昭和~平成の時代には、魅力的で今見ても「カッコいい!」と思えるクルマが多く登場した。当時のクルマ好きたちは、そんなクルマに羨望の眼差しを向けつつ、横文字が踊るカッコいい用語にも注目していたのだった。

文/山口卓也、写真/スズキ、トヨタ、ホンダ、写真AC

■「カッコいい!」は個人の主観なので……

 「カッコいい」。これはそう、“主観”である。だから、「そんなの全然カッコよくねーよ!」と思われるかもしれない。でも、筆者にとってはカッコよく感じた用語を紹介するので、どうか許してほしい。

 そして「こっちのほうがカッコいいだろ!」な用語を知っている人はぜひ教えていただけると幸いです。

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■ルーツを知ればグッとくる! 「なんか強そう」「なんかイケてる」な車名・愛称

1969年に登場したフェアレディZ。アメリカではフェアレディという名は冠されていない。女性的な響きを持つスポーツカーはアメリカでは受け入れられないだろうというのがその理由だとか

■日産初代フェアレディZ(S30)

 なんといっても“Z”である。幼少期をマジンガーZの超合金で育った筆者には胸にズキューン! て具合。ちなみにZは、どうしても売らなければならなかった時に生まれたフェアレディに、「Zの父」で米国日産の片山豊氏が送ったZ旗に由来する。

 Z旗は日露戦争のさなかに戦艦三笠が日本海海戦で掲げた旗で、片山氏から「頑張れ!」のメッセージとともに贈られたという。

 その後、負けられない戦いに勝負を賭けたフェアレディZは大ヒットを記録。筆者は後に、“フェアレディ”が“淑女・麗しき女性”という意味を知り、これもまた「ロングノーズ+ショートデッキのスタリッシュな感じがピッタリ!」と感じたのだった。

■スズキキザシ

 キザシは「兆し」、つまり和名である。

 和名の日本車というと光岡自動車のオロチ(大蛇)、トヨタミライ(未来)や同カレン(可憐)、日産サクラ(桜)など探すと意外とあるが、軽自動車のイメージが強いスズキが4ドアセダンのフラッグシップ車として開発したこのクルマの名前を挙げる人は少ないだろう。

 一般オーナーはまずめったにお目にかかれない希少車だが、2013年から警察車両に採用されたことで覆面パトカーとして大活躍。

 国内の累計登録台数3379台のうち約900台が覆面パトカーとして使われたことから、かなりレアなボスキャラ感あり。目に焼き付けられた時にはおそらくその車内にいるかと思うと「なんかわからないけどすごく強そう」と思える。

■アルファロメオジュリエッタSS

 空力特性を考慮した美しいボディラインは、映画マレーナに出てくる女優モニカ・ベルッチのよう。航空工学を学んだフランコ・スカリオーネの作品はどれもエレガントなクルマばかりだが、ここでは“カッコいい用語”がお題なので、ルックスではなく名前のほうに目を向けよう。

 ジュリエッタはシェイクスピアのロミオとジュリエットが由来とされ、SSはスーパー・スポーツ……ではない。“スプリント・スペチアーレ”である。

「ねえ、クルマは何に乗ってるの?」と聞かれ、「アルファロメオのジュリエッタ・スプリント・スペチアーレ……」と答えたらモテるんじゃないか? と若い頃は本気で思った。

 ただ、クルマ好きの友人は「すぐ壊れるイタリア車はそもそもモテない。だいたい、彼女より大事なクルマに乗ってるヤツがモテるわけないだろ」と。……ま、とにかくイタリア車はその姿もさることながら、名前も美しい響きでカッコいいクルマばかりだと思うのだ。

■ジェンセンインターセプター

 これはもうあの映画に出てくる“インターセプター”のイメージでしょう。いやいや、映画インターセプターではなく、映画『マッドマックス』シリーズの主人公マックス(メル・ギブソン)が乗るインターセプターです。

 インターセプターは“遊撃機”という意味で、暴走族専門の警察M.F.P.のクルマの名称。だが、作中のインターセプターのベースとなったのはオーストラリアフォードのファルコンXB。つまり、ここで紹介するジェンセンのインターセプターは何の関係もない(!)

 ただ、カッコよくて強いマックスの乗るインターセプターのイメージが強すぎて、“インターセプター”という響きに心惹かれてしまうのは確か。ちょっと名前負け感アリなジェンセンのほうのインターセプターは超高級GTカーで、日本ではまず目にすることはないだろう。

■「なんかすごいことできそう」「何ができるのか想像できない」なかっこいいパーツ名

DOHCがダブルオーバーヘッドカムシャフトという言葉の略称であることを知らない人は意外と多いはず。日本で始めてDOHCを採用したクルマは1963年に登場したホンダ T360

■ダブルオーバーヘッドカムシャフト

「ダブルオーバーヘッドカムシャフト」という長ったらしい名前に破壊力を感じるが、筆者は中・高とサッカー部に所属した世代的にもキャプテン翼世代なので、初めてこの単語を聞いた時は「翼くんと岬くんのゴールデンコンビが放ったあのダブルオーバーヘッド!?」とかなり惹かれた。

 短縮形のDOHCも、高性能エンジンの代名詞のようにそこかしこで使われていたので賛成していただけるかも。

■ダブルウィッシュボーン

「なんにでも“ダブル”って付けばカッコいいってもんじゃない!」と言わないでください。またまた私事だが、小・中学時代はラジコン&プラモ少年だった筆者。貯めていたお小遣いを使ってやっとの思いで買ったタミヤのRCバギー、ランボルギーニ・チーターの前後サスペンション形式がこのダブルウィッシュボーンだったのだ。

 棒状パーツのねじれを利用したトーションバー式のサスペンションシステムに「へぇ〜!」と少し賢くなった気がした。

 そして数年後に多くのレーシングカーに搭載されているシステムであることを知る。ウィッシュボーンとは鳥の鎖骨の意味で、上下のサスペンションアームがその形に似ていることから名付けられた。

■「なんか女子にモテそう、オシャレ?」な用語

■ヘリテージパーツ

 “ヘリテージ”は“遺産”を意味し、例えばヘリテージデザインとは現代の流行とは一線を画した伝統的デザインを用いつつも、現代に合った機能性や美しさを追求したデザインのこと。

 TOYOTA GAZOO Racingが展開する「GRヘリテージパーツ」は、「思い出の詰まった愛車に乗り続けたい」と願うユーザーの声を受けて、かつてのクルマのパーツを復刻したものである。

■ハイソカー

 “ハイソカー”はHigh society carの略。直訳すると「上流階級の人が乗るクルマ」だが、実際は「高級そうに見えるクルマ」だろう。車種はトヨタ2代目ソアラ(Z20)、同5代目マークII&2代目クレスタ(GX71)などで、デジタルメーターや電子制御サスペンションなどの新技術を採用したパーツを搭載していた。

 似たような言葉に“デートカー”というものもあり、これはデートの定番メニューだったドライブに行く時に「女子が乗ってくれるクルマ」「モテるクルマ」のこと。ハイソカーもデートカーも1980年代のバブル期に登場した和製英語だ。

 デートカーの最右翼はホンダプレリュード(2代目)だろう。このエロなクルマ(!)は、助手席のリクライニングレバーが運転席側にもあり、わざわざ助手席に座る女性が操作しなくても運転席の男性が助手席を倒せる機能が付いていた。いまなら通報されかねない装備であるが……。

 今回は「ちょいカッコいいクルマ用語」について書いたが、冒頭のとおりあくまで“個人の主観”なのでどうか笑って読んでいただきたい。

「そうそう、こんなのあったよなー!」と、懐かしいあの頃のことに想いを馳せていただけると幸いです。

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