2009年に登場し、2016年に販売終了となってしまった、日産「スカイラインクロスオーバー」。日産の伝統的なスポーツモデルであるスカイラインの名を冠したプレミアムツアラーであったが、当時としては斬新すぎたのか、市場に受け入れられず販売面で苦戦、一世代で姿を消すことになってしまった。

 販売終了から8年、現在では多くのクーペスタイルのSUVが各メーカーからラインアップされ、人気となっている。クルマ自体の評価は高かったスカイラインクロスオーバー。いまこそ、復活のタイミングではないだろうか!??

文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:NISSAN

SUVとスカイラインが、イマイチ結びつかなかった

 1998年から2002年まで販売されていた10代目となるR34型までは、「若者が憧れるスポーツカー」というイメージの強かったスカイライン。しかしながら、次の11代目V35型からは丸型テールも廃止され、スタイリングも含めて「高級ツアラー」という雰囲気に激変。スカイラインクロスオーバーは、その次のとなる12代目、V36型に設定されたクロスオーバーSUVモデルだ。

 もともとは、北米市場でV36 スカイライン(インフィニティ「G」)が大ヒットしたことをうけ、V36スカイラインの(当時流行し始めていた)SUVバージョンとして開発されたモデルだったが、国内でもセダン不人気によるスカイラインの販売低迷を挽回するため、「スカイラインクロスオーバー」として、北米から2年遅れて登場した。

 日産としては、若者がスカイラインから遠ざかっていくのをなんとか食い止めたい、という思いがあったのだろうが、SUVとスカイラインがイマイチ結びつかない違和感からか、販売は低迷。車両価格が高かったことや、大排気量で燃費が悪いために維持費もかかる、ということもネックだった。

スカイラインクロスオーバー。歴史あるビッグネームとSUVとのいきなりの合わせ技に戸惑った人は多かったようだ
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売れなかったけど、いいクルマだった

 販売面では低迷したスカイラインクロスオーバーだが、クルマ自体は素晴らしい仕上がりだった。エクステリアデザインは、流麗なルーフラインやボリューム感のあるフェンダー上部の造形など、クーペとしてのスタイリッシュさにあふれており、それに存在感のあるフェンダーアーチや大径ホイールなどSUVの力強さが融合され、走りのよさを想起させる仕上がり。インテリアも上質で品のいい仕立てであり、リッチなスポーツサルーンという雰囲気をつくり出していた。

 エンジンは3.7L V6DOHCのVQ37VHRを搭載。最高出力は243kW(330ps)を発生し、日常域でゆとりのあるトルクと高回転まで軽快にふけ上がる伸びのよさを味わうことができた。サスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンクを採用。SUVとは思えない軽快なハンドリングと上質な乗り心地を両立させていた。

 車線逸脱防止支援システムやアラウンドビューモニター、駐車ガイド機能など、当時としては最先端の安全運転支援機能も搭載され、フル装備好きの日本人の心にしっかり刺さる仕上がり。「スカイライン」の名を冠するに十分な運動性能、そして高級ツアラーとしての資質を備えていたのだ。

スカイラインクロスオーバーのインテリア。上質で落ち着いた雰囲気に仕上がっている

いまなら売れる!!

 当時はまだ異色すぎたのだろうが、その後、レンジローバーイヴォーク、マカンなどの扱いやすいサイズでスポーティなSUVが人気となり、国産車でも、ヴェゼルやC-HR、CX-3などスタイリッシュなデザインのモデルが登場。ジャーマンスリーにもクーペSUVが続々設定され、あらゆるカテゴリーで選択肢が増えた。「力強さ」だけが求められていたSUVに、「カッコよくてスポーティ」というキャラクタも生まれ、いまではすっかり定着した。

 スカイラインクロスオーバーもBEVかe-POWERで現代的なパワーユニットにし、最新のデザイン言語と先進装備で武装すれば、違和感なくユーザーにその魅力を訴求できると思う。もちろん、あくまでもスカイラインらしい走りとメカニズムは必須だ。

 もしスカイラインクロスオーバーが復活すれば、アリアやエクストレイルとは違う個性でSUVを選択できるようになり、クラウンスポーツのよきライバルにもなる。スカイラインのビッグネームを残すという意味でも、ファンとしては復活に期待したい!!

スカイラインクロスオーバーのサイド〜リアにかけてのビュー。全体的なバランスは取れている

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