思えばホンダは、昔からトールワゴンにこだわってきた。その草分けが初代シティだが、その他にもS-MXやモビリオスパイクなど名車は多い。そんな中、現在のフリードを生んだ隠れた名車にキャパがある。わずか4年だけ作られたキャパってどんなクルマだっけ?

文:ベストカーWeb編集部/写真:ホンダ

■クルマは背を高くすれば広々感が作れる!

1998年に登場したホンダ キャパ

 ホンダは1970年代の昔から、広い車内を作るには背の高いクルマがいいと気付いていた。もちろん他メーカーも分かっちゃいたのだが、高い車高は運動性能的にいいことないし、ずんぐりむっくりしたスタイルになるから敬遠していたのだ。

 ところがホンダは、背の高さを包容力や楽しさと結びつけて、見事なクルマを作る。その代表作が初代シティだが、その後もトールワゴンという発想はホンダの中で生き続けたように思う。

 実際、世の中的にトールワゴンの火付け役とされる初代日産キューブの発売(1998年2月)からたった2カ月後に、ホンダも本格トールワゴンを投入している。それがキャパだ。

 というわけでキャパが登場したのは1998年4月。ベースとなったのはホンダのコンパクトハッチ「ロゴ」だ。

 とはいえ単なるロゴの拡大版ではない。開発陣はロゴをベースに使い勝手のいいファミリーカーを作りたかった。そのために真っ平な床が欲しかったのだが、もちろんロゴはフラットフロアじゃない。

 ではどうしたか。ロゴの凸凹したフロアの上にもう1枚板を重ね、二重構造としたのだ。もちろんその構造も無駄にはしない。出来た空間に2本のクロスメンバーを通し、高度な衝突安全性も確保した。

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■プラットフォームの入れ替えがアダに(泣)

3775mmという全長の中に広々した車内を実現していた

 キャパの全長はわずか3775mm、全幅も5ナンバー枠を下回る1640mmしかない。代わりに全高は1650mm、室内高も1240mmあったから頭の周辺空間は広々。

 これが気持ちのゆとりを生み、小っちゃいサイズなのに家族4人がゆったりできるファミリーカーが出来上がった。そこでは、ラゲッジエリアまで回り込んだ大きな窓も効果を生んだようだ。

 キャパのエンジンだが、ロゴの1.3Lに対して1.5L直4SOHC16バルブを搭載。二重フロアやハイトワゴン化に伴う重量増(車重は)を補うためだ。98psの走りは決して速いというものじゃなかったが、13.6kgmというトルクで1110kgのボディをしっかりと引っ張った。

 というわけで、家族に寄り添うクルマとして非常に目の付け所のよかったキャパだが、悲運が襲う。当時ホンダはプラットフォームの更新時期にあり、センタータンクレイアウトを持つグローバルスモールプラットフォームという極上の車台を完成させていたのだ。

 こいつを使った第1号車がご存知初代フィットになるわけだが、実はそれと並行してフィットベースのミニバンが作られていた。その名をモビリオという。

 1世代古いプラットフォームを使うキャパは、そのモビリオに勝てるはずがなかった。結局キャパは、たった1世代&4年という期間で、そのモデルライフを終えてしまったのだ。

 とはいえモビリオはキャパの「ハイトワゴン」の思想を受け継いでいた。そしてモビリオは2008年、傑作コンパクトミニバン「フリード」へとバトンを渡す。つまりフリードの設計思想のすばらしさは、キャパが撒いた種が原点ともいえるのだ。

 いまでは絶滅危惧種となり、中古車市場でも見かけなくなったキャパ。万一街角で見かけたら、その偉大な歴史に敬意を表したい!

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