2024年10月3日、日産の人気ミニバン「セレナ」のe-POWER車に、(e-POWER車としては)同モデル初となる4WD(e-4ORCE)が設定された。発売は11月中旬を予定しているという。e-POWERの4WDといえば、この2か月前にマイナーチェンジとなったノートオーラNISMOにも設定されたばかりだ。
2WDと比較して車両価格が高くなる4WDは、雪が多い地域に住んでいる人など、必要な人だけが選ぶもの、と考えている人は少なくないと思うが、e-POWERの4WDには、機能面だけではないメリットがある。e-POWERの4WDの意外なメリット、そしてデメリットについてご紹介しよう。
文:吉川賢一/写真:NISSAN
まるでかつてのFRのような気持ちよさ
e-POWERの4WDシステムとしては、かつては「e・4WD」というものがあった。前輪駆動のガソリンエンジン車の車体後部に小型の電気モーターを搭載し、必要となった時だけ後輪を駆動して4WD化するコンパクトな4WDシステムだったが、この後継として誕生したのが「e-POWER 4WD」だ。
e-POWER 4WDの初搭載車は、2018年7月に追加された先代ノートe-POWERだ。電気モーターで前輪を駆動するe-POWERに、後輪用のモーターを組み合わせた電動4WDシステムで、モーターならではのきめ細かいトルク制御によって、ドライバーが前輪の空転を感じる前に素早く4WD走行に切り替わり、スムースな発進・加速を実現していた。
このe-POWER 4WDを進化させたのが、2020年12月に登場した現行ノートe-POWERの4WDだ。リアモーターの出力を大幅に改善(前型の約14倍の駆動力を発生する50kWモーター)し、併せて改良した前後モーター制御によって、滑りやすい路面以外でも、効果を発揮するように進化した。
具体的には、前後モーターの駆動力配分を自在に変えることで、発進加速や追い越し加速、さらにコーナリングまで、優れた走行安定性を発揮するようになった。筆者もノートオーラのe-POWER 4WDを所有しているが、コーナーでアクセルを踏み込んでも、アウト外側に膨らむことがなく、むしろイン側を向くような動きがあり、まるでかつてのFR車のようなハンドリングで楽しい。試乗した際のこの感触が忘れられずに、買ってしまったくらい気に入っている。
ちなみに、今回セレナに設定された「e-4ORCE」は、アリアやエクストレイルにも設定されているが、日産のエンジニアによると、ノート(オーラ)のe-POWER 4WDと制御ロジックの中身はほぼ同じだそう。モーター出力の違いによって呼び名を変えているだけだそうだ。
オーラの中古車をもっと見る ≫デメリットは燃費
滑りやすい路面での安心感が高く、ときには楽しいハンドリングも与えてくれるe-POWER 4WD/e-4ORCEだが、燃費性能はよろしくない。ノートオーラは、2WDのWLTCモード燃費は27.2km/Lだが、4WDになると22.7km/Lと、かなりの落ち代。実燃費もよくなく、筆者の場合、今年の35度越えの猛暑化での平均燃費は11~13km/Lであった(春先は平均燃費18km/Lであった)。
暑さによって、電気を大量に消費するエアコンがかかりっぱなしとなったことのほか、筆者の自宅周辺は坂道が多い地域であること、そもそもe-POWERは高速走行が苦手、などの理由が考えられる。ちなみに、知人によると、(ノートオーラでも)2WDの場合は、夏場でも16~18km/Lは出ているそうだ。
涼しい季節になれば多少改善するだろうが、低燃費走行に気を付けて運転をしても燃費がそれなりだったのは、やはりe-POWER 4WD/e-4ORCEは、電気をよく使うシステムなのだろう。
楽しくて燃費もいい「e-POWER 4WD」が実現することを期待したい!!
ちなみにエクストレイルe-POWERのWLTCモード燃費は、2WDが19.7km/L、e-4ORCEが18.4km/L、ノートオーラNISMOは、2WDは23.3km/L、4WDは未公表となっているが、おそらく20km/Lを下回る水準になっているだろう(NISMO車は数字を隠すことがよくある)。ノートオーラNISMOのようなスポーツモデルならば燃費に目をつぶることは許容されるかもしれないが、セレナe-POWER e-4ORCEでは無視はできない。
「安心できる4WD」にはお金を出せても、「楽しい4WD」に対してはお金を渋る人は少なくない。日産としても、リアモーターによる回生や、制御ロジックの改良、車両軽量化など、いくつもの省エネ方策を投入してはいるが、他社のハイブリッドは、さらに上をいく低燃費をたたき出している。今後、「楽しくて燃費もいいe-POWER 4WD/e-4ORCE」が実現することを期待したい!!
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