1992年11月から3年間生産されたNA1型のNSXタイプR。そして実に7年ぶりに復活した2002年5月に発売されたNA2型のNSX-R。いまや中古車市場では5000万円とも6000万円オーバーともいわれる、手が届かない夢のクルマになってしまった。発売当時はどのように評価されていたのか? 本企画では2002年3月にもてぎで開催されたNA2型NSXタイプRの試乗会の模様をお届けしよう!

※本企画は2002年4月10日号から抜粋し記事化したものです。
文:清水和夫、ベストカー編集部、写真:ベストカー編集部

■2002年5月に復活したNA2型NSX-Rの実力はいかに?

ベストカー2002年4月10日号から抜粋

 1992年に登場し、1995年に生産を終えたNSXタイプRが大規模なマイナーチェンジにともない7年ぶりに復活する。正式デビューは5月中旬の予定だが、ホンダはプロトタイプの試乗会をツインリンクもてぎで開催。

 ベストカーはNSXを愛車とし、またオーナーズミーティングで講師も勤めるNSXマイスター、清水和夫氏にテストドライプを依頼し、その進化を探ってもらうことにした。果たしてニューNSXタイプRは最強のタイプRとなれるのか?

 昨晩からの雨は上がったものの、路面はセミウエット。今回はニュータイプRのほか、比較車両として現行タイプSと初期型タイプRが用意されている。まずは旧型タイプRでコースイン。

 比較車両としてその後、次々にクルマを乗り換え、撮影用の華麗なドリフトを披露しながら精力的に周回を重ねた。その後、次々にクルマを乗り換え、撮影用の華麗なドリフトを披露しながら精力的に周回を重ねた。

NA1型NSXタイプR

 旧型タイプRはアクセルを踏んでいくとFFのようなプッシングアンダーが出るけど、新しいタイプRはフェラーリみたいにパワーオンでリアがスーッと流れていく。

 アンダー方向のほうが扱いやすいように思うかもしれないけど、フロントが逃げてからリバースステアになるよりも、最初から自然にテールが流れてくれたほうがコントロールはしやすい。切れ味が出ている。

 ノーマルからタイプRへの変更点は多岐に渡る。まず徹底的に空力性能が見直され、前後のリフトパランスを最適化。

 また、タイプR専用タイヤを採用するほかギア比の見直しやサスセッティングの変更も行なわれている。タイプRの原点ともいえる軽量化は標準仕様に対し-75㎏程度。つまり、未発表だが車重は約1260㎏(後日1270㎏、エアコン装着で1290㎏と発表)ということになる。やはり相当軽い。

車重1270㎏という軽量アルミボディのミドにはC32B型3179㏄、V6DOHC VTECエンジンが搭載される。280ps/7300rpm、31.0kgm/5300rpmを誇る

 C32B型V6、3179cc、DOHC VTEC、280ps/31.0kgmのエンジンスペックに変化はないが、クランク系のダイナミックパランスの精度を上げることで、よリシャープな回転&フィーリングを実現。1基ずつアンパランスなところを手作業で少しずつ削っていくという、タイプRならではの精微なエンジン管理が行なわれている。

 タイプSと比べると、エンジンの印象はそんなに変わらない。足はタイプSも標準に比べると固いけど、タイプRはさらに固い。サーキツトではちょうどいいけど、一般道では相当固く感じるだろうね。もちろん、動きはすべてがシャープになっている。

 足はタイプSも標準に比べると固いけど、タイプRはさらに固い。サーキツトではちょうどいいけど、一般道では相当固く感じるだろう。もちろん、動きはすべてがシャープになっている。

 それと専用タイヤはかなりいい。接地力が粘ってくれるので、スライドしながらもクルマを前に押し進めてくれる。また、セミスリックみたいなブロックパターンなんだけど、ウエット性能がいいのにも驚いた。

タイプRが出るとタイプSが中途半端になってしまう。サーキットでは絶対にタイプRだし行動でもタイプRのほうが楽しめるんじゃないかなと清水和夫氏

 これは単なるインチアップじゃなくてエアボリュームを確保しながらサイズを変えているからいいんだ。タイヤのことをよくわかった変更だと思う。

 旧タイプRからのサイズ変更はフロント215/45R16→215/40R17、リア245/40R17→255/40R17。確かに外側ブロックは1つ1つが大きめで、セミスリックのように見えるパターンだが、太目のスレートグループを確保することで、ウエット性能を維持している。

 旧型はエンジンの音や振動がかなり大きく、背中からガチャガチャと大きなメカノイズが聞こえていたけど、今度のタイプRは音がスッキリしていて、このあたりも洗練されている。

■280馬力ではわからない世界がNSXタイプRにはある

ボディサイズは全長4430m×全幅1810×全高1160mm、ホイールベース2530mと12年前の基本パッケージがいまだに通用するのだから、当時のレベルの高さがわかる

 一番の印象はステアリングの正確性が増したこと。旧型は動きを予想して意図的に早めに操作する必要があったが新型はそんなことしなくても狙った宴席に1mm単位でつけられるイメージがある。操縦性に不満はまったくない。

 ラップタイムも上がっているが、それよりも乗り味がよくなったのが嬉しい。試乗する前は、性能は上がったけど味は変わらないだろうと予想していたけど、いい意味で裏切られた。

 馬力やトルクが上がったわけではない。ブレンボブレーキを採用しているわけでもない。ニュータイプRはそういうカタログで語られるところ以外が進化しており、ドライバーにしかわからない価値が随所に出ている。

 ポルシェ、フェラーリが280馬力しかなかったら、こんなに楽しいクルマにはならないと思う。どっちも圧倒的なパワーに支えられたスポーツカーだから。馬力ではわからない世界がある。今度のタイプRはそれを教えてくれるクルマだと思う。想像以上の進化だった。

 パワーで勝負のフェラーリと一体感で勝負のニューNSXタイプR。方法論は違ってもピュアスポーツであることは同じ。7年ぶりの復活で、タイプRがフェラーリに挑戦状を叩きつけた。正式発表は5月23日だ。

インテリアは旧型と同じ。ただしシフトノブは形状をボールに変更。エアバッグ付きステアリングを選べるが、タイプR独特のステアフィールを楽しむならエアバッグなしがよさそうだ。標準はエアバッグなし、ノンパワステ仕様

※       ※       ※       ※

 いががだったでしょうか? いまやNSXタイプRはNA1型が程度のいいクルマで3000万円オーバー、NA2型が6000万円オーバーともいわれています。

 今回取り上げたNA2型NSXタイプRの新車価格は消費税込みで1255万485円~1355万235円だったので新車価格から約4~5倍になってしまいました。20年くらいまでは1000万円くらいで買えましたが、それでも高嶺の花でした。いまは夢のまた夢のクルマになってしまいました。

 担当はあの正確なハンドリングと、固い乗り心地、今でも身体が覚えています。そういえば、NA1型NSXにアイルトン・セナ(まさにセナ足)が試乗した映像を見たことがありますが、正確なドライビングワークに驚かされました。いつかは乗りたいですね。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。