「死亡交通事故ゼロ」という目標を実現するため、総合安全技術の向上に努めるスバル。非常に重要ではあるが、なかなか目に付きにくい地道な取り組みを、今回ご紹介していく。深堀していくと、そこにはJNCAPファイブスター獲得の極意が垣間見えた!?

※本稿は2024年7月のものです
文:ベストカー編集部/写真:スバル、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年8月10日号

■技術説明会でスバルの高い安全性の秘密に触れる

商品事業本部、技術本部、航空宇宙カンパニーから5名が登壇。スバルが研究開発している技術について詳細に説明した

 2024年6月18日、スバルはメディア向けのテックツアー(技術説明会)をオンラインで実施した。

 今回のオンラインテックツアーでは、国土交通省とNASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)による自動車アセスメントにおいて、クロストレックとインプレッサが最高評価のファイブスター大賞を受賞したことを受け、スバルの事故低減に向けた取り組みが詳しく解説された。

 スバルは、下の表のように総合安全に対する思想を5つの領域に分けている。項目としては「0次安全」、「走行安全」、「予防安全」、「衝突安全」で、そのほかに「つながる安全」が含まれている。

 2030年にスバル車乗車時の死亡交通事故ゼロを目指しており、この5つをさらに3つのステージに振り分けて技術開発を行っている。ひとつ目のステージが「0次安全」と「走行安全」、ふたつ目が「予防安全」、3つ目が「衝突安全」と「つながる安全」となる。

SUBARUの総合安全の取り組み(SUBARU技術ミーティング資料〈20.1.20〉より)

 まず「0次安全」の領域について、技術本部 車両安全開発部の荒井英樹部長が登壇。

 ピラー類による死角を極力減らして歩行者を視認しやすくすることや、追い抜き時に他車を確認しやすくするなど、ドライバーの負担を軽減することで事故を減らす設計となっていると説明。

 また、進化したヘッドライト「アレイ式アダプティブドライビングビーム(ADB)」や「LEDコーナリングランプ」を採用し、夜間や降雨雪時にも距離に関わらず視界を高めているという。

 次は、「予防安全」の技術に関して。スバルでは事故統計を分析し、「交差点内ではドライバーは多くの複雑なタスクを同時に行う必要がある」ことと、「ドライバーは自分で思っている以上に視野の中心部分しか見ていない」というデータを取得。

 この分析をもとに、もともとの物理的な死角を含めて、さらに広い範囲を車両が見守るようにして、事故を回避し被害を軽減するためにアイサイトに広角単眼カメラを追加をしたと説明した。

オフセット衝突試験の映像(NASVA動画よりキャプチャー)

 最後に、予防安全で防ぎきれなかった部分を補う「衝突安全」の技術が技術本部 車両安全開発部 衝突安全二課の中瀬哲也課長から紹介された。

 クラッシュゾーンとキャビンゾーンを分け、高強度材の効果的に配置したスバルグローバルプラットフォームが衝突エネルギーを効率的に吸収。

 さらにバンパービームの拡幅やサブフレームを活用するマルチロードパス構造により、相手車両への加害性も低減するという。

 また、歩行者との事故時に備え、乗員だけでなく相手の保護も目指す歩行者用エアバッグが搭載されていると解説された。

 このほか、スバルの航空宇宙カンパニーと自動車事業のコラボレーションも紹介された。

 現在、ダミー人形を用いた障害値の計測、評価技術、ハイスピードカメラ撮影による衝突解析など、これまで自動車部門で蓄積してきた技術を航空機に活用。

 航空機やモビリティの安全性向上に努めていくとアピールしていた。

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■スバルの虎の子・アイサイトはさらなる進化へ

アイサイトの前身である「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」

 1999年、レガシィランカスターにステレオカメラ技術を使ったシステムが初めて実用化設定されたが、これがアイサイトの前身である「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」だ。

 そこから2008年の初代アイサイト、2009年のアイサイトVer.2、2014年のアイサイトVer.3、2017年のアイサイト ツーリングアシスト、2020年にはアイサイトXへと着実に進化。

 現在の最新アイサイトは、ステレオカメラと広角単眼カメラを併用し、高精度の検知を行っている。

 次世代アイサイトのさらなる進化に向け、半導体メーカーのAMDとの協業を2024年4月に発表。AIの活用やSoCの最適化などによって認識処理性能を高め、2030年の死亡交通事故ゼロを実現していく。

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