初代、2代目とハイソカーブームを作ったトヨタソアラ。『あぶない刑事』シリーズの劇中車として根強い人気を誇り、中古車価格は程度のいいもので800万円以上するF31型2代目レパード。当時はソアラが一強でF31型レパードはまったく売れていなかったと記憶している。そこで、1988年8月に大掛かりなマイナーチェンジを受けたレパード登場時に、ソアラと比較試乗しているベストカー1988年10月10日号を引っ張りだしてみていきたい。

※本企画はベストカー1988年10月10日号の記事から抜粋したものです

文:ベストカーWeb編集部、竹平素信

■2代目ソアラに負けじと1988年8月にマイナーチェンジ!

『あぶない刑事』の劇用車として使用されたF31レパード

 高級ラグシュアリーカー市場で独走を続けるトヨタソアラ。今では決して珍しいクルマではなくなってしまったが、それでもその神通力は衰えていない。

 そのソアラの独占的な市場に食い込もうと、日産のレパードがマイナーチェンジですでにシーマに搭載されているVG30DETを積み、パネルも変えて登場した。

1988年8月にマイナーチェンジされた後期型レパード

 ソアラは決してその動力性能だけで売れているわけではないが、レパードがその点で劣っていたのは事実。価格もそれだけチープだったが、逆にそれがステイタスとなりえなかったかもしれない。

 そのレパードが新エンジンを武器に価格的にも動力性能的にもソアラと同等になって登場してきた。

 そこで編集部ではこの気になる2台の実力車を比べるべくお馴染みの谷田部に持ち込み、さっそく動力性能テストを行なった。テスターは我らが竹平素信選手。どちらに軍配が上がったのか? 

■対決1 動力性能:240psを無駄なく使ってソアラの勝ち! 

ベストカー1988年10月10日号より

 前日までの豪雨が嘘のように晴れ上がったテスト日早朝。しかし路面はまだかあんり濡れていた。とりあえずまずレパードに小野ビット(計測器)を装着し、スタート地点へ向かう。最初にゼロヨンの計測だ。

 レパードは今回のマイナーチェンジでトランスミッションはすべてオートマチツクになってしまったので、ソアラもオートマチック車を用意した。

 そしてゼロヨンなどの計測方法も、いつものブレーキを踏みながらアクセルを目いっぱい踏み込んでスタートするテスト方法と、一般的な状況を想定したブレーキをリリースしてからアクセルを床まで踏み込むという2通りをトライしたのだ。しかもシフト操作を一切しないDレンジ固定でその両方ともテストした。

 最初にトライしたレパードだが、いつものテストスタートで15秒63、普通にスタートして15秒77と好タイムをマークする。

 さて、ソアラのほうはというと、我々の予想(エンジンパワーの差)を見事に覆し、レパードよりもいいタイムを記録した。テストスタートで15秒50、普通のスタートで15秒88である。

 この見事な逆転劇にはウエット路面が作用しているに違いない。最初のテスト車であるレパード走行時は何回かのトライで、ソアラテスト時には路面が乾いてきていたのだ。逆にいえばソアラはレパードに勝ると者劣らない動力性能をもっているといえる。

■レパード=VG30DET、255ps/6500rpm、30.5kgm/4500rpm
■ソアラ=7M-GTEU、240ps/6500rpm、30.5kgm/4500rpm

■レパード、ソアラ計測タイム
0~100㎞/h=レパード7.79秒、ソアラ7.65秒
0~200m加速=レパード10.09秒、ソアラ10.48秒(テストスタート)
0~400m加速=レパード15.63秒、ソアラ15.50秒(テストスタート)
0~1000m加速=レパード28.61秒、ソアラ28.17秒(テストスタート)

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■対決2 スタイリング:スッキリとしたレパードは意外に魅力的

後期型レパードのリアスタイル

 レパードのマイナーチェンジは前後のフェンダーを変更するほどの大規模なものだが、あまり変わりばえしていないというのがもっぱらの評判である。

 しかし撮影のために半日つき合っていたカメラマン氏によればそうではないらしい。

 「確かに派手さではソアラに劣るけど、俗にいう趣味のよさというのはレパードのほうが上じゃないかな。こうやって森をバックに2台を並べてみると、それがよくわかるよ。あまり変わっていないといわれているけど、レパードはかなり(いい方向に)変わっているね。

 ソアラも今回の取材に使ったクルマはフル装備でサイドアンダースカートとチャゴチャついているせいもあるけど、どうも竹やリマフラーが似合いそうなスタイルは田舎臭いよ」。

 うーん、そういわれてみればそんな気もしてくる。まあスタイリングは個人の趣味で選べばいいけれど、そういう風に感じる人もいるということですね。

初代に続き、大人気だった2代目20系ソアラ

■対決3 操縦性:パワーと足回りでレパードの勝ち!

ベストカー1988年10月10日号より

 レパードアルティマV30ツインカムターボとソアラ3000TWINCAM24 TURBO GT-LIMITEDの操縦性を比べてみると、レパードの乗り心地を重視したそつのない走りに対して、ソアラは個性的ともいえる走りをみせた。

 レパードはフロントがマクファーソンストラット、リアがセミトレーリングアームという至極オーソドックスなサスペンションレイアウトで、新時代のハイパワー高級車の走りを求めるには、やはり限界があると感じた。

 ま、いい乗り心地と扱いやすいハンドリングに仕上がっている。しかし、剛性感にとんだどっしりしたハンドリング、コーナリングのスタビリティという面ではいま一歩不満が残る感じだ。

 一方、ダブルウィッシュボーンとエアサスを一持つソアラは、高級車の乗り心地を確保しながら軽快でァツトワークのいいハンドリングをみせる。

 しかし、この最新のサスもステアリング操作が頬雑なハードな走りとなると、不自然な挙動が出やすくコントロール性にかけるという面が出てくる。パワステも速い操作ではナチュラル性にかけてくる。

 ジムカーナコースを設定してタイムトライアルをしてみた結果、レパードのほうがやや速かったというのは、ポテンシャルは高くないがビッグパワーに対応できるナチュラルなハンドリングを持っていたということだろう。

■ジムカーナコースタイムアタック
レパード:1回目58秒57、2回目58秒16
ソアラ:1回目59秒67、2回目58秒77

■対決4 2Lモデル/見栄を張るならやっぱりソアラ!?

後期型レパードのコクピット

 レパードはマイナーチェンジで相当車種整理が行なわれた。エンジンは4種類。それぞれにグレードはひとつずつである。そのなかで3Lターボ以外の目玉は2Lツインカムターボといえるかもしれない。エンジンも210psにパワーアップされているのに対してソアラは200psにとどまっている。この点でレパードのパワーユニットは魅力的である。

 次に価格だがこれはレパードの348万円に対し、ソアラはGTツインターボで338万2000円。L仕様で352蔓延6000円である。もちろん価格だけを比べるわけにはいかない。装備と比較しなければ……。

 しかしこの装備というのも現在の国産車ではあまり変わらないのが通常である。しかしレパードとほぼ同等の装備を施しているのはⅬ仕様のほうで、それとてLSDなどソアラにはついていないものもある。

ソアラ3.0GTリミテッドのコクピット

 3Lモデルにもいえるが、今回のマイナーチェンジでレバードは全般的に、より買いやすくなったといえそう。もちろん値引きもレハードのほうがするだろうから、狙い目に間違いなさそう。

 あまり関係ないリアシートの話をすれば、居住性はレパードのほうがいい。座面が高く、前後のスペースもわずかながらある。見た日の広々感はソアラのほうが上だが、座り心地はレパ―ドに軍配が上がる。

 最後にテレビだが、レパードのリモコンは役たたず。ちょいと方向が悪いともう使えない。使い勝手の研究をもう少ししてほしい。

■対決6 静粛性/馬力が少ない分低燃費のソアラ

ハイソカーブームのなかで憧れた人も多いはず

 最後に燃費と静粛性の話をしよう。編集部からテストコースまで約70㎞。雨の中を途中首都高の渋滞が30分ほどあつたものの、後はスムーズに流れた結果、レパードが5.5㎞/L、ソアラが5.4㎞/Lと両者ともあまりよくない。

 そしてテスト時の燃費はこれも両者ともほぼ同じ50㎞弱を走った結果、レパード2.6㎞/L、ソアラ3.4㎞/L。これらはすべて満タン法で計った結果でパーフェクトとはいえないものの、かなり信用していいだろう。

 というわけで、燃費という点ではレパードはソアラよりも悪そうだ。しかしそのソアラも決して誉められたものではないことも確かである。

 それから静粛性だが、これは60㎞/hと100㎞/hで計測した結果、故障か偶然かまったく同じ60dbと64dbであった。速度警告音も両者ともかなり静かで控えめ。100㎞/h以上のクルージングも快適に楽しめそうだ。   

■竹ちゃんマンによる総合インプレッション

竹ちゃんマンによるF31レパードの評価は?

 まずレパードから。シーマのVG30DETを積んだレパードの動力性能はさすがにすばらしい。比較するクルマはソアラの3.0GTしかないわけだが、レパードは後出しだけにソアラ以上の性能を求めたと思う。それは最高出力で15psほど上回る数値をみてもナルホドと思うのだ。

 テスト結果はゼロヨンが15秒63、0~1000mが28秒61(もちろんAT、Dレンジにて)と、どうしたわけかソアラよりわずかに劣るデータとなってしまった。

 しかし、ひとつはっきりしているのは装着タイヤのレグノ(216/60R15)がダッシュ時にレパードの強力なエンジンパワーを路上に伝えきれず、ホイールスピンがかなり激しくなったことだ。

 これはタイムロスにつながる(編集部注、雨上がりの路面でレパードのテスト時にはまだ相当ぬれていた。その後ソアラのテスト時にはかなり乾いてきたという状況だった)。

 まあともかく、それだけのデータが出れば文句なし、エンジンはソアラ以上に高回転がよく回るが、軽快性、レスポンスにちょっぴり欠ける。とはいえ実用上、不満を感じるほどではなく、ただその強力なパフォーマンスに感謝するばかりだ。

上品な佇まいの20系ソアラ

 続いてソアラ。マイナーチェンジしてより強力となった7M-GTEUは、240ps/35.0kgmを発生し、動力性能にますます余裕が生まれた。

 若干水の残っている谷田部テストコースでATながらゼロヨン15秒50、0~1000m、28秒17はさすがだ(Dレンジ固定)。

 高回転の伸びではいまいちだが、そのぶん低回転からもりもりトルクが発生しており、扱いやすさは抜群。エンジンレスポンスもよく、サウンドも相まってGTカーにふさわしい軽快さがある。

 7M-GTEUとマニュアルトランスミッションの組み合わせもあるが、このエンジンにはやはりATがよく似合う。

 装着してあった215/60R15のピレリP600はバランスがよく、トラクションの伝わり方もよかった。スタートダッシュ時のホイールスピン量が少なめで、それが好データになったようだ。

 1.5トン以上のヘピー級ボディをものともせず、ぐいぐい引っ張っていくビッグパワーの凄さ、ありがたさ。255psの新型レパードの登場でソアラの立場が危うくなったかのようにみえたが、乗ってみるとまだまだいけそうである。

※       ※       ※       ※       ※

 1988年当時の2台の対決、いかがだっただろうか? 当時は圧倒的にハイソカーブームを牽引したソアラの人気が高く、レパードはよっぽどの日産ファンではない限り売れず、不人気だった。

 ところが1986年10月から放映された『あぶない刑事』の劇中車に前期型F31レパードが使用されたこともあって、1990年代以降、現在まで人気が継続している。知らないという方は、映画『帰ってきたあぶない刑事』が2024年5月24日から公開されているのでぜひ!

 大手中古車検索サイトをみると、F31レパードの中古車は30台以上流通しており、138万~1320万円までピンキリ。700万円以上となる個体は、レパード専門店の「カーショップフレンド」さんの在庫車だった。

 いっぽう、2代目ソアラの中古車は流通台数は約50台で、130万~400万円。このなかには380万円のエアロキャビンも含まれている。

 新車が販売していた時は2代目ソアラが圧倒的に人気だったが、36年の時を経た今、人気が逆転。まさに”あぶデカ”さまさまである。

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