スプリンタートレノと言ったら、多くのクルマファンは4代目となるAE86型(ハチロク)を思い浮かべるだろう。豆腐屋のパンダトレノは、あまりにもセンセーショナルだった。しかしライトウェイトスポーツであれば、最終型となった7代目のAE111型(ピンゾロ)も負けてはいない。今回、トレノはトレノでも、ハチロクではなくピンゾロに注目していく。
文/佐々木 亘 写真/トヨタ ほか
■軽量でFFは楽しいしかない
1995年に登場した7代目トレノ。最上級のBZ系グレードには、4A-GE型の1.6Lツインカム20エンジンが載る。最高出力は165PS、最大トルクは16.5kgmだ。トランスミッションは6速MTか電子制御式4速オートマチック(スポーツ)を選ぶことができ、駆動方式はFFである。
ボディサイズは、全長4,305mm×全幅1,695mm×全高1,305mmでホイールベースは2,465mmだ。先代から最大70kgの軽量化が施された車両重量は1,080kgである。最廉価のFZシリーズになると車両重量は990kgと1トン切りしていた。
エンジンスペックや車両重量は、ほとんど現行型のスイフトスポーツである。トレノがどれほど本気でライトウェイトスポーツしているかが、お分かりいただけたことだろう。
■スポーツ走行の醍醐味は意のままに操ること
圧倒的なパワーも、鍛え上げられた足回りも、ドライバーが意のままにコントロールできなければ、無意味に等しい。そう言わしめたスプリンタートレノは、ライトウェイトスポーツの快感をドライバーに鋭く問いかける。
エンジンとドライバーを繋ぐ6速MTは、1速から5速までをクロスレシオ化し、6速はハイギア化している。これにより低中速でのギアのつながりをスムーズにし、ワイドレンジならではの伸びやかな走りも楽しめる。このシフトを一度入れたら最後、心地よいシフトフィールから離れることができないだろう。
路面とボディを繋ぐ足回りには、スーパーストラットサスペンションを装備した。車両旋回時などにタイヤと路面のなす角度を、的確にコントロールするキャンバーコントロールアームの働きで、安定したコントロール性能を実現する。
また、トルク感応型のヘリカルLSDや、4輪ディスクブレーキもスポーツ走行には欠かせない。BZ-Rグレードには、15インチホイール用のツインポッドキャリパーを装着していて、制動力にも信頼がおける。
■音や触感でもスポーツする
スプリンタートレノが目指したライトウェイトスポーツは伊達じゃない。数字に表れない性能にもしっかりとこだわっている。
コンパクトなマフラー内にバルブユニットを搭載した2ウェイエキゾーストコントロールシステムは、常用回転域ではバルブが閉じ消音性能を発揮するが、ひとたび高回転域になるとバルブが開いて十分なエンジン出力を確保するシステムだ。心地よい排気音にも注目したい。
さらにホールド感たっぷりのスポーツシートは、ファブリックの触り心地や黒と赤の色使いも抜群だ。メーカーオプションでレカロシートも選ぶことができ、ドライビングマインドを大きく刺激する。
ステアリングには本革巻きを用意し、シフトノブもMTは本革仕様となる。ステアリング操作時に触れることの多い3時・9時の場所にはパンチング加工された本革が使用されており、感触にもこだわった。
FFクーペではトヨタの最高傑作とも言うべき7代目トレノ。ハチロクをカスタムしながら楽しむのもいいが、ピンゾロの軽快感は何ものにも代えがたい。名車の揃うトレノは、ハチロクだけでなく、ピンゾロの魅力も味わって欲しいものだ。
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