7月に正式発表されたドゥカティの新型パニガーレV4/V4Sが、「イタリアンスポーツデイ」にてお披露目された。モトGPマシンに1番近いと言い切るこのスーパーバイクについて、ドゥカティジャパンによる製品プロモーションを元に最新情報をお届けする。
文/Webikeプラス編集部「イタリアンスポーツデイ」でついに実車と対面
MOTO GP日本グランプリを週末に控えた10月2日、駐日イタリア大使館官邸で行なわれた「イタリアンスポーツデイ」が開催された。ドゥカティ・コルセチームのエネア・バスティアニーニと、プラマック・レーシングのフランコ・モルビデリが参加し、ドゥカティの日本GPでの必勝祈願が行なわれた後、7月に正式に発表された新型ドゥカティ パニガーレV4の実車が日本で初公開された。
ドゥカティジャパンの代表取締役社長マッツ・リンドストレーム氏による挨拶の後、アフターセールスダイレクター森 大樹夫氏による製品プロモーションが行なわれた。
まず新型パニガーレV4/V4Sの日本国内への導入時期だが、現在この日展示された3台が先行で輸入されて登録準備が進められている当然型式認定を取得することになるのだが、これが問題なく進めば2024年の年末ごろにはデリバリーが開始される予定だという。価格は既に発表されている通りパニガーレV4が323万9000円、パニガーレV4Sが414万1000円となる。
「誰もが速く走る」本物のスーパーバイク
パニガーレV4はモトGPレプリカとして誕生し、新型の第7世代はレースで勝つことはもちろん、すべてのレベルのライダーがより速くサーキットを走ることをコンセプトに開発されている。ライダーの意思にバイクが思い通りに反応する「ライダー・マシン・インターフェース」を掲げ、ライダーの動きをバイクが理解して必要なサポートをバイクが積極的に行なう「イージー・トゥ・ファースト」こそ真髄だという。エンジンはバージョンアップだが、シャーシは94%新設計され、どんなレベルのライダーが乗っても、先代を含めたどんなバイクよりも速く走れるバイクになったという。
5月にミサノサーキットで開催されたワールド・ドゥカティ・ウイークエンドで、モトGPライダーを含む15人のドゥカティ・オフィシャルライダーによるレノボ・レース・オブ・チャンピオンズが新型パニガーレV4Sを使って行なわれた。このレースにおいてポールポジションを獲得したアンドレア・イアンノーネのラップタイムは1分35秒051、レース中の最速ラップはフランチェスコ・バニャイアが記録した1分35秒431であった。モトGPマシンによるミサノのラップレコードはバニャイアによる1分31秒8であり、市販車である新型パニガーレV4SはモトGPマシンに対してたった4秒落ちというタイムを記録。レノボ・レース・オブ・チャンピオンズにおける平均ラップタイムは、先代モデルと比較して平均で1秒短縮するという結果を残した。
94%新設計された車体と、エレクトリックサポートが生む新次元の走り
開発においてはさまざまなレベルのライダーを乗せてテレメーター評価を行ない、先代のネガを潰すことはもちろん、誰もが速く走らせることができる世界最高レベルのスポーツバイクを作ることにドゥカティのエンジニアは全力を注いだと言う。
ブレーキシステムは完全にリニューアルされ、ストッピングパワーだけではなくエレクトリックサポートと連携してマシンのコントロール性を向上する。ブレンボハイピュアキャリパーとボッシュのeCBSで構成される新ブレーキシステムによって、よりコーナーの奥まで強くかけられるようになっている。そして、横方向の剛性を減らしたフレームとスイングアーム、eCBSによってリアブレーキを効率的に使い、ターンインに向かってうまく走らせていくことができるのだという。
先代のパニガーレV4/V4Sの数少ない弱点として、アペックスが他メーカーに比べて遅かった(リーンが1番深いところでのスピードが他メーカーに劣る)ということをドゥカティは認めている。プロライダーはリアブレーキを使ってリアを適切にスピニングさせてこの弱点を補っており、ドカティスライドコントロールはこの需要を見込んで生まれている。簡単に言うと、ドカティスライドコントロールはこのリアをスピニングさせてマシンを脱出方向に向けるという作業を、マシンがアシストしてくれるのだという。
また、スイングアームの横剛性を落とすで車体全体のメカニカルグリップを高め、よりエレクトリックサポートを使いこなせるようになっている。これによってコーナー脱出路のタイヤの横グリップから縦グリップへの以降を素早く行ない、スロットルのアシストによってトラクション性能が向上して脱出スピードが上がる。スロットルはアソビがまったくなく、ライダーの操作に対してリニアに反応することを最優先に考えられている。
最新を追い求めて辿り着いた、原点916
デザインは916をオマージュしていると発表されているが、低く、長い今のモトGPバイクはタイヤの進化によってデザインに大きな変化が起こっており、そうした要素を盛り込んだデザインを進めていくうち、916に似てきたことにデザイナーが気がついたのだという。
アッパーカウルのサイドエアダクトが無くなり、その位置にはウイングが取り付けられている。今まではエアインテークをそこに設け充填効率を高めていたのだが、バイクの中でどこに1番強い位置に圧力がかかるかを考えるとこの位置が最適だったという。
フロントフェアリングのデザイン変更でドラッグは4%減っているという。空気抵抗はライダーを含めて考えられていて、タンクはその最もたるもの。上部のヘルメットを収める窪みを作り、物理的にライダーのヘルメットの位置を下げ、ニーグリップ部分は大きくえぐられる。また、ショルダーの部分はハングオンしている時に肘をひっかけて体を安定させることができるようになっており、これは916の時代から受け継ぐ伝統でもある。
シート座面は前後に35mm、左右に50mm広げられ、新しい時代のバイクやタイヤが必要とするバンク角に対してライダーが安定した姿勢を保てるようにデザイン。また、シートは背の高いライダーであってもより低く伏せることができる作りになっている。ステップは従来のパニガーレよりも左右それぞれ10mm内側に入っている。これはライダーを含めた前面投影面積を減少させ、コーナリング路にブーツの先端が地面に当たる率が若干減らす効果もあり、そういった意味においても乗りやすさが向上している。このように細部までライダーとマシンの一体化のためのデザインが施されている。
公道走行されているライダーからは色々と声が聞こえる熱の問題は、レースの現場でもライダーが低温やけどをしてしまうなど非常に厳しい状態にある。エンジンのパフォーマンスが上がりすぎて、どう熱を逃すかというのが大きな問題になっている。ラジエターダクト、オイルクーラーダクトだけではなく、サブフレームの中を通ってリアエンドのダクトから排熱されるようにデザインされている。また、吸い出された熱気をいかにライダーに当てないかとということを考えて各部のダクトはデザインされている。
クーリングに関して言えば、フロントのフェンダーの幅が太くなっており、これは空力+冷却性能の向上のための形状変更。また、スリックタイヤを入れても干渉しないように考慮されてデザインされている。このフェンダーで整流された空気がラジエター、そしてオイルクーラーに当たる率はオイルクーラーが19%、ラジエターで9%向上。ラジエターは実効冷却面積を7%ほど大きくして、増えた熱量をより効率的に冷却する。結果的に熱交換効率はラジエターで12%オイルクーラーで7%アップさせており、これは各部のダクトの効率アップも貢献している。
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