新車購入の醍醐味の1つと言ったらやはりご成約特典だろう。物の良し悪しに関わらず、プレゼントと言うのは営業マンとの友好の証のようで嬉しくなるが、近年はご成約特典を渡さないなんてこともある。その理由には、現代ならではの世知辛い事情があるようだ。

文:佐々木 亘/写真:トヨタ、三菱、AdobeStock

■成約プレゼントのミニカーやぬいぐるみは最近ほとんど見なくなった

デリカミニにはデリ丸。と呼ばれるイメージキャラクターがいる

 直近では2024年3月31日まで、三菱自動車がデリカミニを成約すると、等身大デリ丸。をプレゼントしていたが、こうしたぬいぐるみやミニカーなどの車両関連グッズを成約プレゼントにする例は、かなり少数派となった。

 90年代の後半から2000年代初めくらいまでは、新型モデルがキャラクターと一緒に登場する機会が多くあり、トヨタのイプサム(イプー)、ダイハツのムーヴコンテ(カクシカ)などの非売品グッズが、成約プレゼントとして数多く用意されていたものだ。

 その他にも、ディーラーにおいてある、カラーサンプルのミニカーをもらえることもあった。

 しかし2010年代になると、自動車メーカーのオリジナルキャラが激減し、非売品をユーザーに提供する流れも、無くなってしまったように思う。

 また、販売店側の目線では「不公平感が出るから、渡すのを避ける」という方向に動いてしまったのも事実。

 特にミニカーなどは、販売店に供給される量が非常に少なく、特定期間・特定の車種に限定しても、成約者全員にプレゼントすることが難しい。「Aさんはもらったのに、私はもらえないのはナゼ?」といったトラブルの種にもなってしまうことから、非売品プレゼントという風習が消えてしまったのだろう。

■成約プレゼントの今

 近年の成約プレゼントは、カタログギフトや地場産品のギフトセットなどが目立つ。配布時期も正月や決算期のイベント中がほとんどで、イベント時期を逃すと、プレゼントを渡されることが少ない。

 あとは納車時にワインやお菓子の詰め合わせといった、飲食すると消えてしまうものがプレゼントとして用意されていることが多くなった。

 無いよりはマシだが、せっかくクルマを買っても、もらえるのがお菓子の詰め合わせでは、なんとも味気ない。非売品をもらうということは諦めなければならないのか。

 この間、メーカーが特定の車種に対して、何もグッズを作っていないかというと、そうではない。グッズは少なからずディーラーに届いているのだが、それを販売促進には使いたくないディーラーの事情もあるという。

 いくつかのディーラーで話を聞いていくと、あの行為が成約プレゼントにも影響していることが分かった。

記事リンク

前の記事

新型ハリアーには次世代エンジンを搭載し登場!? 新型車や業界ニュースなど注目情報満載【ベストカー7月26日号】

次の記事

新型[ハリアー]は1.5LターボHEV搭載が有力か!? 新世代エンジンで[期待度爆上がり]の最新情報

■転売対策で配布無し! もういい加減に転売やめようよ

渡す側も貰う側も、良い気持ちになるのが成約プレゼントなのだが、今のプレゼントの扱われ方は、どちらも嫌な気持ちになる可能性がある(irissca@AdobeStock)

 今、非売品を成約プレゼントなどに使えない(使わない)理由は、「転売対策」である。販促物として使いたい非売品グッズもあるようだが、ユーザーに渡したが最後、翌日にはフリマサイトに出品されているという。

 それも無料で渡したものが、何千円という価格で出品されているのを見て、ディーラーの営業企画担当もあきれ返っていた。「欲しいというから渡しても、次の日には売られていると思うと、渡す意味が無くなってくる」と、担当者は嘆く。

 せっかくメーカーからグッズが送られてきても、使用することはできないのが現状だという。何年かたってからディーラーのイベントで販売するなどして、ユーザーの手に渡ることはあるが、それも良い対応策とは言えないまま、取り扱いに頭を悩ませる時間は増えていく。

 渡す側も貰う側も、良い気持ちになるのが成約プレゼントなのだが、今のプレゼントの扱われ方は、どちらも嫌な気持ちになる可能性がある。成約プレゼントで気持ちが通い合うことも筆者は経験しているが、転売などが無くならない限りは、昔のような運用に戻すことは難しいだろう。

 こうやって、日本独特の文化が消えてしまうのかと思うと、なんとも悲しい。何でもかんでも転売するのは、もうやめにしませんか。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。