街中を走るバスの中に「BRT」と書かれているものがある。普通のバスと差別化させる必要が何かあるのか……国のガイドラインを参考にすると、こんな違いがあるようだ。
文・写真:中山修一
(BRTと連節バスにまつわる写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■バス車両を使った次世代のバスシステム
BRTは「Bus Rapid Transit」を略したもので、「バス高速輸送システム」とも言う。街中で見かけるBRTと称するバスは、普通の路線バスに混じって同じように走っているため、どうしてわざわざBRTという名前をつけて差別化を図っているのか、疑問を感じるかもしれない。
路線バスとBRTは何が違うのか……各バス事業者が「これはBRTだから」と勝手に名づけて運行している、という性質はあまりないようで、国土交通省がガイドラインを設けているほどの、実はかなりオフィシャルな乗り物なのだ。
国土交通省のガイドラインを参考にすると、まず、「速達性」、「定時性」、「輸送力」3つの条件を備え、さらに別の交通機関への乗り替えなど「利便性」を工夫していることが、BRTの定義になっている。
■BRTにも種類がある
一口にBRTと言っても、趣味の世界では定番の種類分けができる。まず法律ベースで軌道法、道路運送法、道路法いずれかに基づいて各BRTの路線を分類する、という方法。
ただし、例えばA路線とB路線で運行形態がほとんど同じでも、A路線は道路運送法、B路線は道路法をそれぞれを適用しているケースも見られるため、法律ベースにすると線引きがちょっと難しい。
あくまで趣味レベルでなら、(1)専用道路を経由するBRTと、(2)一般道のみを走るBRT、の2種類に分けるのが、最も分かり易いパターンだ。
■ちょっと速いのがウリです
国のガイドラインで条件の一つにある「速達性」は、BRTが持つ最大の特徴と言えるもので、どのBRTも一般路線バスより、ちょっと速いのがセールスポイントだ。
どうやって速達性を確保するのか、前述の(1)専用道路を経由するBRTでは、一部区間でバスしか通れないように整備された道を走るため、定時性アップと高速での移動を実現している。
一方、(2)一般道のみを走るBRTでは、既存の道路上にバス優先/専用レーンや、バス優先の信号システムを設置したり、あるいは途中の停車ポイントを通常より減らすなどして平均速度を上げることで、定時性+速達性の確保に繋げている。
■こんなに増えてました
日本でBRTが急速に伸び始めたのも2010年代に入ってからだ。国土交通省がBRTとしてリストアップしている2022年4月時点のデータと、以降に開業したものを合わせると、2024年10月現在のところ全国に31路線のBRTが展開している。
内訳は専用道路経由が8路線、一般道走行が23路線。これら31路線の中には、当のバス事業者では特に「BRT」とは言っていないものの、運行形態が国の条件を満たしているということで、実質的にBRTと言える路線も含まれる。地域で見ると……
岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、福岡県、大分県
……の18都府県でBRTが運行中だ。それなりに数が多いため、ここでは個々の路線名は割愛した。
■あのクルマが目立つよね?
ところで、BRTを観察していると、車体を2つ繋げた連節バスが使われている割合が物凄く高い気がしてくる。本当に連節バスを頻繁に見かけるため、BRT走るところに連節バスあり、と言わんばかりの目立ちようだ。
もちろんノーマルな一般路線バス車両を使ったBRTもあるのだが、もしかして、どこのBRTにも最低1台は連節バスが登録されている!? ふと疑問に思って軽くリサーチしてみることにした。
その結果、31路線のうち連節バスを使用しているのは21路線。21/31路線で68%の割合だった。ここで興味深かったのが、専用道路を経由するBRTで連節バスを使用している路線は皆無という点。
反面、一般道を走るBRTでの連節バス率は、21/23路線の91%と圧倒的な数値を叩き出した。それほど高いなら良く見かけるのも頷ける。
BRTの条件にある「輸送力」を求める際、一般的なバス車両を複数台用意して高頻度で走らせるか、定員の大きい車両を入れて一度に多くの利用者を運ぶかの2通りが選べる。
現在のところ、利用者がより多くなる街中の一般道を走るBRTでは、後者が好まれる傾向が非常に強いようで、その場合は通常のバスの約1.5倍・定員120〜130名程度の連節バスが適任というわけだ。
BRTの連節バス率は100%ではなかったが、連節バスがBRTという次世代のバスシステムを象徴する牽引役を担っているのは確かだ。
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