技術の成熟や進化、また時代の流行などによって、クルマに搭載される装備は日々変化しています。そのなかには、当たり前の装備となっていくものもありますが、数年後には「あれ、そういえば…」となっている装備も。流行ると思ったけど流行らなかった装備を3つ振り返ってみましょう。
文:吉川賢一/写真:TOYOTA、LEXUS、HONDA
ちょっとチャラかった「流れるウインカー」
一時期はレクサス車やトヨタ車、フォルクスワーゲン車、アウディ車などを中心に盛んに採用されていた、流れるウインカー。2009年にアウディ「A8」が世界で初めて搭載し、以後一気に採用が広がっていきました。目新しさも手伝い、街中で流れるように光るウインカーに、憧れた人は少なくなかったのではないでしょうか。
しかしながら、現在は一部車種を残してその数を減らしており、たとえば、2022年11月に登場したレクサスの「RX」では、先代では搭載されていた流れるウインカー(シーケンシャルターンランプ)は搭載されませんでした。ただ同じトヨタ系でも、2023年6月に登場したトヨタの新型「アルファード」/「ヴェルファイア」では採用されるなど、車種ごとに採用不採用の状況は違っています。
採用数が減っているのは、流れるように光るところが、デコトラのようにみえたことや、軽自動車にまで普及したことで、高級感や先進感がなくなったことが原因でしょう。ただ、アルファードのように個性が強いモデルでは今後も採用されていくと思われ、今後はそのクルマのキャラクターによって、採用不採用が決まっていくものと思われます。
高額すぎて装備できなかった「デジタルサイドミラー」
2018年に登場したレクサスの新型「ES」で初めて実用化された、デジタルサイドミラー(デジタルアウターミラー)。従来のサイドミラーの代わりに左右後方を撮影するカメラを設置し、車内のモニターに映像を映し出すもので、従来のドアミラーよりもコンパクト化できることから、空気抵抗を低減できることのほか、デザイン性も向上、また、広角カメラによって視野範囲が広がり、明るさ補正によって夜間でも視認性も向上するなど、メリットが多い装備として注目されました。レクサスESでの採用後、アウディの「e-tron」や、ホンダ「ホンダe」でも採用されました。
ただ、装備が高額になることやモニターが見にくいこと、目新しいこと以外にユーザー側のメリットが伝わらなかったことなどが理由で、採用は一部にとどまったまま。後方のクルマの接近を警告するブラインドスポットモニターがあれば十分という声もあるほか、そもそもデジタルサイドミラーは必要性がそれほど高くないことから、今後採用が拡大してくる可能性は低いと考えられます。
ほんとにエコだった!?? 「純ガソリン車のアイドリングストップ」
低燃費技術(=CO2排出低減)の方策のひとつとして、2000年ごろから普及し始めた純ガソリン車のアイドリングストップ。しかしながら、ここ4~5年は流れが変わってきており、たとえばトヨタの場合だと、ヤリス、カローラ(スポーツ、ツーリング、セダン、クロス、GR)、RAV4、ハリアー、ランドクルーザー300、ランドクルーザー70、ランドクルーザー250、アルファードなど(いずれもガソリン車)では、アイドリングストップ装置が搭載されていません。
ハイブリッド車に関しては、力強い電気モーターの力のみで発進できるため、アイドリングストップ装置は全車装着されていますが、純ガソリン車のアイドリングストップに関しては、「信号待ちからの発進で出遅れる」「(信号待ちでは)エアコン機能が送風だけになる」「突然エンジンが再始動するので驚かされる」「アイドリングストップからきちんと復帰するのか不安」など、当初から煩わしさや不安を嘆く声が少なくありませんでした。
環境負荷軽減の面でも、アイドリングストップによって燃料消費はわずかながら削減できるものの、アイドリングストップ車用のバッテリーは(アイドリングストップをオンにしていると)寿命が短く、頻繁に交換する必要があることは、わずかな燃料消費を抑えるよりも、環境負荷が大きい可能性も。おそらくこのまま、純ガソリン車の衰退とともに、純ガソリン車のアイドリングストップは消えていくのでしょう。
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比較的最近の装備のなかから取り上げましたが、もう少し時代を遡れば、ホンダ「エディックス」の前列3席シートは、アイディアはよかったものの、流行らなかった装備。また、1990年代に流行した電動開閉式のサンルーフは、昨今は開かないサンルーフに置き換わりつつあります。時代とともに変わっていくクルマの装備。こうして振り返るのも興味深いですが、今後のさらなる進化にも期待したいです。
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