運転免許の話題で上がるのが「取った」免許と「買った」免許のどちらが偉い問題だ。取ったとは何なのか、買ったとはどんな意味なのか。今回は大型二種免許について職業運転士に聞いてみた。バス運転士不足が深刻になる中で取得が必要な免許なのでプロはどう思っているのだろうか。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■取る? 買う?

免許証では取ったか買ったかはわからない?

 多くの方が普通運転免許をお持ちだろう。運転免許を得るには運転免許試験場で試験を受けて合格しなければならないが、試験とは技能試験と学科試験と適性試験だ。適性試験は適正検査や視力検査などとも呼ばれるが、正確にはこれも試験だ。視力・聴力・運動能力・色彩識別能力などについてチェックされる試験である。

 学科試験と適性試験は試験場で受けることになるが、技能試験はなかなか合格するのが難しいことで知られる。しかし都道府県公安委員会の指定自動車教習所で所定の教習を受けて卒業検定に合格すれば試験場での技能試験は免除される。

 普通免許をお持ちの方はたいていが自動車教習所で取得するだろう。むしろそれが常識だ。これを俗に「免許を買う」と呼称することがある。以前は教習所での技能試験免除の制度がなかった大型自動二輪免許(昔の自動二輪免許の限定解除)や大型二種免許は、試験場で合格するしか取得方法がなかった。

 そのことから、試験場で合格して免許を取得することを俗に「免許を取る」と呼ぶことがあり、この違いがマニアの間では明確に線引きされることがある。

■取る方が偉い?

国外運転免許証では自動二輪・大型二種・けん引があればAからEの5種フルビットになる?

 試験場で免許を取得するのは実際に難しい。何回も何十回も試験を受けてようやく合格する人もいれば、途中で難関過ぎてあきらめてしまう方も多い。しかし趣味ではなく職業で必要な方はあきらめるわけにはいかないので苦労して「取った」のは事実だ。

 しかし現在では指定教習所で大型二種免許の教習が実施されていることから「買う」方が主流になり、事業者においても運転士になろうとする人の免許取得は指定教習所で「買う」、つまり買ってあげる方が主流だ。そして、なぜか取った人が買った人を低く見る傾向があるのもマニアの世界だ。

■職業運転士の見解は?

免許「購入組」の記者がエアロバスで練習中!

 取った免許も買った免許も法律上、免許としての効力に差異はないし、どちらも試験は同じだというのが建前だ。よって免許証を見て識別することはできないし、その必要もない。そこで職業運転士はどう見ているのか聞いてみたのでまとめた。プロはどちらも同じという意見が主流のようだ。

 「どっちでもいいんじゃないですかね?試験場で取った人が運転がうまいとは限りませんしね。要は慣れとセンスですよ」「確かに苦労して取ったことを考えると、今は楽だなぁとは思いますけど、試験場でも教習所でも免許を取ったからすぐ乗務できるわけではないですしね」

 「免許はスタートラインにすぎないので、どちらでも変わらないと思いますよ。むしろ何十回も試験場に通ってようやく取った人が運転が上手と言えますかね?」

 「最近の運転士はマニアの言葉を借りれば買った人ばかりですよ。買ってくれたのは会社ですけどね。買おうが取ろうが、うまい人は乗っているお客さんのことを考えた運転が身についてますよ。自然にできるんですよね。下手な人は何をやっても、いつまで経って乗り心地が悪いですよね」

■結論は…変わらない!

取得組でも購入組でも必要なのは慣れとセンス?

 プロ運転士の結論は「運転士の仕事ができる資格にすぎないので、早く取得して実際の路線で慣れた方が勝ち」というものだった。大型自動二輪免許のような趣味性の高い運転免許は二種免許がないので旅客を運送するプロが存在しない。

職業運転士ではないので初めての高速料金所は緊張する

 よって「昔に試験場で限定解除をした」「教習所で大型二輪を取得した」の違いは、心理的にはあるのかもしれない。 大型二種免許についても同様の理論で格差付けをしたがるのは、マニアの単なるマウント取りに過ぎないのだろう。

 バス運転士不足の大変な中で、今や現役の運転士でも「買う」のが常識になりつつある。センスある人が事業者での訓練でバスを自在に操り、乗り心地の良い運転につとめ、素晴らしい接客をする運転士こそが偉いプロドライバーなのではないだろうか。

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