2019年末に惜しまれつつ生産終了となった、トヨタ伝統のミドルクラスセダン「マークX」。ライフスタイルの多様化などによるセダン需要の衰退が主な要因だが、デザインも走りも素晴らしかったマークXは、ぜひとも復活してほしいモデル。マークXの存在意義と復活の可能性について考えてみよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:TOYOTA

若返ることで人気復活を狙ったマークX

 マークXの前身「マークII」は、トヨタを代表する高級セダン「クラウン」の弟分として設定されたモデルだ。その歴史は1968年にまで遡り、高級化志向が高かった1980年代にその人気はピークに達した。

 シニア層のほか、法人向けとして人気を維持していたマークIIだったが、バブル崩壊やライフスタイルの変化によって、乗用車の人気の中心はコンパクトカーやクロスオーバーSUVに移行。セダン自体が売れなくなっていき、1990 年には年間20万台ほど売れていたマークIIも、2000年にはその3分の1にまで減少していった。

 そこでトヨタがとった方策が、「マークX」の投入だった。ネーミングと共にスタイリングを大胆に変更することで若返りを図ったのだ。

クラウンの弟分として長年人気のあったマークIIだったが、「オヤジグルマ」代表というイメージがあった
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当初こそ人気を集めたものの、時代の流れに逆らうことはできず

 マークXは2004年に登場。居住性を重視したマークIIは全高が高く、スポーティとはいいがたいスタイリングだったが、マークXでは40mm程低くし、走りを意識したデザインに生まれ変わった。上質でありながらもスポーティな表情を見せる片側3連プロジェクターランプも斬新であり、スポーツセダンのイメージを色濃く反映させていた。

 プラットフォームは12代目クラウン(いわゆるゼロクラウン)に採用された新世代のものをベースに、軽量化を実施して運動性能を向上。これに伴い、エンジンも直6ではなくGR系のV6に変更され、クラウンと同様2.5Lと3.0Lのバージョンが用意された。

 その後マークXは2009年に2代目に進化。より傾斜したフロントガラスや立体的でスポーティなディテールなど、さらにスポーツセダンとしての魅力を加速。マイナーチェンジを経て顔も凜々しく変化し、2019年にはGRシリーズの頂点である「GRMN」にマークXを投入。3.5L V6自然吸気エンジン+6速MTの組み合わせにより、318ps/380Nmのパワーを本気で楽しめる仕様だった。

 マークXデビューの当初は、月販目標台数を確保するほどの人気ぶりを見せたが、トヨタの思い通りとはいかず徐々に販売は低迷、販売終了へと追い込まれた。4ドアで走りも楽しめる高級セダンという意味では素晴らしいクルマだったが、やはり時代の流れに逆らうことはできなかった。

2004年登場の初代マークX。デザイン、走り共にスポーティで若々しく、イメージは刷新された

制限速度が引き上げられれば、再びセダンに注目が集まるはず

 セダンのメリットは、重心が低いことと、3ボックス形状で車体剛性を高めることができるため運動性能に優れているという点だ。ミニバンと乗り比べると、セダンの高速走行時の安定性やワインディングにおけるハンドリングのよさを感じることができると思う。トランクが分離されているセダンは静粛性でもメリットが大きく、快適さや高級感もより一層強調できる。

 しかしながら、近年のクルマはシャシー性能が非常に高く、SUVやミニバンに乗っても日常使いや運動性能で不満はない。普段の扱いやすさや実用性という観点からも、わざわざ選ぶほどの魅力をセダンに見出しにくいのは事実だ。クラウンが様々なボディタイプで構成されているのも、現代の多様性に合わせたからだ。

 ただ、セダンの価値が全く失われたかといわれるとそんなことはなく、SUVでは入れない立体駐車場に駐車できることや、高速域での走行性能の高さという面ではやはりアドバンテージがある。もし日本の高速道路の制限速度がいまよりも引き上げられ、高いアベレージスピードで走行するシーンがもっと増えるようになるなら、セダンのメリットが改めて注目されるに違いなく、そのときには、マークX復活もあるかもしれない。

 クラウンよりも気軽に乗れる、唯一無二のFRスポーツセダンだったマークX。サイズ感や性能、デザインどれを取っても非常にいいクルマだった。いつの日か復活してくれることを期待している。

最終型のマークX。サイズ感や性能、デザインどれを取っても非常に良いクルマだった

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