写真:ボッシュ/星野耕作 文:ケニー佐川 Webikeプラス
ライダーを安全にサポートする6つの新機能を搭載
ドイツのBOSCH(ボッシュ)が展開するARAS(アドバンスド・ライダー・アシスタンス・システム)の最新版がメディア向けに公開された。ARASとは二輪車向け安全支援技術のことで、基本的にはミリ波レーダーによってセンシングした周辺情報を車載のコンピュータが瞬時に解析して安全を確保するシステムである。
2019年に発表された第1世代のシステムは前走車を追従走行できるACC(アダプティブ クルーズ コントロール)や、後方の死角や大きな速度差がある危険車両を検知するBSD(ブラインド スポット ディテクション)、前走車に追突する危険を知らせるFCW(フォワード コリジョン ワーニング)などで、すでに市販モデルにも実装されている。
最新となる第2世代のARASとして今回新たに6つの新機能が加わった。以下に記したこれらの新機能は小型軽量化された前後レーダーセンサーとECUのロジックの進化によりもたらされたものだ。ちなみに今回のボッシュ試験車による試乗会は栃木県にあるボッシュのテストコースで行われた。それぞれの機能と試乗した印象をコメントしているので参考にしてもらいたい。
疲れ知らずの優秀な相棒がもうひとり同乗
1.アダプティブ クルーズ コントロール – ストップ&ゴー(ACC S&G)
これは2020年から実装されたACC(アダプティブ クルーズ コントロール)の進化版で、ACCが前方車両との安全距離を保ちつつ走行するシステムだったのに対し、新たなACC S&G機能では必要に応じて停止も可能。前走車が動き出したらボタンを押すかスロットルを短く操作するだけで走行再開し前走車を追尾する機能だ。
さっそく試乗してみたが、KTMがベースの試験車両もAT仕様になっていて、クラッチ操作の必要がないので停止・発進に気を遣うことがほとんどない。また、従来型のACCでは30km/h以下では自分でブレーキをかけて停止する必要があったが、新システムでは自動的にブレーキをかけて上手いこと停止してくれる。ブレーキのかけ具合やそのタイミングもスムーズで自然なもので、自分の他にもう一人優秀な助手が同乗しているような妙な感覚だった。
4輪の世界ではだいぶ前から同様のシステムが導入されていて、それを経験したことがあれば「ああ、これね」とすぐに仕組みを理解してその感覚にも慣れるはずだ。4輪では純粋なスポーツカーまでもが、いつの間にかMTからATへと移り変わっていった。そういった時代の流れを知っていれば、2輪のスポーツモデルでも同様のことが起こりつつあると考えても不思議はないはず。自分としては「今日がその日ではない」と突っ張りたい気持ちもあるが、たとえばツーリング帰りの渋滞路で疲れ果て誤操作から事故ることを考えたら、抗えない魅力を持っている。
千鳥走行でも自動追尾してくれる優れもの
2.グループ ライド アシスト(GRA)
ツーリングでは千鳥走行といって、同じ車線内を2列で交互にずれて走るフォーメーションが一般的だ。従来のACCでは基本的に前走車1台に対して追尾する機能だったため、千鳥走行では自分の目の前の車両(つまり2つ先の車両)に付いていってしまうことがあった。GRAでは千鳥走行中であることを検知し、車間距離と速度を自動調整してキープしてくれる。試乗では2台のデモ車が前を走り千鳥走行を再現してくれたが、前走車が互いの位置を入れ替えるなどちょっと意地悪な走りをしても、GRAは惑わされることなく適宜追尾してくれた。
前のクルマにだらだら付いていきたいときに楽
3.ライディング ディスタンス アシスト(RDA)
これは前走車との適切な車間距離をキープしつつ追突を防ぐ機能。ACCが予め速度を設定するのに対しRDAは通常どおりのスロットル操作で制御する。前走車との距離をライダーが設定すればシステムは必要に応じて自動的に加速を抑えたり、さらにブレーキもかけてくれる。もちろんライダーの意志で、スロットルを大きく捻ればこの機能は無効になり、通常どおり加速することも可能。ツーリングの帰りなど疲れているときにクルマの後ろでだらだら運転せざるを得ない場合などに有効と見た。加速によるオーバートルクでのスピンを抑えるトラコンの逆の発想と言えるかもしれない。
パニック時に思い切りブレーキを握れない人向け
4.エマージェンシー ブレーキ アシスト(EBA)
緊急ブレーキが必要なときに活躍するのがコレ。システムが衝突の危険を検知してもライダーが十分にブレーキをかけていないときに作動し、ブレーキ圧を積極的に上げて可能な限り素早く車両速度を落とす機能だ。
これは緊張した。遥か先で停止しているクルマ(から突き出た安全な目標物)に向かって60/km程度の速度で接近。システムが衝突を感知しメーターに警告後、リアブレーキが「トン、トン」と2度パルスを打つ(軽いABSの感じ)のを合図にブレーキをかけると、瞬時にブレーキ圧を高めてフルブレーキングに使い減速をしてくれる。
追突される危険を未然に察知し知らせる
5.リア ディスタンス ワーニング(RDW)
RDWは後方の状況をモニターし、後続車が接近し過ぎたときにディスプレイに警告を表示してライダーに伝える機能。これにaよりライダーは追突を回避したり、被害を最小限にするための行動を取ることができる。
こちらは第1世代からあったBSD(ブラインド スポット ディテクション)の派生版といった印象。高速道路で死角からもの凄い勢いでスーパーカーが追い越してきたり、知らぬ間に厳ついクルマが後ろにぴたりと付いてオラオラしている場合に有効と感じた。
渋滞末尾で突っ込まれないために不可欠
6.リア コリジョン ワーニング(RCW)
RCWは後方からの衝突が差し迫っているときにハザードランプを点灯させて後続車に警告を発する機能。これはボッシュのスタッフによる実演デモで見学したが、夜の暗闇の中、急接近する後続車に対する強力なフラッシャーの光は、疲れや視界不良で感覚が鈍くなっているドライバーを覚醒させ、かなりの抑止効果を発揮すると思った。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/parts-gears/414311/
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