自動車ディーラーに行くと、ショールームから駐車場へスタッフが出てきて、お出迎えしてくれることが多いだろう。しかもきちんと担当の営業マンさんが出てくれる。これにはNシステムと呼ばれるシステムを使ってお客さんを判断しているのだが、一体何故あるのだろうか?

文:佐々木 亘/写真:LEXUS、AdobeStock(トップ画像=Nebojsa@AdobeStock)

■駐車場の入り口にNシステムがあるってマジか?

自動車ディーラーの駐車場にクルマを入れた時、駆け寄ってくるディーラーマンはすでにこちらの用向きを知っている。実は入口でクルマのナンバーを読み取っているのだ(Nebojsa@AdobeStock)

 自動車ディーラーの中核店舗や新規の大型店舗でよく見かけるのが、駐車場の入り口にカメラが設置されている光景。よく見ると、ナンバー読み取り装置のように見える。

 一般道路を走っていると、よく出くわすナンバー読み取り装置(Nシステム)は、基本的に手配車両の追跡に使われているものだ。警察が使用する犯罪捜査の有力なツールだが、なぜこんなものが自動車ディーラーの入り口にあるのだろうか。

 その答えは、顧客の動向を記録しておくため。システムを使うと、今入ってきたクルマは新規のお客様なのか、自社の管理顧客なのか。名前は分からないが過去に来店したことのあるクルマということも判明する。

 確かに最近自動車ディーラーに行くと、不思議な体験が多い。初めて行くお店では、こちらが話しかける前に「ご来店は初めてですか?」と声をかけられる。行き慣れたお店では、担当以外のスタッフに「先日はありがとうございました。今日は〇〇のご予定でしたね」などと先回りをされているのだ。

 こうやって声をかけてもらうのは、悪い気はしない。ナンバー読み取り装置を使って、顧客の動きを知っておくことが、顧客満足度を高める要因になっているのだろう。

■自動化されたら次のフェーズへ! 進化を続けるディーラーでの応対

来店情報は記録され、どの店舗でどのようなサービスを受けたかがデータベース上で共有される。A支店で受けたサービスをB支店で説明する手間が省け、とても便利だ(Ivan Traimak@AdobeStock)

 最近増えてきた、来店車両を通知するシステム。有料駐車場などにも設置されており、事前精算を行うと、出口では自動的にバーが上がる仕組みのモノも多い。

 自動車ディーラーでは、読み取ったナンバープレートを自社端末の顧客情報と照合し、来店日時等をデータとして記録する。

 他の店舗へ管理顧客が行った際にも来店情報が記録され、どのような対応をしたのか、どういった要件だったのかということが、データーベース上でわかり、お客様フォローに役立てているらしい。

 いつもと違うお店を使った後に、担当営業から「今日は不具合でご迷惑をおかけいたしました。〇〇店で対応させていただきましたが、その後いかがでしょうか」といった連絡が来ることも。

 こうしたきめ細かい接遇が担当ディーラーへの信頼度を高める。いつも見ていてくれているという安心感も生まれるだろう。

 こうしたシステムは、まさに最新鋭と思うのだが、同じようなシステムを約20年も前から導入していたのがレクサスである。

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■レクサスはまさかの開業当初から採用

受付端末と店長端末に顧客の「名前・車種・今日の予定・来店履歴」などを表示し、営業担当者の携帯に、来店を知らせるメールが入る

 レクサスでは2005年の開業当初から、ナンバー読み取り装置ではないものの、レクサス車に標準装備されているETC車載器を使った来店管理を行っているのだ。

 レクサスオーナー(自社担当客)のクルマが駐車場に入ると、ETC車載器と店舗機器が無線通信を行い、受付端末と店長端末に顧客の「名前・車種・今日の予定・来店履歴」などを表示し、営業担当者の携帯に、来店を知らせるメールが入る。

 これによりレクサスでは、来店客への迅速な対応に加えて、「いつもの!」といった一見さんではないプレミアムな体験ができるのだ。

 一昔前には、駐車場の誘導係が1台ずつ来店車両のナンバープレートを読み上げ、店舗内のスタッフが端末で調べて無線で回答し、一歩先を行く接客応対をすすめていたお店もある。

 そこには、来店してもらうお客様へ特別な体験をしてもらい、ディーラーに来ることを楽しんでほしいと願う、ディーラースタッフの思いがあった。

 その思いはそのままに、機械にお願いできることが増え、ディーラーでの接客もさらに1つレベルを上げる時期が来ている。こうしたハイテク機器の導入が、自動車ディーラーが「貴方だけの特別な場所」になるための、魔法のツールになることだろう。

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