。

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■基本的にはムーヴコンテと同じというのが凄いこと

トヨタ ピクシススペースカスタム。ダイハツでおなじみの「カスタム」も用意されていた

 ピクシススペースの初期型の凄いところは、ほとんど丸まんまムーヴコンテだったということだ。トヨタの軽では、OEM元であるダイハツの仕様の一部を借りてくることが多かったのだが、ピクシススペースに関しては、ほとんど省略なくムーヴコンテが移植されている。

 そのためグレードが非常に豊富であり、ダイハツの軽ならではの装備も充実していた。

 標準タイプのボディでは最廉価のLと上級のXを準備。Xには革巻ステアリングやブラックインテリアが楽しめる「Black Interior Pack」が用意された。また、意外に嬉しかったのは、カスタムが用意されたことだ。

 ダイハツではムーヴやタントでお馴染みのカスタムシリーズ。ピクシススペースには、それがある。ブラック&シルバーラインのインテリアに、カスタム専用装備が目白押し。6スピーカーに3眼メーター、MOMOステアリングやHIDヘッドランプなどが、気分を高めてくれたのだ。

 グレード展開も幅広く、カスタムX・カスタムGというNAエンジンに加えて、カスタムRSにはターボ車もあった。

 残念ながら2012年の改良で、MOMOステアリング等は廃止されてしまうのだが、このころのトヨタには、メーカーにもディーラーにも、軽自動車を売るという気持ちが乗っていたように思う。

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■ピクシスジョイ・ピクシスメガと続くが奮わず

ピクシススペースの後継となったトヨタ ピクシス ジョイ C(左)、ピクシス ジョイ F(中)、ピクシス ジョイ S(右)。それぞれクロスオーバーのC、ファッションのF、スポーツのSと、3つのキャラクターがラインナップされた

 2017年に姿を消したピクシススペース。後継はピクシスジョイ(ダイハツ・キャストOEM)となるが、高級軽自動車路線のジョイでは、ピクシススペースのユーザーを完全に引き継ぐことはできなかった。

 次いで登場したダイハツ・ウェイクのOEMであるピクシスメガも同様。結局のところ、ピクシススペース亡き後は、トヨタの軽自動車販売も縮小傾向になり、現在では3車種(うち乗用車は1車種のみ)で落ち着いた。

 現行のダイハツ軽では、タフトやムーヴキャンパスあたりがOEMでピクシスシリーズに入ってくれば面白そうだが、昨今の情勢ではそれも難しいだろう。

 今では失敗事業ともとられてしまうトヨタの軽自動車販売だが、ピクシススペースのいた約6年間は成長を続けていたような気がする。トヨタディーラーの中には、もう一度軽自動車に力をと思っているところもあるだろう。

 起爆剤になるのは1台のクルマだ。ピクシススペースのような本気の軽が、トヨタに復活することを、心から願っている。

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