バイク用外装部品やインナー部品には数多くの樹脂製部品が採用され、適材適所で、PP、PE、PS、ABS、アクリルなどの様々な樹脂が利用されている。そんな樹脂部品修理のパイオニアかつ、今尚、最前線で大活躍している補修ケミカルが「プラリペア」 である。ここでは、プラリペアを使った樹脂部品の修理に注目してみよう。

  文/たぐちかつみ Webikeプラス  

プラリペアは常備しておきたい高性能ケミカル



 デイトナが取り扱うプラリペアには、ホワイト・ブラック・クリアと、3種類のパウダーがある。利用できるプラスチック樹脂の種類は、適しているのが「ABS、AS、アクリル、ポリスチレン、塩化ビニール、ポリカーボネート、ASA、AES」などなどの各樹脂素材。ものによっては利用できる樹脂が「不飽和ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ」などがある。セット販売の商品以外に補充用のリキッドやパウダーの単品販売もある。

     

通常接着が効かないアクリルスクリーンの割れ修理





 フロントカウリングにはスクリーンを持つのがバイク。このスクリーンの締め付け部分に亀裂が走ってしまうことがある。放置したままで走り続けると、亀裂の長さが徐々に伸び、気が付いた時には締め付け固定できない状況へと至ってしまうことも。こんなキレツの修理には、プラリペアのクリアを利用するのが良い。

「開先」を作ってプラリペアで充填接着処理





 亀裂をグイッと押し付けて、毛細管現象を利用してプラリペアリキッドを数滴たらすことで、キレツの中へリキッドがスーッと入り込むことで、樹脂素材同士の突き合わせ部分を溶かし接着することもできる。仮に、亀裂発生初期ならその方法でも高い強度を得られるが、ここまでキレツが進んでいるので、ここでは、リューターに砥石バーを取り付け、亀裂双方を削ってV字型の谷=「開先」を作って接着面積を広げ、プラリペアによる充填接着を行うことにした。

 キレツ部分に開先加工を行ったら、パーツクリーナーで患部を脱脂洗浄する。そして、ニードル法と呼ばれるやり方で開先部分にプラリペアを盛り付けていこう。付属の容器にリキッドを入れて針をセットし、針から出るリキッドをパウダーに一滴垂らす。リキッドに寄せられたパウダー玉を針の先で引っ掛けて持ち上げ、患部に充填していく作業方法、それがニードル法だ。

樹脂部品のネジ穴あがり修理にも効果的





 樹脂部品にネジを締め付けて部品固定する場面は多々あるが、この部品の場合は、ハーネスのサポート金具を締め付けるネジ穴がナメかけてしまっていた。こんなネジ部分の再生にも、プラリペアは素晴らしい仕事をしてくれる。

ネジ側を脱脂洗浄して剥離剤=シリコンスプレーを応用







 ナメてしまったカバー側のネジ穴とビスのネジ部分をパーツクリーナーで脱脂洗浄したら、乾燥後のネジ山にシリコンスプレーを薄く吹き付け、さらにネジ山を覆うようにニードル法でプラリペアを盛り付けていく。カバー側の穴の深さにもよるが、穴の入口付近にもニードル法でプラリペアを盛り付けておくと接着強度が高まるはずだ。

患部にネジを押し込んでプラリペアの乾燥を待とう





 ニードル法で塗布したプラリペアが落ち着いたら(パウダーに染み込み粘りが出たら)、カバー側の穴にネジ山を押し着けてしばらく待とう。プラリペアがカバー樹脂と反応して硬化したら、ドライバーを使ってネジを緩めてみよう。シリコンスプレー膜が離型剤の役割を果たして、スムーズに固定ネジは外れるはずだ。カバー側の穴を覗き込むと、そこには新しいネジ山が完成している。完全硬化を待てば、しっかり締め付けることができる。

取材協力/デイトナ www.daytona.co.jp

POINT  

 

  • ポイント1・ちょっとした修理や気が付いた時に効果的に利用できるプラリペアは、常備しておきたいケミカル
  • ポイント2・接着時には幹部周辺を必ず脱脂洗浄し、接着能力を高めるように心掛けよう
  • ポイント3・特に、ネジ穴あがりの修理には効果的。完全にナメてしまう前の予防補修も効果的だ

 アクリル製フロントカウルスクリーンの締め付け部分には、経年劣化や衝撃、時には強く締め付け過ぎによってキレツが発生してしまう。また、樹脂カバーへボルトを締め付ける部分などは、ネジ部がナメてしまい、締め付けトルクを確保できなくなってしまうこともある。そんな不都合がある樹脂部品の修理再生に素晴らしい仕事をしてくれるのが、プラリペアである。接着修理に限らず、走行中の転倒や立ちゴケが原因で、樹脂製カウルが割れてしまったり、部分的に欠落紛失してしまうなどのトラブルが発生した時でも、修理用ケミカルとして心強い味方となってくれるのがプラリペアだ。

 ここでは、比較的簡単な樹脂部品の修理を行ったが、欠落した樹脂部品や破片が手元に無い時には、同じくデイトナから発売されている「型取くん」を利用することで、欠落部分を修理再生できることもある。例えば、壊れていない部品を借りて来て、まずは型取り作業から開始しよう。型取くんは、熱で軟化する樹脂で、冷えると形状維持する特性を持っている。沸騰したお湯に型取くんを沈め、柔らかくなったら箸で取り出し、必要としている形状部分に押し当て、冷えるのを待つことで形状再現できる。その型取くんで再現した型にプラリペアを充填することで、欠落紛失した部分を複製できるのだ。

 より具体的な例としては、フレームに固定されたゴムグロメットに「角のような突起」を差し込み固定するタイプのサイドカバーは多いが、経年劣化や走行振動によって、突起状の角が得れてしまうケースが多々ある。そんな時に型取くんとプラリペアを上手に利用することで、サイドカバーの固定部突起や折れてしまったステーなどを再生修理可能することができる。アイデア次第で、様々な樹脂部品修理に応用できるので、不具合発生時には、DIY修理再生にチャレンジしてみよう。

 

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