政府は2033年度までに、九州から東北までの高速道路の一部に「自動運転サービス支援道」を整備すると発表した。トラックドライバー減少への対策として、無人のトラックを走らせようということらしいが、どうも疑問が残る。果たしてどうなるのだろうか?

※本稿は2024年5月のものです
文:国沢光宏/写真:AdobeStock(トップ画像=Olivier Le Moal@AdobeStock)、いすゞ、日野
初出:『ベストカー』2024年6月26日号

■高速道路でレベル4自動運転を可能に

政府としては、労働力不足を補おうと画策するようだが……?(Imaging L@AdobeStock)

 政府は九州から東北までの高速道路でレベル4の自動運転ができるようにする「自動運転サービス支援道」というコンセプトを打ち出し、2033年度までに立ち上げると発表した。

 もう少しわかりやすくすると、労働人口の減少などを受け、トラックドライバーの確保も難しくなってきたことが要因としてある。そこで高速道路を走る定期便を対象に、ドライバーなしで運行できるトラックを走らせようというのが狙い。

 今までの流れからすれば、先頭車両はドライバーが乗る。その後に数台のトラックをカルガモ走行させようということらしい。

 なるほど1人のドライバーで3~4台のトラックを運行できてしまう。ただドライバーは1人なので、常に3~4台を同じ車線で走らせるということになる。単純に考えれば「だったらオーストラリアやアメリカで普通に運用しているロードトレインだっていいんじゃね?」と思う。

 ロードトレイン、アメリカだと3両。オーストラリアなんかもっと長いヤツも走っている。ドライバーが1人で済むと言うほかに、高価なエンジン付きトラックも1台でOK。加えてほかの交通に与える悪影響だって同等だ。

 政府がやろうとしているカルガモ走行は、10mの車間で全長12mのトラックを3台走らせるというもの。全長56m。ロードトレインだと3両で40mほど。

 高速道路への流入や車線変更など考えると、車間10mじゃ無理。結局56mもの長さの車両ということになる。そんなのが走っていたら超ジャマ。むしろ40mのロードトレインにして欲しいくらいだ。

 加えて2033年度といえば2050年のカーボンニュートラルまで秒読み。その前に「二酸化炭素の排出量を2030年に2011年比46%にする」という国際公約だってある。

 これをクリアしようとすれば、高速道路の左車線に架線など設置した「トロリートラック」(電池も搭載し無電化区間を走れるようにしておく)のようなものも考えなければならない。これまたトラックをたくさん使うカルガモ走行より、ロードトレイン方式のほうが有利。

 トロリートラック、どんなカーボンニュートラル対応のパワーユニットよりコストだって抑えられる。

 以上、ナニを言いたいのかと言えば、自動運転サービス支援道を作るのなら、「カーボンニュートラルまで視野に入れたインフラまで考えたらいいんじゃないの?」ということです。

 我が国の政策はグランドデザインを持っていないため、統合的な対策ができない。それぞれの省庁で手前味噌作りばかりといえる。

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