現在、ミニバンの主流は「スライドドア」になっているが、一昔前を思い出すと、結構ヒンジドアのミニバンが多かった。特にトヨタは、ミドルサイズミニバンの多くがヒンジドアで、デザイン性に長けていた印象を受ける。スライドドアよりも少し不便だが、圧倒的にカッコよかった、トヨタのヒンジドアミニバン5台を紹介していこう。
文/佐々木 亘:写真/トヨタ ほか
■ヒンジドアがスライドドアよりも長けている点
今はミニバンに限らず、ファミリーユースを念頭に置いて開発されるクルマのほとんどが、スライドドアを採用している時代。軽自動車もコンパクトカーも、挙ってスライドドアだ。
確かに、開閉時に隣のクルマへドアを当てる心配はほとんどないし、大きな開口部が生まれて乗り降りしやすいのはスライドドアの特徴であろう。特に小さな子供がいる家庭では、重宝する機能だ。
しかしながら、便利なスライドドアと引き換えに、失っているものもある。
スライドドアは、その機構がゆえに重い。さらには大きなドア開口部によってボディ剛性が失われている。10年・10万キロといった、長期間・長距離の使用下では、耐久性が気になる。さらには、スライドドアの機構によって、ボディデザインの制約が大きい。
ヒンジドアは軽量で高耐久であり、デザインも自由度が増す。最近では、ミニバン同士の比較よりも、スライドドアミニバンかヒンジドアSUVかという、車種選択の悩みが出てくるだろう。どちらの方が、自身にとってのメリットが大きいかを考えて、スライドドアとヒンジドアの選択をしてほしい。
ファミリーユースだからといって、必ずスライドドアが正義なわけではないのだ。
■丸くてかわいいイプサム3兄弟
トヨタのヒンジドアミニバンの代表格と言えば、イプサムだ。オデッセイとの厳しい戦いには敗れたが、当時の子供たちからの支持は根強く、かわいいキャラクターの「イプー」も大流行した。
乗用車ライクで運転しやすい5ナンバーサイズのボディに、7人が乗れる広さをもっていた。角のない、優しいスタイリングも魅力的だ。
イプサムよりも卵型のワンモーションフォルムを強くしたのが、ナディアである。5人乗り仕様だけだから、ミニバンにカテゴライズするかは微妙なところだが、分類上はステーションワゴンというよりもミニバンに近いと思う。
Aピラーがしっかりと寝ているスタイリッシュなボディラインは、ヒンジドアを採用したから出来たこと。ナディアを見ているとヒンジドアがデザイン的に有利なことがよくわかる。
そして、室内空間を最もうまく使っていたがガイアだ。2列目にキャプテンシートを備える6人乗りもあり、3列目を使わずに4名乗車で優雅に楽しむこともできたユーティリティカー。子供が少し大きくなってきて、4人で広いシートにしっかりと座るなら、ヒンジドアのガイアが使いやすかった。
ヒンジドアミニバンの兄弟だからこそ、個性の異なる3つのクルマが出来上がったのだろう。細かいユーザーオーダーを実現するには、スライドドアよりもヒンジドアの方が開発上も有利なのかもしれない。
■広くて使いやすいクルマが欲しいがスポーティが譲れない派はこちら
ストリームとガチンコバトルを繰り広げたウィッシュや、ハイブリッドで扱いやすいミニバンを売りにしたプリウスα。どちらもミニバンでありながら、スポーティな仕上がりになっている
両者の良さを引き出しているのは、ヒンジドアであった。軽量で高剛性なヒンジドアは、クルマが気持ちよく加速し、小気味よく曲がっていくために必要な要素を備えている。箱型ミニバンよりも車酔いしにくいのも、ウィッシュやプリウスαの特徴だ。
スポーティというキャラクター付けも、スライドドア一辺倒では難しい。ヒンジドアミニバンだからこそ、生まれた文化とも言える。
走り・燃費・耐久性を考えると、ヒンジドアをあえて選ぶのも悪くないだろう。スライドドアにしっくりこない時には、ヒンジドアのミニバンやSUVを探してみると、結構良いクルマが見つかるかもしれないぞ。
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