トラックの自動運転技術を開発している米国のトルク・ロボティクスは、ドライバー不在の同社の無人トラックが製品としての検証をパスしたと発表した。技術実証ではなく製品としての評価のため、今年初めより閉鎖コースを走行させたという。
日本を含め世界的にトラックドライバー不足が深刻化しており、輸送力の維持・確保のため自動運転システムへのAI(人工知能)技術の応用も期待されている。こうした技術を統合し、製品化に向けたハードルを越えた同社は、2027年の商用化に向けて大きな一歩を踏み出した。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Torc Robotics
ドライバーが乗務しない「無人トラック」の製品検証
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ダイムラー・トラックの独立子会社で自動運転技術の商用化に向けたパイオニアであるトルク・ロボティクス(米国バージニア州)は2024年10月29日、同社の自動運転トラックによる「高度な検証」の成功を発表した。
人間のドライバーが搭乗しない、無人状態でのトラックの完全自律運転を今年初めより複数車線の閉鎖コースで実施したもので、商用化のためには安全性や効率などの基準を設定した「製品検証(プロダクト・バリデーション)」というハードルを通過する必要があった。
無人トラックの製品検証は、燃費効率の最適化を図るため65mph(約105km/h)までの全速度域で行なわれ、技術実証を終え将に製品としての評価が進んでいることを伺わせる(米国の大型車の最高速度は州によって異なるが、70mph弱が実行速度の上限)。
トルクは2027年までに安全で堅牢な自動運転トラックソリューションを大規模に商用化すると表明しているが、無人トラックの検証を通じてその立場をさらに明確にした。
この検証もデモンストレーションのための走行ではなく、全く新しい市場にスケーラブルな商品を投入するためのマイルストーンとしている。
人工知能(AI)技術とシステムアーキテクチャ、量産化を視野に入れた組み込みハードウェア、安全機能などを融合することで、ソフトウェアにおける真のベストプラクティスと、全ての人にとってより安全な道路環境を実現する製品を形にするという。
無人トラックはAI技術の応用が最も期待される分野?
トルクの最高技術責任者(CTO)を務めるCJキング氏はプレスリリースにおいて次のようにコメントしている。
「”AI”は間違いなく今年最大のバズワードです。しかし現実世界での応用例はごくわずかしかありません。自動運転トラックはAIの応用として最も期待される分野の一つで、収益とビジネス価値の改善により、業界の変革を推進します。
トルクは安全な自動運転ソリューションの最前線にいます。私たちがこの技術において最も重視しているのは、安全性、スケーラビリティ、コスト効率の全てを成立させることです。これまでの実績と今回のマイルストーンは、貨物輸送の未来に向けて安全を重視するというトルクの取り組みをさらに強化するものです」。
こうした検証は、安全性と製品の成熟度に関してトルクが厳格な基準にコミットしてしていることを示すと同時に、無人トラックの実用化に向けた段階が、高度な開発・エンジニアリングから、それらを統合し製品化するという重要なステップに移ったことも示している。
トルクのCEO、ピーター・ボーガン・シュミット氏は次のように話している。
「収益性と拡張性に優れたビジネスを構築するというミッションの達成のために、自動運転ソリューションで世界をリードする弊社は重要な瞬間を迎えています。
ダイムラー・トラックの傘下で北米最大手のトラックメーカーであるフレイトライナーの『カスケイディア』大型トラクタが、トルクの自動運転プラットフォームを活用して何度も無人での運行を行ない、その素晴らしい信頼性を確認しました。
安全性と運行コスト、使いやすさ、そして信頼性を重視する運送会社様のために、自動運転ソフトウェアの価値を最大限に引き出せることを楽しみにしています」。
トラックの自動運転で世界的なリーダーとなっているトルク・ロボティクスは2005年創立で、スタートアップが多い分野ながら20年近い歴史を持つ。ダイムラー・トラックが出資し、同社の独立子会社という位置づけ。特に物流ハブ間の長距離輸送を念頭に、安全で、信頼でき、コスト競争力のある自動運転ソリューションを市場投入することを目指している。
ちなみに、この発表の翌日(10月30日)にはトレイトン・グループ(フォルクスワーゲンの商用車部門)と提携するプラスが、AIによる自動運転システムのベータバージョンを欧米でテストしていることを明らかにしたほか、11月5には日本の大型4社(いすゞ、日野、ふそう、UD)などが新東名高速での大型トラック自動運転の公道実証を開始したことを発表するなど、世界的にトラック自動運転技術の開発競争が加速している。
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