昔の本格クロカンは、リアにタイヤを装着する関係でハッチが横開きと決まっていた。しかし最近では、本格クロカンのランクル250も300も跳ね上げ式になってしまった。今後「クロカン=横開き」ハッチの方程式は、通用しなくなってしまうのだろうか。

文:佐々木 亘/写真:トヨタ ほか

■安全を背負うためにいつだって横開きだったじゃない!

跳ね上げ式のリアゲートとなったトヨタ ランドクルーザー250。スペアタイヤもリアゲートからボディ下部へと移動した

 本格クロカンの証とも言える、バックドアのスペアタイヤ。パジェロもジムニーも、もちろんランクル70だってしっかり背負っている。重いタイヤを背負っている代償として、これらのクルマは全てバックドアが横開きなのだ。

 ランクルに絞ってみれば、100系・200系・300系のように、本格クロカン性能の上に高級車の素性を加えたモデルでは、背面スペアタイヤは無くなり、バックドアが跳ね上げ式になっている。対してヘビーデューティーの70系は現行型でも背面タイヤを装着し、バックドアは横開きだ。

 立ち位置の難しかったのがプラドだったはず。しかし、初代の観音開きからプラド名の最終型まで、途中で背面タイヤが無くなろうとも、横開きを維持していた。縦開きのガラスハッチを搭載し、横開きハッチの不便さを解消しながらも、横開きにこだわっていた姿が印象的である。

 プラドが横開きハッチを続けた理由には、海外専売の3ドアショートボディの存在が大きく影響している。海外で人気の3ドアでは、150系プラドでも背面スペアタイヤが装着されていた。

 したがって、150系プラドでは、国内仕様5ドアのスペアタイヤが床下格納となっても、クロカンの証だと言わんばかりに、横開きハッチを続けていたのだ。

 しかし、プラドの後継車種とも言えるランドクルーザー250では、伝統的な横開きハッチをやめ、300系と同じく跳ね上げハッチに変化している。プラドの名残とも言える、跳ね上げガラスハッチを残しているから、なおのこと横開きからの大きな変化には疑問が残ってしまう。

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■どちらの方式も一長一短だがシティユースなら跳ね上げが使いやすい

トヨタ ランドクルーザープラドのリアゲートは横開き式だった。開閉に大きな力を必要としない反面、跳ね上げ式よりも広いスペースを必要とした

 背の高いSUVでは、ハッチが上下に開閉すると困るという人も一定数いた。特に小柄で非力な人の中には跳ね上げ式よりも、他のドアと同じように開閉できる横開きハッチの方が使いやすいという声も多い。

 ただし横開きのハッチを全開にするには、車両後方に大きなスペースが必要だ。自宅でも出先でも、駐車場はそれほど大きく取られていない日本では、跳ね上げ式の方が開けやすく使いやすい側面が多いのも頷ける。

 故に、多くのクロスオーバーSUVモデルでは、ハッチを縦開きにしているのだ。最近では電動開閉のバックドアを備える車種も多く、小柄・非力でも跳ね上げ式ハッチを敬遠する層は減ってきている。

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■パジェロが文化の継承か終了かを決めそうな予感

一貫してリアゲートにスペアタイヤを背負い続けるトヨタ ランドクルーザー70。飾り気のないヘビーデューティな70が唯一主張するおしゃれポイントでもある

 ランクル250の開発コンセプトは「ランクルを作り直す精神」であった。高級化が進むライトデューティーモデルでは、走破性・走行性能を残したままで、いかに実用的で生活を支えるクルマになるかが焦点であったはず。

 そこで、より実用性の高い、跳ね上げ式のバックドアを採用したのだろうか。同時に、スペアタイヤを背負う役目は、ヘビーデューティーの70に任せたともとれる。個人的には中庸を取って、ジープ・ラングラーのような上下分割式の縦横両方の開き方をもつランクル250というのも、面白かったとは思うのだが。

 ランドクルーザー200系でも300系でも、背面タイヤは廃止した。しかし、陸の王者であり、砂漠や非舗装地帯で「最も安全に行き来できるクルマ」という地位は譲っていない。

 背面タイヤが安全性の象徴にも見えたが、ランクルの例を見ると、それも時代遅れの発想のようにも思える。本格クロカンが、ランクル250のように横開きハッチをやめ、跳ね上げハッチだらけになる日も近いかもしれない。

 パジェロ復活の噂もあるが、新型パジェロが背面にタイヤを背負うのか、それとも外して跳ね上げハッチにするのだろうか。パジェロのデザインが、背面タイヤが後世に残るかどうかの、大きなターニングポイントとなりそうだ。

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