春先にクルマのボディを見ると、うっすらと黄色い粉のようなものが……。これが黄砂や花粉だということは多くの人が知っているが、放っておくととどうなるのか? そこで今回はクルマやドライバーに害のある“粉”の害と対処法について考えていこう。

文/山口卓也、写真/写真AC

■クルマやドライバーに害のある“粉”は数種類

春は花粉と黄砂のWパンチ! まさに粉もの祭状態で、クルマにとっては最も過酷な季節といえる

 前述の黄砂や花粉以外にも、クルマやドライバーに害を与える粉はほかにもある。

・黄砂
・花粉
・鉄粉
・凍結防止剤・融雪剤など

それでは、これらがどんな影響を及ぼすのかを見ていこう。

■黄砂や花粉はこれから大量にクルマに付着する

 東アジア内陸部のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などの乾燥・砂漠地帯の砂が強風によって巻き上げられ、偏西風に乗って中国やモンゴル、韓国や日本に飛来して大気中に浮遊し、降下する黄砂。飛来は2月頃から増え始めて4月がピークとなり、6月になると一気に少なくなる。

 一方、花粉も黄砂と同じく2月頃から5月に飛散。ということは、まさに今の時期が黄砂と花粉の入り混じったものが飛ぶピークといえる!

■黄砂による健康被害は数多い

 黄砂には土壌中にある石英や長石などの尖った鉱物や粘土物質が含まれているが、ほかには土壌起源ではないと考えられるアンモニウムイオンや硫酸イオン、硝酸イオンなどの大気汚染物質も含まれている。

 その粒子は非常に細かく、呼吸器系に直接入り込むと気管支喘息や肺炎などの呼吸器疾患、目のかゆみや結膜炎、鼻水やくしゃみなどのアレルギー疾患も引き起こす。

 また、含まれている鉱物による金属アレルギーにより、皮膚の赤みやかゆみ・湿疹などが起きる場合もある。

 そして、花粉による花粉症も、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患。黄砂の場合と同じような症状を引き起こすので、クルマのボディへ付着した場合は放置しないほうがいいだろう。

■クルマへの影響はなさそうな黄砂や花粉だが、ボディには×

 では、黄砂や花粉がクルマに付着した場合はダメージがあるのだろうか?

 「雨が降れば流れ落ちるから大丈夫」と思われるかもしれないが、例えば、黄砂の場合。黄砂に含まれる石英や長石は非常に硬い物質のため、ボディに付着したまま放置するとボディに細かなキズをつける存在となる。

 花粉は、雨や夜露などで水分を含むとタンパク質の一種であるペクチンという物質が溶け出す。このペクチンはベタベタした物質のためボディに強力に貼りつき、塗装面を侵食する“花粉ジミ”となるのだ。それが炎天下などで定着すると塗装内部にまで染み込んでシミ汚れに……。

 よってボディに付着した花粉は、定着する前に洗車。定着してしまったペクチンは落ちにくいが、熱に弱い性質があるので、45℃程度のお湯で流す方法がある。

 いずれにせよ、ボディに付着した黄砂や花粉は放置せずに即洗車するほうがよさそうだ。

■クルマに付着した黄砂や花粉は“拭かずに高圧洗浄”がベスト!

 花粉はまだしも、硬い物質を含む黄砂はスポンジを使った洗剤洗いでも細かなキズがつきやすい。時短洗車の味方である洗車機は弱い水流+ブラシで擦るのでやめておいたほうがいい。流水+スポンジなどは使わず、高圧洗浄機の水で一気に洗い流すのがベストだ。

 その後に洗車しボディコーティングまで施工すると、黄砂や花粉が付着しづらくなる。それでも付着した場合は、塗装面への摩擦を減らすためによく泡立てたカーシャンプーをスポンジにとり、流水とともにやさしく洗車する。

■鉄粉はどの季節でもボディに付着するやっかいな存在

鉄粉除去剤を使用するとボディを擦らずに済む。「こんなに鉄粉がついていたのか!?」と驚くほど鉄粉が溶け出してくる。鉄粉は花粉や黄砂よりも目立たないため、付着に気づきにくいので要注意だ

■なぜクルマのボディに鉄粉がつくのか?

「ボディがところどころザラザラしている」「小さな黒や茶色の点々がある」という人は、おそらく鉄粉がついているはず。この鉄粉、ほとんどのクルマに付着しているが、ユーザーは鉄粉の付着に気づいていない場合が多い……。

 空気中には前出の花粉や黄砂以外にクルマに悪さをする鉄粉などの粒子も舞っており、クルマを走行させると空気中の鉄粉が塗装面に突き刺さる。

 鉄粉は、ブレーキ制動時に発生するブレーキダストに含まれていて、交通量の多い場所では空気中に多く舞っている。また、鉄道や工場のある場所の近くでも同様。このような場所では、クルマを停めておくだけでもボディに鉄粉がつくほどだ。

■ボディの鉄粉を放置すると塗装面を傷め、サビの原因に

 ザラザラしたボディにより、洗車時の水切れが悪くなる。鉄粉の付着がひどい場合は、拭き取り用ウェスの滑りも悪くなるほど。

 さらに、汚れが鉄粉に引っかかって落ちにくくなり、塗装面を劣化させるようになる。そして鉄粉の酸化が進んでいくとサビが発生。ボディ内部へ進行するとボディの中にも広がっていくので実はかなりやっかいな存在。

■鉄粉は通常の洗車では落ちない!

 塗装面に刺さっている鉄粉は通常の洗車では落ちにくく、むりやりスポンジや濡れタオルなどで擦り落とそうとするとボディのキズが増えてしまう。よって、専用の鉄粉除去用の粘土、除去剤をクロスにコーティングしたクロスタイプ、そしてスプレー式の鉄粉除去剤などを使って落とすことになる。

 粘土で鉄粉を除去する場合は水をボディに流しながら滑らせるように使うなど、慎重に行う必要があるが、固着した鉄粉も落としやすい利点がある。

 除去剤でコーティングしたクロスは掻き落とす力が強いので強く擦らないようにする必要があるが、洗って何度も使えることが利点。こちらも水を流しながら使うもの。

 スプレー式は吹き付けて一定時間おいた後に水で流す必要があるが、鉄粉を擦らないので鉄粉除去時のボディへのキズつきを防いでくれるのが利点。

 ただし、一度では落ちにくいため、何度かスプレー→一定時間放置→水で流す……という作業を繰り返す必要がある。

 いずれにせよ、鉄粉除去は「キズをさらに広げるリスク」もあるため、除去剤の使用方法をよく読んで慎重に作業したい。不安であればプロに依頼し、その作業後にボディコーティングを施工してもらうのもありだろう。

■凍結防止剤・融雪剤は鉄粉のダメージを拡大させる!

 冬季に積雪地帯走行後のクルマを見ると、白っぽい粉のような汚れがボディ下部に広がっているのを見かける。これは道路に撒かれた凍結防止剤や融雪剤が飛び散ったもの。

 凍結防止剤や融雪剤には塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウムなどが使われ、道路上に凍結防止剤を散布すると雪の表面の水に溶け込むことで路面の凍結温度が下がる。凍結温度が下がることで「路面が凍りにくくなる」というわけだ。

 凍結防止剤は路面が凍結するのを防ぐために積雪前に撒かれ、融雪剤は積雪後に雪を溶かすために撒かれる。

 この凍結防止剤や融雪剤がクルマに付着した状態で放置しておくと水シミになりやすく、特に濃色車では非常に目立つようになる。また、これらは塩化物のため、鉄粉と反応するとサビの進行を一気に促進させる。

 よって、特に寒い時期に積雪地帯によく行く人は、凍結防止剤や融雪剤の付着を見逃さないように。

 今回はクルマにとって害のある粉について書いた。どの粉も「クルマにつかないようにする」のはほぼ無理なので、愛車はマメに洗車してあげてください。

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