種類は同じ「路線バス」だけれども、所変われば品変わる。都会の喧騒を忘れてユルユルと旅を楽しむべく、のどかなローカル路線バスを目当てにすると、よくこんなシーンに出会う。
文・写真:中山修一
(ローカル路線バス究極の旅にまつわる写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■決してフラっと乗れない
外食を楽しもうとする際、先にマップアプリやグルメサイトを隅から隅まで読破してしまうと、その後はタダの確認ないし添削になってしまい、食事本来の醍醐味が完全に削がれ、満足できたはずのものが満足できなくなる、なんて話をたまに耳にする。
旅もそれと似ていて、事前情報を入れないまま何も考えずに家を出て、目の前にやってきたバスなり電車なりにフラっと乗って、とりあえず行きたい場所まで行ってみるのが究極の楽しみ方、に思える。
しかし理想と現実が必ずしも同じ方向を見ているわけではなく、殊にローカル路線バスとなると、よほど土地勘があるかロケ車がケツにビッタリ付いていない限り、出たとこ勝負で臨むのは初めて入ったカレー屋で10辛を頼むようなものだ。
予備知識なしでバス停まで行って、1時間に1本なら相当ラッキーな方だ。しかし全国には1日5本だったり3本だったり、1本だけだったり、はたまた日曜の朝5時にしか便がなかったりと、もはや客を乗せる気ないんじゃないの? と思えるほど攻略の難しいバスがゴロゴロ。
極端なところまで行くと予約制かつ地元民しか乗れない、なんてバスもフツーに存在するため、もしそれに当たってしまったら、悪い夢見たと思って地獄で待っててちょうだい、ということだ。
条件次第では町の中にいても軽く遭難できる切実な事情から、ローカル路線バスを使った旅を真っ当に楽しみたい場合、アンテナというアンテナを張り巡らせて情報収集を行った上で、最低限のフェイルセーフを施す工程が不可欠になる。
■遅れて来るのがフォーマル(?)
ローカル路線バスに途中の停留所から乗ろうとして待っていると、到着予定時刻を過ぎてもなかなか来ないことが割とある。1分2分の話ではなく、これバス1本歯抜けになったのか? と不安になってくるレベルで、だ。
だんだん顔が青ざめてきて、ぼちぼち営業所に電話するか、と考え始めた頃にバスが現れるのが王道のパターンと言える。
しかし、やってきたバスに乗り込むと混んでいるわけではなく、むしろ席を自由に選べるくらい空いている。他のクルマも大した数が通らないため道路が大渋滞したとは考え辛く、何で遅れたのか首を傾げてしまう。
大都会の路線バスよりもローカル路線バスのほうが実は遅れやすい……そんなイメージを抱くが、恐らくこれは各停留所での客扱いが深く関連していると思われる。
まずローカル路線バスの多くが「後ろ(中)乗り・前降り」の運賃後払い方式で、さらに現金しか使えない路線がかなり多い。しかも千円札で運賃を支払おうとすると、殆どのバスで両替の工程を挟む必要が出てくる。
大都会のバスが積んでいる運賃箱のように、札を挿入すれば運賃を自動的に差し引いてお釣りが出てくるのではなく、単純に500円玉と100円、50円、10円玉に崩すタイプが依然主流であり、どうしても1人あたりの精算に時間を要する。
利用者の総数が少なくても、降車時の運賃支払いに両替を希望する乗客が続けば、数人で結構な時間が積み重なっていき、これがバス遅れの要因に一枚噛んでいるのでは、と推測される。
さらに折り返し運転の時間設定がタイトだったり、終点の停留所で別のバスに乗り継ぎができるダイヤになっていると、接続を取るため到着予定の便が遅れた分だけ始発便も出発が遅れるため、ドミノ倒し的に遅れが増大していく流れも想像できる。
他にも理由はあれこれ考えられそうだが、ともあれローカル路線バスは結構よく遅れて来るのだ。
■カーテンが全部閉まっている
ローカル路線バスの旅ならではの魅力が、車窓からの景色である。海の青と山の緑どちらも合わせて、目の保養になるほど美しい場所を通るバス路線に出逢えるとすごく嬉しいだけでなく、また来ようと思いたくなる。
そういうステキな経路を持っているバスにイザ乗車してみると、何やら車内が薄暗い。ローカル路線バスにはカーテン付きの車両がそこそこ使われており、その場合とりわけ夏場になると大抵はカーテンが閉まっているのだ。
都会の電車等でも、日の差し込む側だけ所々カーテンやブラインドが閉まっている光景を頻繁に見かける。一方ローカル路線バスでは片側ではなく両側のカーテンをフル全閉にしているのがポイント。
美人は三日で飽きる、などと良く言ったものだが、どんな絶景でも毎日見ていれば日常に変化していくもの。
そうなってしまえば、眩しい思いをしながらいつも通りの景色が否応無しに視界に入ってくるよりも、カーテンを閉めて日差しを避け快適性を取るほうが優先、といった発想が具現化されたものかもしれない。
それでもカーテンを開けてはいけない、というルールは聞いたことがないので、外の景色を見たければ適宜自分でカーテンを調整しつつ、思い思いのバス旅を堪能すれば問題ないハズだ。
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