セルフスターターしか装備されていない現代のバイクにとって、バッテリーの電圧不足は致命的であり、常に正常値を保っておく必要がある。集合住宅などで電源が確保できないというライダーにとって救世主とも言えるのが、デイトナから発売されている「ディスプレイ付バッテリー充電器ポータブル」だ。
文/後藤秀之 Webikeプラス集合住宅に住むライダーにとっての救世主
マンションやアパートなどの集合住宅に住むライダーにとって、バイクのバッテリー充電は少々面倒な作業と言える。バイクが置いてある駐輪場に使える電源があることはほぼなく、バッテリーを車体から取り外して部屋の中で充電しているというライダーも多いだろう。
筆者もそんな集合住宅に住むライダーのひとりであり、以前乗っていたハーレーは冬場は2週間放置するとエンジンがかかりにくくなっていた。本当はトリクル充電を行ないたいところだが、外で放置するわけにもいかないし、そもそも電源が取れないのでは意味がない。
防犯システムが組み込まれるなどして、イグニッションオフの状態でもバッテリーを消費するバイクも増えているし、端子の位置の関係などでバッテリーが取り外しにくい車種も結構多い。また、最近の電子装備満載のバイクにとってバッテリーは生命線とも言え、素人がバッテリーを脱着することでバイクの不調を招く可能性も無いとは言えない。
そんな集合住宅に住むライダーの悩みを解消してくれるのが、今回紹介するデイトナの「ディスプレイ付バッテリー充電器ポータブル」だ。
この「ディスプレイ付バッテリー充電器ポータブル」は、本体のサイズが幅180×長さ110mmと小さめのタブレット端末程度の大きさ。厚みは59mmあるが、重量は約500gと持ち運びに困ることはない。また、ベント型、VRLA、シールド、ジェルの各タイプのバッテリーに対応しているので、これ1台でほとんどのバイクに対応できる。
この充電器の最も評価すべきポイントは、家庭用の100V電源以外にモバイルバッテリーからの給電によって充電を行なうことができるということだ。モバイルバッテリーが使えるということは、電源の取れない野外でもバイクにバッテリーを搭載したまま充電を行うことができるということだ。
使い方は一般的なバッテリー充電器と同様で、接続用に車両接続コードと、クランプ接続コードが付属している。クランプをバッテリーの端子に接続して充電することができるのはもちろん、車両接続コードをバッテリーに取り付けておけば、カプラーを接続するだけでバッテリーの充電を行なうことができるようになる。
バッテリーのコンディションを確認しながら最適な状態へ
充電はバッテリーの状態を最適化するために、5ステップで行なうようにプログラムされている。ステップ1ではバッテリーの状態が劣化している場合にサルフェーション除去を行ない、ステップ2では電圧を14.8Vまで一定の電流で75%まで充電を行なう。75%まで充電されるとステップ3に移行して、バッテリーの負荷を軽減するためにゆっくり満充電まで充電を行なう。満充電されると充電を30分ストップさせてバッテリーを落ち着かせ、その後に良否判定を行なうステップ4となる。そして、さらにステップ5では、充電が完了したバッテリーを監視し、自己放電により電圧が落ちた場合に自動で充電を行なうという設定になっている。充電時間に関しては、ステップ1から2までは最大36時間、ステップ3から5までが最大4.5時間となっている。また、リセットボタンを押すことでステップ1から再スタートさせることができ、充電を伴わない「テスターモード」も搭載されている。
モバイルバッテリーでの充電は本当に便利だ!
さて、実際に使ってみる。まず、一般的なバッテリーチャージャーと同様にDC電源に繋いで、単体のバッテリーを充電してみることにした。これは当然だが、まったく問題なく充電をすることが可能で、バッテリーチャージャーのディスプレイにはバッテリーの電圧と充電電圧が交互に表示されるようになっている。この「ディスプレイ付バッテリー充電器ポータブル」は電源に繋がずにバッテリーの端子と接続するとテスターモードになり、バッテリーの状態をディスプレイに表示することになっている。だが放置していた古いバッテリーだったため、端子と接続してもテスターモードが作動せず、液晶画面が光るだけであった。説明書によると、9V以下ではディスプレイが表示されず、5V以下ではLED照明も点灯しないとのことだ。
通常の充電器としてきちんと使用できることが確認できたので、いよいよモバイルバッテリーでの充電をテストしていく。このバッテリーチャージャーを選ぶ方の多くは、モバイルバッテリーでの充電が可能というのがいちばんの理由になるはずだ。マンションである我が家のバイクは野外保管するしか無く、当然自由に使用できる電源はない。
まずバッテリーの端子にアクセスし、電源を繋がない状態でバッテリーの端子に充電器の端子を接続してみる。付属のクランプ接続コードを使用してみたのだが、クリップの口があまり大きく開かないのでフォルツァの場合はバッテリーの端子を固定しているボルトの頭にクランプすることしかできなかった。このまま放置するのは危険なので、本来は車両接続コードを使用するべきだろう。ただ、今回は製品チェックということで、とりあえずクランプ接続コードのままチェックを進めることにした。バッテリーの端子にコードを繋ぐと、ディスプレイにはバッテリーの電圧が表示され。モードは「MEASUREMENT」と表示され、テスターモードが正常に作動していることが確認できた。
充電のためにモバイルバッテリーを繋いでいく。この「ディスプレイ付バッテリー充電器ポータブル」は本体右側にあるカバーを開けると、モバイルバッテリーを接続するためのUSB-Cタイプのポートにアクセスできる。いよいよモバイルバッテリーを繋ぐのだが、使用するモバイルバッテリーは出力が「20V 1.5A」という、モバイルバッテリーとしてはかなりハイパワーな物が必要になる。USB-Cポートとモバイルバッテリーをケーブルで接続すると、モードが自動的に切り替わって充電が開始された。充電を開始するとDC電源を使った時と同様にバッテリーの電圧と充電電圧が交互にディスプレイに表示される。
ステップ2での充電電圧はしっかり14V以上の数値が表示されており、しばらく充電していると75%を超えたためステップ3へと移行して12V台に充電電圧が下がった。試しに手持ちの「5V 2.1A(MAX)」というスペックのモバイルバッテリーを接続してみたのだが、テスターモードのまま充電モードには移行しなかった。
今回使用したフォルツァであれば、車両接続コードを端子に接続して、充電器本体とモバイルバッテリーをラゲッジスペースに入れておけば問題なく野外でのコードレスバッテリーチャージが可能である。ラゲッジスペースが無い車両の場合は盗難などの対策をする必要があるが、今までいちいちバッテリーを外して室内で充電を行なっていた集合住宅住みのライダーにとっては非常にありがたいアイテムである。
ディスプレイ付バッテリー充電器ポータブル商品仕様
・本体サイズ:幅180×長さ110×高さ59mm
・重量:500g
・対応バッテリー容量:2.3Ah〜28Ah
・対応バッテリー種類:ベント型バッテリー・VRLAバッテリー・シールドバッテリー・ジェルバッテリー
・入力:AC100V 50/60Hz・USB PD 20V 1.5A
・出力:DC12V 1.25A
・価格:1万6280円(税込価格)
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