トヨタが進めているアップサイクル事業。アップサイクルとは、廃材の特徴を生かしながら、新しい価値を与えていく取り組みだ。この取り組みが大きな展開を見せ、アパレル企業のアーバンリサーチ、繊維を扱う豊島株式会社との三社連携がスタートするという。三社連携で生まれるシナジー効果や、トヨタアップサイクル事業の今後の展開を紹介していこう。

文:佐々木 亘/写真:ベストカー編集部

■アップサイクルを身近にするための連携がスタート

アパレルとクルマの融合は親和性が高い。廃材を題材にしてもここは変わらないであろう

 9月20日、虎ノ門ヒルズにアップサイクルに取り組み続ける三社(アーバンリサーチ・豊島・トヨタ)が集結した。彼らは、日本のアップサイクルを大きく発展させるチームである。

 アーバンリサーチは、廃材を「集める・分ける・アップサイクルする・売る」を循環させ、廃材の再利用はもちろん、雇用の創出にもつなげている。

 豊島は、ビーチクリーンで回収したペットボトルを、Tシャツなどに生まれ変わらせる取り組みや、食品残渣(ざんさ)から色を抽出し、ファッショナブルに価値を生み出すフードテキスタイルを得意としてきた。

 ここへ、トヨタの循環型社会・システム構築チャレンジの1つであるアップサイクル事業が入り、「アパレル×自動車」の素材や文化の融合からスタートするという。さらにこれだけではとどまらない。

 将来的には他産業でも発生する「もったいない素材」を融合させながら、アップサイクルという取り組みを文化に、エシカルを文化にしていく。

 「モッタイナイ」が「もっといい」に変わり続ける未来を創る。三社のこの思いが、日本全体をより良いものへと変えていってくれるはずだ。

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■クルマはもちろん! トヨタはそれ以外の分野でもアップサイクルの先陣を切る

廃材の出るタイミング、量をしっかりと図りながら無駄なく事業につなげていく必要がある

 トヨタがアップサイクル事業をスタートして、既に3年半が経過する。その中で、エアバッグのナイロン基布やシートベルトの端材を組み合わせた「TOYOTA UPCYCLE GEAR」や、シートレザーの端材をアップサイクルした「ステーショナリーシリーズ」を生み出してきた。

 アップサイクルで生き残っていくためには、2つのポイントがあるとトヨタ自動車の中村慶至氏は語る。1つは「非効率との戦いにどう打ち勝つか」、2つ目は「柔軟で圧倒的なデザイン力をどう身につけるか」ということだという。

 材料となるのは廃棄物。だからこそ、出てくる量も形も色も、時期によってバラバラだ。これをいかに効率的に生産に結び付けるのかが、アップサイクルでは重要なポイント。

 加えて、廃棄物から価値あるモノを生み出すために、また廃棄物だからこそ生まれる制約を打ち破るためには、デザイン力がカギを握るのだ。

 異業種と手を組むことで、これまで取り扱ってこなかった材料(廃材)が増え、新たな価値が生まれる。そして新しい商品開発では、モノの消費だけでなくコト消費の提案にもつなげていく。

 アップサイクルが特別なものではなく、身近な体験になっていくことが、トヨタの目指すアップサイクルの本質的な姿だ。

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■トヨタアップサイクルプロジェクトの今後

ぜひ一度手に取ってみてほしい商品で山盛りだ

 トヨタのアップサイクルで感心するところは、廃材を加工する上で生まれる廃材にまで、さらにアップサイクルを回していくという点だ。

 例えばシートレザーの端材から生まれるIDカードホルダーでは、革を切り抜いて窓を作る。窓用に切り抜かれたレザーの廃材は廃棄にまわるのかと思いきや、それを使ってレザーの栞(しおり)を2つ作り上げるのだ。

 それでも発生する小さなレザーの端材は、トヨタ販売店などで行われるアップサイクルのワークショップ活動で使用し、極力廃棄物がでないように工夫をしている。

 こうした強い信念の中で、トヨタのアップサイクルの進化は止まらない。

水素タンクを作る際に出てしまう樹脂や、その他の工程で出てくる金属、プラスチックの端材・廃材まで、まだまだやれることはたくさんあるという。現在はまだ新品を使う、バッグやステーショナリー縫製用の糸やプラスチックなども、他の廃材のアップサイクルで作り上げたいと意気込む。

 また、ゆくゆくは廃車から生まれる材料にも着手していきたいというが、それは少し先の話となりそうだ。トヨタのアップサイクルは、日進月歩で着実に進化の階段を上っていく。

 自動車を生産する工場側では、廃材・端材が少なくなるような工夫も日夜行われており、アップサイクル事業側から見ると材料の質が落ちていくジレンマもあるという。

 ただ、地球にとってイイことが、トヨタ全体で進んでいるのは良いことだと、トヨタアップサイクルプロジェクトオーナーの中村慶至氏は笑顔を見せた。

 今後も、トヨタディーラー主催のイベントなどで、精力的にプロモーションを続けていくという。目にする機会があれば、是非トヨタのアップサイクルの熱量を肌で感じてほしい。

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