時に特殊な変動をする中古車相場を観察していると、様々な裏事情が見えてきて実に面白い。「映画に出ていた」「誰々が乗っていた」なんてパターンは良く見るが、中には「え?」と思わせる理由の場合も…。今回はそんなレアケースをお届けしたい。

文:古賀貴司(自動車王国) 写真:BMW

■現代でも通用するエレガントな4座オープン

E46のコードネームで呼ばれることが多い4代目3シリーズ。マイナーチェンジ前後でデザインが異なり、特にヘッドライトの印象が大きく変わる。写真は後期型。

 「E46」のコードネームで知られるBMW 3シリーズは、ドイツの自動車メーカーBMWが製造したコンパクト・エグゼクティブカーの4世代目である。

 1998年から2006年まで生産され、セダン、クーペ、カブリオレ(コンバーチブル)、ツーリング(ステーションワゴン)、コンパクト(ハッチバック)と幅広いボディタイプが導入された。

 この頃、BMWのチーフデザイナーはクリス・バングルだった。

 クリス・バングルと言えば、BMW 7シリーズ(E65)の賛否両論だった斬新なデザインが有名だが、実は3シリーズ・セダンも彼の作品である。

 なお、クーペ、カブリオレ、ステーションワゴン、ハッチバックはアメリカにあるBMW傘下の「デザインワークスUSA」に在籍していたエリック・ゴプレンが手掛けたものだ。

 排気量1.6Lから2.0Lまでの直4気筒エンジン、排気量2.0Lから3.2Lまでの直6エンジン、そして10台のみ生産されたM3 GTRには4.0L V8エンジンまで、と幅広いパワーユニットが搭載された。

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■E46の中でもカブリオレだけがかなり異質

現在は絶滅寸前だが、当時は多くのメーカーがラインナップしてた4座オープン。E46型はソフトトップの幌を採用していた。

 そんなE46の中古車相場、最近ちょっと面白いことになっている。というのも、カブリオレの相場だけが顕著に高いのだ。

 日本でカブリオレは2000~2006年に発売された。

 フロントからAピラーまでのデザインはクーペと共通だが、ウエストラインおよび後部はカブリオレ専用となっていた。

 3層構造のソフトトップは電動式で、開閉に要する時間は30秒。乗車定員は4名で、後席にも大人が無理なく乗れる十分なスペースが用意された。

 そしてBMWはこのカブリオレボディでも剛性の確保を怠ることなく、リアサイドを中心に強化メンバー材を張り巡らせ、フルオープンでもミシリとも言わない強靭なボディに仕上げた。

 それでいて車重は1680kgに抑えてある。もっとも今の基準でいえば、加速感はやや緩慢かもしれない。とはいえ、当時はひとクラス上の乗り心地を実現しており、今でもその乗り味は健在だ。

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■高騰の理由はコアなクルマファンで構成される会の存在!?

純粋な走行性能は現代のクルマに比べれば見劣りするが、デザインは90年代後半独特の味がある。惹かれる人が多いのも頷ける。

 一般的に中古車は経過年数に比例して中古車相場が下落していくものだが、なかにはこのように旧型モデルが後に”評価”されることもある。

 特に顕著なのはポルシェ911のように脈々と続いた空冷エンジンが水冷エンジンに切り替えられる、というエポックメイキングな変更が加えられた際であろう。

 現在、E46のコンバーチブルの中古車相場は、次世代3シリーズにあたるE93のコンバーチブルの中古車相場とほぼ変わらない。

 たしかにE46のコンバーチブルは最後の自然吸気6気筒エンジンを搭載してはいたが、セダンやクーペはE90型まで搭載していたので、それが理由とは考えにくい。

思い当たるフシは「SHIROCAB(シロカブ)の会」の存在である。

 E46の「46(シロ)」と「カブリオレ」の一部を組み合わせ、E46のカブリオレを”シロカブ”と呼んでいるエンスーたちだ。

 ナンバーは入会順に『46-〇〇』(好きな番号は選べない)となっている。特注のディフレクターを装着し、Mスポーツグリルを装着し、SHIROCABグッズを身に纏っている集団である。

 詳しいメンバー数は把握できていないが、相当数がいるのは間違いなく、日本に現存するE46カブリオレの取引を活発化させている模様だ。

 なかには一人で複数台所有しているメンバーもいる、と耳にする。

 中古車販売店がシロカブの会の存在に気づいているのか不明だが、売れるからこそ”それなり”の価格を提示しているのだろう。需要と供給が中古車相場を支配する、かなり顕著な例でもある。

意外とこちらが把握していない、異常な相場を形成している車種は他にもあるのかもしれない…。

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