韓国や中国で問題となっているEV(電気自動車)バッテリーによる火災。LG化学は、EVのバッテリー火災の主要因である熱暴走を抑制する新素材の開発に成功した、と発表した。
開発された温度応答性安全強化層(SRL)は、人間の髪の毛の直径の約100分の1という極めて薄い1μmの厚さで、バッテリーセル内のカソード層と集電体の間に配置される。この新素材は温度に敏感に反応し、90~130度の範囲で電池の温度が異常上昇すると、分子構造を変化させて電流の流れを効果的に抑制する。
LG化学の研究チームによると、この材料は1度の温度上昇につき5000オームの電気抵抗増加を示し、最大抵抗は通常温度の1000倍以上に達する。さらに、温度が下がると元の状態に戻る可逆性も備えている。
熱暴走は、バッテリー内のカソードとアノードが意図せず直接接触することで発生し、数秒で温度が1000度近くまで上昇して火災を引き起こす危険性がある。新素材は過熱の初期段階で反応経路を迅速に遮断することで、火災を防止する効果が期待されている。
実際の試験では、この新素材を搭載したバッテリーは、衝撃試験や貫通試験において、火災の発生を大幅に抑制することが確認された。モバイル用LCOバッテリーの貫通試験では、通常のバッテリーが84%の確率で発火したのに対し、新素材搭載バッテリーでは発火事故が全く発生しなかった。
EV用NCMバッテリーの衝撃試験では、標準バッテリーが全て発火したのに対し、新素材搭載バッテリーは70%が全く発火せず、残り30%も数秒以内に消火した。
LG化学は、この新素材の安全性検証をモバイルバッテリーで完了し、2025年にかけて大容量EV用バッテリーの安全性試験を継続する予定だ。
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