クルマやバイクだけでなく、農業用機械や発電機などにも利用されるガソリン。ただ危険物であることから、貯蔵や取扱い、運搬方法については消防法によって細かく規定されており、セルフサービスのガソリンスタンドであっても、顧客自らが給油することはできず、その運搬容器も定められた安全性能基準をクリアするガソリン携行缶でなければなりません。
ただ、昨今は基準をクリアするガソリン携行缶であっても、給油をしてくれないガソリンスタンドが増えているそうです。
文:エムスリープロダクション/アイキャッチ画像:Adobe Stock_Norman01/写真:Adobe Stock、写真AC
京都での爆発火災事件をきっかけに規制が強化された
以前は、ガソリンスタンドに携行缶を持っていったり、クルマの荷台に給油をしたいクルマや機械等を積んでいけば、店員さんがガソリンを入れてくれたものですが、冒頭で触れたように、昨今は自走してきたクルマ以外への給油は断られることが多いそう。
これには、2019年12月に公布された危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(令和元年総務省令第67号。以下「改正省令」)が関係しています。この改正省令において、ガソリンを容器に詰め替えて販売するときは、顧客の本人確認と使用目的の確認を行い、また販売する側が販売記録を作成することが義務化されたのです。
これは2019年7月18日に京都市で発生した爆発火災事件(いわゆる京都アニメーション放火殺人事件)発生を受けて改正されたもの。事件発生の一週間後である2019年7月25日には、消防庁が「給油取扱所におけるガソリンの容器への詰め替え販売に係る取扱いについて」を各消防機関及び関係事業者団体宛てに発出し対応を要請、そのおよそ5か月後となる2019年12月20日に前述した改正省令を公布、法令上義務化され、2020年2月より施行されました。事件発生からわずか9か月での規制からは、消防庁がいかに危機感を覚えたかがわかります。
禁止はされていないものの、販売の手間が増えたことで店側が対応しない判断をしている
ただ、この内容は、詰め替え販売を禁止するものではなく、あくまで本人確認と使用目的の確認、そして販売記録を作成することを義務としたもの。しかしながら、とあるガソリンスタンドの運営会社によると、売る側の手間が増えてしまったことなどから、運営会社が携行缶への給油サービスを廃止したというケースも少なくなく、携行缶への給油によるガソリン購入が難しくなってしまっているそう。
対応は店によって違うため、事前に確認したほうが〇
ただ、前出のガソリンスタンドの運営会社は、「携行缶ではなく発電機やその他機械類等をお持ちいただき直接給油する場合は、容器への詰め替え販売に該当しないという観点から、購入履歴の記録作成の対象から除外しております。」とのこと(発電機等の機械を車内に積載したままの給油は行っていないそう)。ただ、必要に応じて本人確認書類の提示は求めることがあるそうで、いずれにせよ、購入したい場合には、事前に問い合わせをしてからがよさそうです。
ガソリンでの事故といえば、同じく京都で2013年に発生した花火大会に出店していた露店で発生した爆発事故も思い出されます。この時も死者負傷者あわせて60名以上という甚大な事故となりました。規制強化によって不便に感じている人もいると思いますが、引火しやすく揮発性も高いガソリンであるだけに、仕方のないことかもしれませんね。
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