世界初の量産ハイブリッド車であるプリウス。しかし、ついつい目が行きがちなハイブリッド機構だけがプリウスで凄いポイントではない。クルマが地上に表れて約100年、プリウスが見据えた未来は、プリウスの中にしっかりとしたカタチになって表現されていたのだ。
文:佐々木 亘/写真:トヨタ
■人ありきで設計された魅惑のパッケージング
初代プリウスというとハイブリッド機構に目が行くが、小さなボディに様々なアイディアが詰め込まれ、必要十分な快適性を持っていることにも注目してほしい。
初代プリウスのボディサイズは、全長4,310mm×全幅1,695mm×全高1,490mmとかなり小さい。爆発的なヒットをした3代目は全長4,460mm×全幅1,745mm×全高1,490mmで、現行の5代目は全長4,600mm×全幅1,780mm×全高1,420mmだから、初代がいかにコンパクトな設計だったかが分かるだろう。
それでも、初代プリウスが特別狭いクルマだとは思わなかった。それは、プリウスが人の居場所を第一に考えた設計を貫いたからこそ生まれた価値。開発の第一歩目は、ハイブリッドバッテリーの位置でもなく、モーターの配置でもない。乗員のヒップポイントの高さからスタートしたというから驚きだ。
この設計により、プリウスのシートはアイポイントが高くなっていて、コンパクトセダンながら、どの席でも見晴らしが良い。また、コンパクトな全長をショートオーバーハングのボディが、2,550mmというロングホイールベースながら、最小回転半径4.7mという抜群の取り回し性能も実現している。
プリウスを見ていると、一体どこにハイブリッド機構を置いているのだろうかという疑問が湧いてくるだろう。プリウスへの驚きは、量産ハイブリッドという技術的な部分はもちろんだが、技術のために人を犠牲にしない、人とクルマの理想的な関係性に対しても十分に感じることができるのだ。
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■ここまでやる必要ある? 普段使いにも我慢はさせないHEVパイオニアの意地
1997年の発表から、小規模ながらも改良を重ね、着々と完成形にたどり着いていくプリウス。特に最終改良となった2002年8月モデルでは、制動時のエネルギー回収量を増加させ、10・15モード燃費を31km/Lへ向上させている。
加えて最終型の初代プリウスはユーティリティも抜群だ。ドアミラーはレインクリアリング機能を備え、フロンドアガラスは撥水機能付き。フロントのサイドウォークスルーやトランクスルー機能の付いた6:4分割可倒式リアシートも付いている徹底ぶりだ。
ラゲッジスペースはハイブリッドバッテリーを積み込みながらも、ゴルフバッグ4個を収納可能な392L(VDA法)の容量を確保している。室内空調は花粉除去もできるオートエアコンになっていて、クルーズコントロールまで付いてくるのだから、申し分は無い。
これだけついて車両本体価格は228万円というから、驚くしかないだろう。廉価グレードでもクルーズコントロールがオプション設定になって218万円。こうした装備や機能を考えると、価格競争という意味でもプリウスは最強だったのかもしれない。
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■走りの装備が満載! ユーロパッケージって知ってる?
初代プリウスには、スポーティなプリウスを提供する「ユーロパッケージ」が設定されていた。
リヤスポイラー・リヤスパッツが採用され、空力性能がアップ。欧州向けサスペンションとリアスタビライザー、175/65R17サイズの新設定タイヤによって、運動性能を高めた。リアブレーキがディスクに代わるというのも、見た目だけではない走りの本質に目を向けたパッケージであることが分かる。
常に10年以上先を見据え、人々に驚きと感動を与え続けていた初代プリウス。驚きに満ちたクルマの魅力は、5世代にわたって今も引き継がれているのだ。
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