少し前まで時々ホンダのCMに搭乗していたロボットのアシモ。最近すっかりその姿を見かけなくなったが、その理由は何故なのだろうか? そして彼はそもそもどんな目的で誕生したのだろうか? 今回は今一度クルマ・バイクを得意とするホンダがアシモを生み出した経緯や背景を振り返ってみる。

文:西川昇吾/写真:ホンダ

■新しいモビリティの創造性を目指して

1986年登場当初のASIMOは、まだ足だけであった

 アシモの誕生経緯は1980年代にまで遡る。1986年に発表されたE0がアシモの先祖となる訳だが、1986年に発表されたということは、それよりも前からホンダはロボットの開発をしていたことになる。

 乗り物とロボットと聞くとあまり想像がつかないかもしれないが、ホンダは新しいモビリティの創造性を目指してロボット開発に取り組んだ。クルマやバイクのように、人間社会で喜ばれるパートナーとなる存在とは?そんな考えから二足歩行のロボットという答えに行き着いたのかもしれない。

 E0は二足歩行で歩かせてみるということにチャレンジしたロボット。最終的に二足歩行は成功する訳だが、この時は一歩におよそ15秒もかかっていた。その後1993年のE3までは姿勢制御を含め、よりスムーズに安定して歩行することが最大のテーマとなっていた印象だ。

 そして1993年に登場したP1で初めて人間型のロボットへと進化する。腕と胴体が付いて扉の取っ手を掴んだり、ものを運搬する動作などを実現していた。続くP2ではワイヤレス化が行われ、胴体部にコンピューターや無線機器、モーターやバッテリーなどが内蔵された。

 その次に登場したP3では小型化が実施された。P1では全高1915mmであったが、P3は1600mmとかなり小柄になっていた。そして全体的に丸みを帯びていて、大分アシモに近づいた見た目となっている。

■アシモの登場と進化

 そんなご先祖たちを経て、アシモが登場したのは20世紀最後の年となる2000年だ。全高は1200mmと小さく、小学校低学年くらいの身長となった。これは、実際に人間の生活空間で活動することを想定したサイズとなっている。また、デザインもより丸く親しみやすさが増した。

 見た目だけでなく、歩行性能も進化、階段や斜面でも自在に移動することが可能となり、専用動作や案内説明などを追加することも可能となった。

 その後もアシモは進化し、知能化技術を搭載して、人の姿勢やしぐさの意味を理解させ自律的な行動に反映させたり、走ることが可能となったり、複数のアシモと共同作業が可能になったり、知的能力が進化したりと、正に人間と共同空間で活動することがより現実的になるようになっていった。

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■愛されて卒業したアシモ

アシモは日の目を浴びなくなってしまったが、間違いなくホンダの進化に貢献した

 そんなアシモだが、2022年3月末に「Hondaウエルカムプラザ青山」でのショーを最後に表舞台から姿は消してしまった。同時に日本科学未来館での科学コミュニケーターとしての活動も終了となった。

 これに合わせて青山では「ASIMO開発の歩み」という特別展示が行われたし、日本科学未来館では「THANK YOU ASIMO! ~未来館卒業おめでとう」と銘打って卒業記念イベントが開催された。いかにアシモがホンダのマスコット的なキャラクターとして愛されていたかが分かる。

 なお、ホンダは2021年9月にアバターロボットの研究を行うことを発表している。アシモでの研究ノウハウは間違いなく生きてくるだろうし、もしかしたらまだホンダの研究施設ではこれからのロボット技術のためにアシモが現役で働いているかもしれない。

 アシモのDNAが受け継がれて日の目を見る日は、そう遠くないかもしれない。

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