クルマにまつわるさまざまな限界をとことん探る2013年の本誌企画から、タイヤの「限界」についての考察をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2013年8月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
■最初は耐久性・乗り心地との戦い
地味な存在なれど、クルマにとってなくてはならない存在のタイヤ。
なにしろ路面と直接接触しているのはタイヤだけで、最終的にはタイヤの性能でハンドリング性能も乗り心地も、そして最近では燃費も大きく左右されるのだから開発にも力が入ろうというものだ。
タイヤといえば空気の入った黒いゴム、というのが定番だが、ゴム製タイヤが開発されたのはクルマが世に出る50年以上前の1835年のことだった。
この時のタイヤはゴムのカタマリでできていて、空気入りゴムタイヤが発明されたのは1845年、さらに自動車が登場するとタイヤへの要求が高まり、1888年本格的な空気入りゴムタイヤがダンロップタイヤの創始者であるジョン・ボイド・ダンロップにより開発されたのが、現代につながる空気入りゴムタイヤの歴史の始まりだ。
ちなみにこの時期のタイヤは天然ゴム主体の成分で、ベージュ色のような色をしていたという。現在の黒いタイヤは補強材のカーボンブラックの配合が開発された1912年より後のことでありました。
とまあ、初期のタイヤが乗り越えるべき「限界」は耐久性であるとか乗り心地だったことはいうまでもない。
タイヤの耐久性が飛躍的に向上したのは1948年、ミシュランが開発したラジアルタイヤである。
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■転がり抵抗の低減、ウェットグリップとの両立……まだまだタイヤの「限界」はたくさんある!
いまタイヤメーカーが最も注力しているのは転がり抵抗の低減だ。
これは時流の低燃費化と密接な関係があり、タイヤメーカーの開発陣によるとJC08モード燃費の場合、タイヤの転がり抵抗が燃費に与える影響は全体の23%にもなり、空気抵抗の15%よりも大きな影響を及ぼす。
これがより高速の欧州モードになるとタイヤの占める比率は35%にもなり、燃費改善の大きなブレークスルーのひとつはタイヤの低転がり抵抗化にあるといって過言ではない。
タイヤラベリング制度では低転がり抵抗タイヤについては「AAA」を頂点として「AA」、「A」、「B」、「C」と5段階のグレードが定められている。
転がり抵抗係数6.5N/kN以上が「AAA」とされており10.6N/kN以上12.0N/kN以下が「C」ランク。転がり抵抗が「A」ランク以上で、別に示されるウェットグリップ性能が「A~d」の範囲内にあるタイヤが「低燃費タイヤ」と定義される。
タイヤの開発エンジニアにとって背反事項である低転がり抵抗とウェットグリップの両立はもの凄く高い壁。
某タイヤメーカーの低燃費タイヤ開発担当者は「以前のスポーツ系ハイグリップタイヤの開発は、いま考えればラクでした」と本音を吐露するほど。
つまり、スポーツタイヤではグリップを高めることを第一義に開発をすればよく、転がり抵抗やライフ、乗り心地や音については二の次でもよかったからだ。
「転がり抵抗を引き下げるポイントはタイヤの変形を抑え、熱の発生を少なくすることにあります。ただ、それだけを突き進めるとグリップ力が低下、特にウェットグリップが大きく低下するので、低温下でもグリップ力を維持できるゴムの開発が必要となります」と。
現基準ではトップレベルとなる「AAA-A」をマークするタイヤはブリヂストン、横浜ゴム、ダンロップ、東洋ゴム各社から製品化されているが、ブリヂストン以外のメーカーは195/65R15サイズのみに限定するなど、非常に特殊なタイヤという扱い。エコピアEP001Sには205/55R16もある。
「いまの技術……というかコストも含めた技術力という点では限界点です。コストをかければサイズラインアップを拡げられますが、1サイズに絞ることでピンポイントでAAA-Aを実現しているというのが現状」と別のタイヤメーカー開発者。
低転がり抵抗タイヤ技術のひとつのブレークスルーとしてブリヂストンが提案したのが『ラージー&ナローコンセプト』。
155/55R19という幅狭大径タイヤで、320kPという高内圧により175/65R15の一般的なタイヤと比べて30%もの転がり抵抗の低減を実現するという。JC08モード走行だと燃費にして5%低減効果があるとのこと。
また、幅狭とすることで空気抵抗も3.7%低減することができたといい、60km/h走行時には転がり抵抗4.5%減に相当するというから画期的。
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