今や新型車で当たり前の装備となりつつあるコネクテッドシステム。通信機能を使って、最新の地図情報を反映させるシステムだが、緊急時の通報や渋滞などの交通情報はもちろんのこと、駐車場やレストランなどの周辺施設の情報も教えてくれたりする。そんなコネクテッドナビの先駆けがトヨタのG-BOOKだ。

文:西川昇吾/写真:トヨタ

■WiLLサイファから始まったG-BOOKって?

G-BOOKはとても先進的なアイテムであったのだ

 G-BOOKはトヨタが提供していた情報テレマティクスサービスで、このG-BOOKに対応した端末(ナビ)を搭載した車両がトヨタから販売されていたのだ。

 最初にG-BOOKを搭載したのは2002年10月に登場したWiLLサイファだ。

 当時、クルマを情報通信サービスに繋げるには携帯電話が必要あったが、(今でいうデザリングをイメージしてもらえると分かりやすいと思う)このWiLLサイファに搭載されたG-BOOKは、DCM(Data Communication Module)と呼ばれる専用通信機を車載していて、クルマがそのまま情報ネットワークに繋がったのだ。

 なお、このDCMは定額制となっていて、その基本料金は月額550円からであった。そしてこのG-BOOKはトヨタ車のラインアップの中で対応車種を広げていった。

 今となってはクルマがネットワークに繋がっていることは当たり前かもしれないが、当時はナビすらも豪華なオプションであった。そう考えるとG-BOOKとても先進的なアイテムであったのだ。

■どんな機能があったの?

 当時としては画期的なネットワークに繋がるナビ、であったG-BOOK。では具体的にどのような機能が備わっていたのだろうか?

 トラブル発生時に救援車両を手配したり、盗難時に位置を追跡できたりする(DCM通信圏内かつGPSが受信できる状況)「セーフティ&セキュリティサービス」、ナビと連動してタウン情報や娯楽情報を提供する「ライブナビゲーションサービス」、ニュースや天気用法を読み上げる「インフォメーションサービス」。

 また電子メールの送受信や伝言板、掲示板などが利用できる「コミュニケーションサービス」、「GAZOOショッピングモールの商品や有償コンテンツ・サービスをオンラインで決済して購入できる「Eコマースサービス」。

 さらに電話でオペレーターと繋がり、ユーザーに変わって情報検索やナビの目的地設定をする「オペレーターサポートサービス」、カラオケやBGMを車載機にダウンロードして再生させたりする「エンタテインメントサービス」などがあった。

 上記で取り上げたのは、初期に発表されていた内容で、その後も内容を拡充していった。それぞれ上げるだけでも多いが、現代のコネクテッド機能に近い要素が多く揃っているのも興味深い。まさにG-BOOKは先見の明があったアイテムと言える。

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■どうしてG-BOOKは無くなったの?

このG-BOOKが無ければ、それぞれの自動車メーカーにコネクテッドという考えが生まれなかったかもしれない

 そんな先進的アイテムであったG-BOOKだが、既にサービスを終了している。その理由は何故なのだろうか? それは通信網が古くなったことが大きいだろう。

 G-BOOKの通信モジュールであるDCMはKDDIの3G回線を使用しているが、5G回線がどうのこうのとか言っている現在では、この回線規格を維持管理するのが難しい。

 また、新しい通信規格に対応したシステムが登場したり、自動車メーカーが手掛けるコネクテッドシステムやサービスの他に、Android AutoやApple Car Playなど大手ITメーカーが手掛ける拡張性のあるフォーマットが流通しているのも背景にあると言える。

 ただ、このG-BOOKが無ければ、それぞれの自動車メーカーにコネクテッドという考えが生まれなかったかもしれない。日本の自動車の歴史にとって意味のある1ページを刻んだシステムであった。

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